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2022年1月31日 (月)

RSD Black FridayにリリースされたBen WattのEPのCD版。

_20220128-2 "Storm Shelter" Ben Watt(Unmade Road)

昨年11月のRecord Store Day Black Fridayにアナログ・リリースされたBen WattのEPがCDでもリリースされた。全6曲をBen Wattのピアノ弾き語りで演じているが,うち4曲は"Storm Damege"からの曲である。

私はBen Wattというミュージシャンを全面的に信頼しているが,今回はピアノ弾き語りというところがポイント。シンプリシティの中にBen Wattの声が映えるって感じである。"Storm Damage"リリース後に予定されたツアーのリハーサル時に録音されたものらしいが,コロナ禍で来日予定もあったツアーはキャンセルになってしまったのは残念だった。

それにしても,Ben Wattは私とほぼ同年代にもかかわらず,いまだに瑞々しい声を維持しているのが実に素晴らしい。シンプルであるがゆえに,素のBen Wattを楽しめるってところだ。本来であれば,昨年取り上げるべきであったが,リリースからまだそんなに時間も経っていないので,新譜扱いとさせてもらおう。星★★★★☆。

Personnel: Ben Watt(vo, p)

2022年1月30日 (日)

注目のBrad Mehldau新譜情報:”Jacob’s Ladder"は3/18リリース予定。

Jacobs-ladder-cover NonesuchレーベルやBrad MehldauのWebサイトに,Brad Mehldauの新譜,"Jocob’s Ladder"に関する情報がアップされている。プログレにインスパイアされた音楽を通じて,神と聖典を反映した新曲を演じると書かれている。1曲公開されている"maybe as his skies are wide"からして,おぉ,これは一筋縄ではいかないという感じであるが,メンツからすると,"Finding Gabriel"のような路線に近いものになるのかもしれない。こういうところが一部のアンチを生む理由のようにも思えるが,知性を兼ね備えながらも,留まるところを知らない多様性がいいのである(きっぱり)。

"Jacob’s Ladder"というと,私がNYCに渡っていた頃に公開された同名の映画があったが,元来は聖書由来の「ヤコブが夢見た天につながる梯子」である。やっぱり一筋縄ではいかない(笑)。

いずれにしても3月18日のリリースを心待ちにしたい。"maybe as his skies are wide"のオフィシャル・ビデオもアップされているので,貼り付けておこう(音源もBrad Mehldauのサイト等で聞ける)。これを見ると,ジャケもBrad Mehldauのデザインってことのようだな。

2022年1月29日 (土)

これが未発表だったとは...:Geri Allen / Charlie Haden / Paul Motianによる実に優れた演奏。

_20220128 "Live at the Village Vanguard Unissued Tracks" Geri Allen / Charlie Haden / Paul Motian(Somethin’ Cool)

Geri Allen,Charlie Haden,Paul Motianによるトリオのアルバムは何枚かあるが,不勉強にして私はこれまで全く無縁であった。しかし,このアルバムをストリーミングで聴いた瞬間,何とも凄いトリオだったのだなと遅ればせながら悟った私である。これは購入すべき音源と確信した。

これはDIWレーベルからリリースされた"Live at the Village Vanguard"の残りテイクから選ばれたものということであるが,未発表にしておくにはもったいない音源の数々である。メンバーのオリジナルとスタンダードを交えた構成もよく,ここは選曲,監修に当たった大西順子を褒めたい。

スタンダードはリラクゼーションも感じさせる部分はあるが,オリジナルやバップ・チューンはスリリングな演奏が続き,今から30年以上前の演奏にもかかわらず,全然古びた感じがしないのも素晴らしい。オリジナルは結構アブストラクトな感覚も与えるが,決してハードルが高いという訳ではない。実にハイレベルなトリオ演奏であり,多くの人の耳に届けたいと思わせる。こうした音源が発掘されたことを素直に喜びたい。星★★★★★。

