ショパン・コンクール優勝前のArgerich。才気煥発,天才は天才と思い知らされる。
私はMartha Argerichというピアニストの凄みは理解しているつもりである。彼女が70~80年代に録音した演奏は実に素晴らしいものが多かったと思うし,それ以前,それ以降でも絶対はずさないピアニストである。でも,このブログに彼女の記事をアップした回数はそれほど多くないのは,敢えて書かなくてもいい(またはそもそも必要がない)と思ったからだと言ってもよい。そんな私に鮮烈な印象を与えたのは彼女が弾いたバッハだった(記事はこちら)が,それに限らず,優れた演奏を残してきた人である。
私はMartha ArgerichがDGレーベルに残したソロ・ピアノのボックスを保有していて,私としては結構な頻度で聞いているとは思うが,バッハもよいし,シューマンも素晴らしいと思う。そんな中,件のボックスで私があまり聞いていなかったなぁということで取り出したのがこのアルバムである。これはArgerichが65年のショパン・コンクールで優勝する前に録音されたDGレーベル初録音だと思う。時は1960年,Argerichは19歳の頃である。
これを聴けば,優れたピアニストは若い頃から誰が聞いても優秀,あるいは主題の通り才気煥発と思わせるヴィヴィッドな魅力を感じさせるプレイヤーであったということを思い知らされるアルバムである。ジャケの雰囲気は後年のArgerichとは全く違う初々しさを感じさせるのは微笑ましいが,出てくる音はえげつないアーティキュレーションと言うべきだと思える。もはやどういう教育を受けたかと言うより,天賦の才能を示しただけと言いたくなるような演奏群である。
まだ成熟にはほど遠いかもしれない。しかし,このピアノを聞かされたら当時の聴衆はそれこそ目が点になったであろうと想像するに難くない演奏群。DGとしては先物買いのような感覚で残したレコーディングかもしれないが,最初期のレコーディングにしては,改めて聴くに値する演奏をしていたことを実証する演奏だと思う。プログラムもショパン,ブラームス,リスト,ラヴェル,プロコフィエフと何でもありなのだ。何でも弾けちゃうえげつなく凄いピアニスト。当時はそういう評価だったんだろうなと想像されるアルバムである。まだまだ青いArgerichということで,星★★★★。
尚,現在はジャケが変わっているようだが,私が保有するボックス・セットに入っているのが元々のジャケだと思う。これを継続使用するのは本人が嫌がったんだろうな(笑)。
Recorded in July 1960
Personnel: Martha Argerich(p)
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