Fred Herschの待望の新作は弦楽クァルテットとの共演。
"Breath by Breath" Fred Hersch(Palmetto)
純粋な新作としては"Songs from Home"以来となる,待望のFred Herschの新譜である。Fred Herschがライナーにも書いている通り「インサイト・メディテーション(ヴィパッサナー瞑想)」に触発されて書いた8曲が組曲("Sati Suite"と題されている。このSatiはエリック・サティのSatieではなく,「気づき」を意味するらしい)として演奏され,最後にアンコール的に”Pastorale"が演じられるというもの。こうなると若干の胡散臭さも感じる向きもあろうが,純粋に音楽的に楽しめばいいと思う。
瞑想がテーマに据えられているだけに,音楽は基本的に静謐に流れていく。Fred Herschはライナーに組曲を続けて聞いて欲しいと記しているが,あっという間に時間が経過する美しい音楽である。若干リズム的な盛り上がりを示すのは,組曲の最後に収められた"Worldly Winds"ぐらいか。これは瞑想から現実への回帰みたいな感じかもしれない。
ここでの演奏は,同じ弦楽クァルテットとの共演でも上原ひろみとは随分と違うと思わせる。Fred Herschの子供の頃のピアノの先生は,ラサール・クァルテットのチェリスト夫人で,弦楽クァルテットの音楽に触れる機会が多かったらしく,ここでのアレンジメントもへぇ~と思わせるぐらいさまになっている。まぁ,Fred Herschのリリシズムを考えれば,弦楽クァルテットとも相性はよいだろうとは思わせるが,こちらの期待通りってところであった。
本作のリズム隊は,通常のFred Herschのトリオとは異なり,Drew GressとJochen Rückertというコンビである。これはMarc Coplandの"Haunted Heart & Other Ballads"や"Some Love Songs"のリズム隊ではないか。Drew Gressとは以前から共演関係があるが,ドラムスにJochen Rückertを据えるということには,レギュラー・トリオ以上のリリカルな展開を狙ってのことかと思いたくなる人選である。もちろん,それは成功と言ってよいと思えるナイスなアルバム。刺激には乏しくとも,詩情あふれるとはこういうのを言う。星★★★★☆。
Recorded on August 24 & 25, 2021
Personnel: Fred Hersch(p), Drew Gress(b), Jochen Rückert(ds), Rogerio Boccato(perc), Crosby Steet String Quartet<Joyce Hammann(vln), Laura Seaton(vln), Lois Martin(vla), Jody Redhage Ferber(cello)>
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コメント
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閣下、ものすごく、彼らしい作品でしたね。
おっしゃる通りに、詩情あふれる作品でした。
そして、彼の願いや想いの詰まった作品だとおもいました。
ブログにあげましたので、リンクを置いていきます。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2022/01/post-f03af6.html
投稿: Suzuck | 2022年1月 8日 (土) 11時23分
Suzuckさん,おはようございます。リンクありがとうございます。
>閣下、ものすごく、彼らしい作品でしたね。
>おっしゃる通りに、詩情あふれる作品でした。
>そして、彼の願いや想いの詰まった作品だとおもいました。
全くおっしゃる通りです。オーバーダビングでなく一発録りをするところが,Fred Herschらしいですね。彼のライブを観られる日はいつ来るんでしょうか...。
投稿: 中年音楽狂 | 2022年1月 9日 (日) 08時23分