それにしても,このライブがレコーディングされた時,私はNYCに在住した頃である。なぜ,このトリオを観に行かなかったのかと思っても,後の祭り...。冬休みで,どこかに行っていたのかなぁ?あるいは告知を見逃していたのか?全然記憶にない...(苦笑)。

Recorded Live at the Village Vanguard on December 21 & 22,1990

Personnel: Geri Allen(p), Charlie Haden(b), Paul Motian(ds)

2022年1月28日 (金)

誰が聞いたって驚くわって感じのLee Morgan初リーダー作。

_20220126-2 "Indeed!" Lee Morgan(Blue Note)

このアルバムが18歳の新人による初リーダー作(及び初レコーディングでもあるらしい)と知れば,普通驚く。このフレージング,とてもティーンエイジャーとは思えないし,もはや出来上がっているっていう印象を与える。このLee Morganの初リーダー作がリリースされた当時も,間違いなく驚きを持って迎えられたであろう一作。

これがLee Morganの最高作と言うつもりはないが,最初からLee Morganは凄かったのだとわかる一作ではある。このアルバム,Lee Morganには特に文句はないのだが,どうもHorace Silverのピアノ・ソロがあまり面白くないのが難点。メンツの中では,一番知名度が低そうなClarence Sharpeは結構頑張っているだけに,ちょっともったいない気がする。

まぁ,ここではLee Morganのフレージングに注目してればいいかってところだが,出来としては星★★★★ってところ。それにしても,この才能は恐ろしいねぇ。

Recorded on November 4, 1956

Personnel: Lee Morgan(tp), Clarence Sharpe(as), Horace Silver(p), Wilbur Ware(b), "Philly" Joe Jones(ds)

2022年1月27日 (木)

David Sanbornの露出度が高いJoe Beckのアルバム。

_20220126 "Beck" Joe Beck(Kudu)

アルバム・タイトル通りJoe Beckのリーダー作でありながら,海外で再発された際には"Beck & Sanborn"なんてタイトルもついてしまったほど,David Sanbornの露出度が高いアルバムである。そのため,David Sanbornファンならみんな知っている(かつ買っている)し,裏Sanbornリーダー作と言われたりもしてしまうという,Joe Beckにとってはいいのか,悪いのかわからない作品である(笑)。このアルバムがリリースされたのは1975年で,同年,David Sanbornの初リーダー作”Takin’ Off"もリリースされているが,間違いなくこっちの方がSanbornとしても出来がいいと思うのは,きっと私だけではあるまい。だからこそ上述のような評価になる訳だ。

出てくるのはいかにも往時のフュージョン(クロスオーバーと言うべきか)の王道のような音であり,そもそも王道のようなミュージシャンがバックを固めている。ストリングスのアレンジがDon Sebeskyというのもいかにもだ。そうした音に乗って出てくるソロイストとしてのDavid Sanbornのアルトは,当たり前ではあるがまさにDavid Sanbornそのもの。ミキシング・レベルはリーダーであるJoe Beckの方を上げてあるようにも思えるが,ついついDavid Sanbornのフレージングに耳が行ってしまうというアルバム。

曲もそれぞれに魅力的ながら,後にHiram Bullockもアルバム"From All Sides"で取り上げた,Don Grolnick作の"Cactus"っていい曲だねぇと改めて思ってしまった。

David Sanbornのことばかり書いているが,もちろんここはJoe Beckのリーダーとしての頑張りがあったからこそのこのアルバム,そしてCreed Taylorのナイスなプロデュースってことにしておきたい。こういう東海岸的なちょっとウェットな感覚ってのが多分日本では特に受けるんだろうなぁ。西海岸ではこうはならないって感じである(笑)。相応に時代は感じさせるものの,今聞いても十分魅力的。星★★★★☆。

Personnel: Joe Beck(g), David Sanborn(as), Don Grolnick(key), Steve Khan(g), Will Lee(b), Christopher Parker(ds), Ray Mantilla(perc), Fredercl Buldrini(vln), Harry Cykman(vln), Peter Dimitriades(vln), Max Ellen(vln), Horold Kohon(vln), Charles Libove(vln), Harry Lookofsky(vln), Joe Malin(vln), David Nadien(vln), Jesse Levy(cello), Charles McCracken(cello), George Ricci(cello)

2022年1月26日 (水)

まさにDivineだな。Bette Midlerのベスト盤。

_20220125 "Experience the Divine" Bette Midler(Atlantic)

Bette Midler,一流のエンターテイナーである。私が保有する彼女のCDはこれ一枚だが,これだけでBette Midlerの歌のうまさは理解できる。とにかく何を歌ってもうまいのだ。

私が在米中のことであったが,"From a Distance"が大ヒットして,この曲でグラミーも獲ったはずだ。そうした記憶もあり,93年に本作がリリースされた時に購入したもの。このベスト盤を聞けばわかる通り,ありとあらゆるスタイルの歌をこなしてしまうのが,Bette MidlerのBette Midlerたる所以であり,まさに"Divine"の看板に偽りなしである。

どこから聞いても楽しめるとは思うが,その中でも曲としては"The Rose"の魅力が私には突出したものに思える。もちろん,曲そのものが優れている"Do You Want to Dance?"もあれば,"Beaches"のサントラからの”Wind Beneath My Wings"も素晴らしいし,Johnny Carsonが司会をしていた”Tonight Show”での歌声等もあって,それはそれで面白いのだが,やっぱり"The Rose"は頭抜けている。私にとってBette Midlerと言えば,これというSignature Songと言ってよい。

もう一つ実に面白かったのが,"Only in Miami"である。これを聴いていたら,曲調から歌声まで,ほとんどMiami Sound Machineというか,Gloria Estefanではないか。この曲がリリースされたのが1983年,Miami Sound Machineが"Primitive Love"もしくは"Let It Loose"でブレイクしたのが前者が1985年,後者が1987年だから,私にはこのBette Midlerの路線を頂いたって感じにしか思えない。もちろん,Miami Sound Machineが元々やっていた曲調をBette Midlerが利用した可能性もあるが,いずれにしても私にはそういう感覚であった。久々に本作を聴くまで全然意識していなかったのだが,これは本当に面白かった。

ということで,ベスト盤として押さえるべきところは押さえたという感じのアルバムで聴きごたえ十分。ベスト盤ゆえに細かいPersonnelは省略するが,デビュー盤にはBarry Manilowも絡んでいたのねぇ,なんてことを改めて認識。常識?それまた失礼しました(爆)。星★★★★☆。

尚,本作は後年,同タイトルながら,ジャケもちょっと変わって曲数を増やした拡大盤として出ているようなので,念のため。

2022年1月25日 (火)

Brecker Brothersのブートレッグもどき:演奏はいいが,曲名適当,ミキシングすかすかなのがいかにも(笑)。

_20220124"The Brecker Brothers Live" The Brecker Brothers (Jazz Door)

Jazz Doorというレーベルは,おそらく放送音源をそのままディスク化してリリースするブートレッガーまがいながら,一般のCDショップでも流通していた。現在もそうしたリリースをするレーベルはHi Hatはじめいくらでもあるが,Jazz Doorはなかなか食指が動く音源が多かったし,音質もそこそこのものを揃えていたという印象が強い。なので,私も何枚かこのレーベルから出たアルバムは保有している。これもそのうちの1枚。

本作はバンドとして復活を遂げた"Return of the Brecker Brothers"後のツアー時の音源と思われる。裏ジャケにはNYC録音なんて書いているものの,Randy BreckerがMCで"Merci"と何度か言っているので,そもそもNYC録音ではないだろうというところから,そもそも怪しい。更に曲名を"Sponge"を"Spunch"と書いてみたり,"Inside Out"を"N.Y. Special"なんてしてしまうという適当さ,いい加減さに溢れている。

そうしたいかにもブートレッグ的なところに加え,この音源の難点はミキシングがすかすかで,せっかくJames Genus~Dennis Chambersというリズム隊を使っていることによる重量感もへったくれもないというところが残念である。それは冒頭の"Some Skunk Funk"から明白なのだ。サウンドボード録音なので,音そのものは悪くないのだが,ちょっとはイコライザーぐらいかませよなんて文句も言いたくなる。まぁ,ブートまがいなので,そういう文句を言えた筋合いではないが。また,終盤の"Spherical"はフェード・インぽく始まるのもご愛敬。

演奏はいかにもBrecker Brothersらしいと言ってよく,クォリティは高いし,Micheal BreckerのEWIが結構聞けるというところは貴重だと思える。特に"Song for Barry"冒頭における長尺のEWIソロは聞きどころ満載って感じである。"Inside Out"でもEWIでソロを取っていて,それも面白い。まぁ,ブートまがいのアルバムであるから採点対象とはしないが,いくつかの瑕疵を気にしなければ,相応に楽しめる。

そう言えば,この頃の演奏の映像がレーザーディスクでリリースされていて,私はそれも保有していたが,プレイヤーが故障してしまい,その頃にはパイオニアが生産を中止してしまったので,ソフトも全て破棄してしまった。今や振り返りも不能となってしまったのはもったいなかったって気もするが,それも時代の流れである。

時代の流れついでに言えば,このジャケ写真にはWTCのツイン・タワーが写っている。9/11からも既に20年以上経過しているんだよなあ。時の流れは早いとつくづく感じる還暦オヤジである(苦笑)。

Personnel: Randy Brecker(tp), Michael Brecker(ts, EWI), Mike Stern(g), George Whitty(key), James Genus(b), Dennis Chambers(ds)

2022年1月24日 (月)

Clint Eastwoodの新作はシナリオに難ありだが,後味は最高によい。

Cry-macho 「クライ・マッチョ("Cry Macho")」(’21,米,Warner Brothers)

監督:Clint Eastwood

出演:Clint Eastwood,Dwight Yoakam,Eduardo Minett,Natalia Traven,Fernanda Urrejola,Horacio Garcia Rojas

Clint Eastwood待望の新作である。私は大概の場合,Clint Eastwoodの作品に関しては高い評価をするのだが,今回は与えてくれるプチ幸せ感とか後味は最高なんだが,映画としてはちょっと問題があったと思えた。それは偏にシナリオの適当さというか,世の中そんなにうまく行く訳ないだろうということばかりが起こるストーリー展開にあった。

今回はClint Eastwoodが老境のカウボーイを演じるというところに,強い郷愁を感じる年代の私である。Clint Eastwoodが馬に乗っているシーンを見るだけで感慨深いのだ。そしてこのストーリーである。この映画の企画は長年あたためてきたってことらしいが,コロナ禍で傷ついた人々の心を癒すことに主眼があったのではないかとさえ思わせるストーリーは決して悪いとは思わない。

だが,前述の通り,このストーリー展開はもはやご都合主義と言われても仕方がないくらい,主人公たちにとって望ましい展開が続くのである。だからストーリーに起伏が乏しいと感じてしまうのも仕方がない。それはそうなのだが,見ていて私が感じていた幸福感には,それはそれで捨てがたい魅力があった。

批判しようと思えばいくらでも批判できる映画ではあるが,私はこの映画はコロナ禍で殺伐とした世相に対するEastwoodからの回答だったように思えてならない。痺れる感覚は全然ないのだが,これほど「優しさ」に溢れた映画ってなかなかないのではないかって思った私である。ある意味,私ぐらいの年齢以上の高齢者には受けると思う映画。大体,私が観た時の観客の平均年齢の高さは無茶苦茶高かったし。

矛盾しているようだが,映画としては大したことはないが,私はこの映画が好きである。こういう映画があってもいいのである。ということで,甘いの承知で星★★★★。

本作は本国では劇場とサブスクの並列公開されており,既にソフト化もされていて,劇場に行かなくてもBlu-rayやDVDで見られるので念のため。でもやっぱり映画は映画館で観るのが筋,と私は思う。

2022年1月23日 (日)

Stéphane Grappelliの”Live 1992”:"Young Django"をライブでやったって感じ。但しLarry Coryell抜き(笑)。

_20220122 "Live 1992" Stéphane Grappelli(Birdlogy)

1970年代の終わりに,ドイツのMPSレーベルから"Young Django"というアルバムがリリースされた。私はそれをアナログで保有しているが,Django Reinhardtの曲を中心に,実に軽快な演奏を聞けるアルバムであった。そこにLarry Coryellが参加していたのは実に意外に思えたが,ちゃんと合わせて演奏しているのには,何でもできるねぇ~と感心したものである。

本作はそれから暫くしてリリースされたライブ盤であるが,ヴァイオリン,2ギター,ベースと"Young Django"と編成は同じ。しかもメンツもLarry CoryellがMarc Fossetに代わっただけで,ほぼ同じコンセプトで演じられていると言ってもよいと思う。そして聞かれる演奏の軽快さやリラックスした感覚は"Young Django"とほぼ同様である。ここでは"Stella by Starlight"やガーシュイン・ナンバーも加えられているという違いはあるが,受ける感じは実に似通っている。この2作はセットで聞いてみると面白いかもしれないなぁなんて感じた私である。肩ひじ張らず聞ける音楽ってところで,星★★★★。

この時,Stephane Grappelliは80歳をとうに過ぎていた頃であるが,演奏は矍鑠たるもので,全く年齢を感じさせない。やっぱり楽器を操っている人はボケないというのを改めて強く感じさせる。

甚だ余談ではあるが,私の亡くなった父は,自分がヴァイオリンを弾いていたこともあって,Stéphane Grappelliも結構好きだったなぁなんてことも,このアルバムを聞きながら思い出してしまった。

Recorded Live on March 27 & 28, 1992

Personnel: Stéphane Grappelli(vln), Phiip Catherine(g), Marc Fosset(g), Niels-Henning Ørsted Pedersen

2022年1月22日 (土)

Paul Butterfield’s Better Days: このメンツ,このグルーブ,たまりまへ~ん。

_20220121 "Live at Winterland Ballroom" Paul Butterfield Better Days(Bearsville)

私はPaul Butterfield自身のアルバムにはあまり縁がなかったが,彼が参加したアルバムには大いにはまってきた。"The Last Waltz"然り,Levon Helm & the RCO Allstars然りである。とにかく,彼のハープは確実に場の雰囲気を一変させる力を持っていると思っている。アメリカン・ロック好きの私への訴求力は相当なものがあった。そんなPaul Butterfieldではあるが,今や彼自身名義のアルバムで私が保有しているのは本作と,"Better Days"だけのはずだ。以前はほかにも保有していたはずだが,今はもう手許にはない。だが,このアルバムを久々に聞いて興奮してしまったことは告白しておかねばなるまい。

だってこのメンツである。リーダーを支えるのがGeoff Muldaur,Amos Garrett,Ronnie Barronらとあっては,もはや音が想像可能であるし,クォリティは確保されたようなものである。まぁ,ライブ・アルバムだけに曲ごとのクォリティにばらつきはあると思う。しかし,全編を通して聞くと,これぞ私にとってのアメリカン・ロックの一つの典型と言いたくなってしまうのだ。

このブログにも何度も書いてきたが,私は昔からブリティッシュよりもアメリカン・ロックに惹かれてきた訳だが,その根幹を成しているのが,所謂ウッドストック系列の音である。彼らこそそうしたサウンドを支えてきたメンツなのだから,私がこういうアルバムに興奮するのは当たり前なのだ(きっぱり)。そして,彼らから生み出されるグルーブは私が若い頃から痺れてきた音そのものと言ってもよいぐらいだ。本作を聴いていても,例えば"Please Send Me Someone to Love"におけるAmos Garrettのギター・ソロを聞いて,身をよじってしまった私であった。

ここでは"Small Town Talk"もやっているが,Bobby Charlesの飄々とした感覚には及ばないとしても,同じBobby Charlesの"He’s Got All the Whisky"は,これはありだと思わせる。何ともエレピがいい感じだし,14分を越える長尺の中で,若干の冗長感はあるものの,私が好きな音がこれでもかと展開されているのだ。たまらん。また,演じられるブルーズの数々はやはり素晴らしい。Paul Butterfieldにはブルーズが似合うのである。

ということで,相応の瑕疵がない訳ではないが,これはやはり私のツボにはまる音楽である。星★★★★☆。

Recorded Live at Winterland Ballroom on February 23, 1973

Personnel: Paul Butterfield(vo, hca, key), Ronnie Barron(vo, org, p), Amos Garrett(vo, g), Geoffrey Muldaur(vo, g, key), Christpher Parker(ds),Billy Rich(b)

2022年1月21日 (金)

結構豪華な歌手陣がストレートにリスペクトを示すElla Fitzgeraldトリビュート。

_20220120 "We All Love Ella: Celebrating the First Lady of Song" Varilus Artists(Verve)

これも実に久しぶりに聞いたアルバム。本作は結構豪華な歌手陣が,Ella Fitzgeraldにトリビュートしたアルバムなのだが,Ellaへの敬愛を示すべく,本人たちの個性はあまり打ち出さず,ストレートに歌唱しているように感じられる。それをよしとするかどうかはリスナーの判断になろうが,ここに参加した歌手陣はリスペクトを優先したってことだと思える。例えばChaka Khanなら更に個性的な歌唱も可能だったはずだが,彼女が歌う"Lallaby of Birdland"なんてむしろ抑制すら感じさせるのだから,これはびっくりである。この辺りはプロデューサーとしてのPhil Ramoneの意向も働いているかもしれない。

私が保有するCDはボートラ2曲含めて全16曲だが,Natalie ColeとChaka Khanの出番が2曲(1曲は二人の共演)と,やや特別扱いで,前半に彼女たちの出番を集めている。基本はビッグバンドをバックに歌う形式であるが,Diana KrallはHank Jonesとのデュオで渋く歌ったり,Lizz Wrightはギターとヴァイオリンをバックにしっとりと歌うという例外もあるが,こういう違いを打ち出すことで,変化をつけているのが楽しい。

Gladys Knightが歌う"Someone to Watch over Me"はややコンテンポラリーな感覚を持たせるのは,このアレンジを担当したBilly Childsらしいところだが,Etta Jamesが歌う"Do Nothin’ till You Hear from Me"のブルージーな感覚と,k.d. langが歌う"Angel Eyes"のけだるい雰囲気は,このアルバムで最も歌手としての個性を出したものと言ってもよいかもしれない。

男性歌手代表はMichael Bubléだが,非常にいい感じで歌っていて女性陣に負けていない。そして本編最後を飾るのがStevie WonderとEllaのデュオによる"You Are My Sunshine of My Life"である。これだけは1977年の発掘音源ってところだろうが,実に楽し気に歌っていて,最後を飾るに相応しいって感じだ。

それに続くボートラ2曲がDee Dee BridgewaterとNikki Yanofskyなのだが,びっくりしてしまうのが後者。当時Nikki Yanofskyは13歳ぐらいのはずだが,とてもその年齢とは思えない歌いっぷりなのだ。スキャット,アドリブ,どちらもちょっと可愛げがないと言いたくなるほど饒舌そのもの。聞いた感じ,相当Ella Fitzgeraldに影響を受けているというところだが,私にはやり過ぎだろうって思えるほどだった。天才と言うのは簡単かもしれないし,確かに凄い歌唱ではあるのだが,私にはやっぱり可愛げがないとしか思えなかった。何ごともやり過ぎは禁物である。

そうは言いつつ,全体的には結構楽しめるアルバムであった。星★★★★。演奏者は非常に多いので,歌手と主要メンツとソロイストだけ記述。尚,ブックレットのPersonnelには誤りがあり,正しくは裏ジャケの記載の通りのはず。

Personnel: Ella Fitzgerald(vo), Natalie Cole(vo), Chaka Khan(vo), Queen Latifah(vo), Diana Krall(vo), Diane Reeves(vo), Lizz Wright(vo), Ledisi(vo), Linda Ronstadt(vo), Gladys Knight(vo), Etta James(vo), k.d. lang(vo), Michael Bublé(vo), Stevie Wonder(vo), Dee Dee Bridgewater(vo), Nikki Yanofsky(vo), Rob Mounsey(p), Billy Childs(p), Terry Trotter(p), Hank Jones(p), Alan Broadbent(p), Gerald Clayton(p), Dean Parks(g), Rodney Jones(g), Russel Malone(g), Jeff Mironov(g), Josh Sklair(g), Anthony Wilson(g), Kevin Axt(b), David Finck(b), Christian McBride(b), Bob Hurst(b), John Clayton(b), Gregg Field(ds), Curt Bisquera(ds), Lewis Nash(ds), Mark McLean(ds), Jeff Hamilton(ds), Tony Kadleck(tp), Steve Wilson(as), Tom Scott(ts), Regina Carter(vln)

2022年1月20日 (木)

メンツはよくても,印象が薄い"ALIVEMUTHERFORYA"

_20220119 "ALIVEMUTHERFORYA" Billy Cobham / Steve Khan / Alphonso Johnson / Tom Scott(Columbia)

フュージョン系ミュージションによるセッション・ライブ・アルバムと言ってよい作品。上記の4人にSonny Rollinsとも共演したMark Soskinが加わったクインテットであるが,メンツはまぁそこそこいいよねぇと思いつつ,どうにも印象が薄いのは急造グループゆえか。

まぁ,この4人,Columbia系のレーベルに所属していたからという顔見世興行みたいなもので,各々のメンバーの曲を持ち寄っているのもまさにそういう感じである。

それなりの実力者の集まりなので演奏には破綻はないが,やっぱり面白くない。この感覚,同じくBilly Cobhamも参加したStanley Clarke & Friends名義の"Live at the Greek"と似ているが,まだこっちの方がましだとは思える。この辺はレーベル主導というところもあって,まだある程度狙いがはっきりしていたことはあるだろう。

しかし,このアルバムについた邦題「スーパースター・スーパーライブ」と言っても,この人たちが「スーパースター」だと思う一般人はそうはいるまい。その筋では知られていても,さすがにスーパースターはないよねぇ(笑)。星★★★。それにしてもよくわからんタイトルである。

Personnel: Billy Cobham(perc), Steve Khan(g), Alphonso Johnson(b), Tom Scott(ts, ss, Lyricon, perc), Mark Soskin(p, el-p, synth)

2022年1月19日 (水)

イタリア人ミュージシャンがJobimの有名曲を交えて,軽くブラジル風に演じたアルバム。

_20220118 "Jobim Variations" Fabio Zeppetella(EmArcy)

ジャズ・ミュージシャンの間でもAntonio Carlos Jobimというのは特別な位置づけにあるが,それは世界のどこでも同じってことで,本作はイタリアのミュージシャンがJobimの有名曲に,自身のオリジナルを交えて,ストリングスも導入しながら軽いサウンドを生み出したアルバムである。

私はてっきりこのアルバムについて,既にブログにアップした気になっていたのだが,どうも完全に失念していたようだ。Fabio ZeppetellaについてはKenny Wheeler入りの"Moving Lines" をアップしていた(記事はこちら)ので,その気になっていたのかもしれない。このアルバムは2009年にリリースされているが,"Moving Lines"も2009年に記事を書いているから,やっぱりそういうことだろうなぁ(苦笑)。

それはさておき,上述の通り,Jobimの相当な有名曲とメンバーのオリジナルが並んでいる。Jobimの曲は"How Insensitve","Sem Você","Wave","Corcovaco",”Ipanema","Águas de Março",そして"Dindi"とまぁお馴染みの曲が並び,そこにメンバーのオリジナルとIrving Berlin作の"Change Partners"が並ぶという構成なのだが,Jobimの曲とほかの曲が何の違和感もなく混じりあっていて,これはなかなかくつろげる。だからこそ"Jobim Variations"なのねぇと納得していしまう私である。そうは言ってもJobimの曲もストレートにばかりやっている訳ではなく,崩しも入っている感じなのがこれまた"Variations"な訳だな。"Ipanema"はピアノ・ソロ,"Águas de Março"はベース・ソロだもんなぁ...。

このアルバムは,Jobimの曲に関しては変化球,オリジナルに関してはブラジル風味の直球勝負みたいな感じと言えばいいかもしれないが,時にムーディーにさえ感じさせる演奏は決して仕事の邪魔にならないのもよかった(笑)。いずれにしても,12年以上寝かせていたって感じで,リリース以来何度プレイバックしたかもわからないが,久々に聞いても実に面白いアルバムであった。星★★★★。

Recorded on November 13-15, 2008

Personnel: Fabio Zeppetella(g), Danilo Rea(p), Ares Tavolassi(b), Aldo Romano(ds)

2022年1月18日 (火)

今日は大学の先輩のリクエストにお応えして,Marianne Faithfull。

_20220117 "20th Century Blues" Marianne Faithfull(RCA)

私はブログの記事をFacebookに連携しているのだが,先日Phoebe Snowの記事をアップしたところ,そこへFBでつながっている大学の先輩からコメントを頂き,Marianne Faithfullについてアップせよとのリクエストを頂いた。このブログでもMarianne Faithfullについては"Blazing Away"について書いたことがある(記事はこちら)が,あれはメンツの妙を感じさせる素晴らしいライブ盤であった。では今回,何を取り上げるかなぁと考えていて,私の手持ちのアルバムはあと2組しかないので,今日はこれにした。これもライブ盤なのだが,"Blazing Away"とはだいぶコンセプトが違う。

このアルバムはMarianne Faithfuliがクルト・ワイルの曲を中心に,ワイマール共和国時代を想起させる歌を歌うというテーマに基づいたものであり,しかもそれをピアノ伴奏だけで歌うという実に濃い~作品である。

Marianne-faithfull 私にとって,Marianne Faithfullは最初は女優としての認識であった。Alain Delonと共演した「あの胸にもう一度」の革ジャンに身を包んだイメージってのが出来上がっていて,当時のセクシーな別嬪のイメージがあるが,当時の彼女は,今見てもやっぱり綺麗だよねぇ。Mick Jaggarが惚れるのも当然だ(きっぱり)。

その後Islandレーベルからアルバムを出して,へぇ~とか思っていたのだが,音楽についてはちゃんと聞いたことはなかった。初めてその音楽に接したのが上述の"Blazing Away"だったのだが,映画での美貌からは想像できない歌声にビビったというのが正直なところであった。

その次に私が購入したのが本作だったのだが,上述の通り濃厚なフレイヴァーを持つ作品だ。そもそも私はクルト・ワイルの曲は,千鳥風に言えば「クセがスゴい」と思っているが,それがMarianne Faithfullの声で歌われれば,クセ倍増みたいになってしまう訳だ(爆)。なので,これが全編,クルト・ワイルの曲だったら,濃厚過ぎて鼻血が出るって感じだろうが,Nilssonの"Don’t Forget Me"みたいな曲が清涼剤的な効果を与えてくれるのだ。そうは言っても,なかなかハードルが高い演奏だとは思うが,そうしたバランスもあって,普通のリスナーでもついていけるレベルにあると言える。それでも,しょっちゅう聞きたいと思う音源ではないのは"Blazing Away"同様であり,決して万人受けする作品だとは思わないが,このコンセプトを実現したこと自体を評価すべきと思う。星★★★★☆。

ライナーによれば,Marianne Faithfullがこの作品をリリースした契機は,Hal Willnerがプロデュースしたワイル作品集"Lost in the Stars"への参加だったらしい。そう言えば,私はそのアルバムも保有しているのだが,全然聞いた記憶がない(笑)。いい機会だから,そっちもそのうち聞いてみることにしよう。でも,Hal Willnerプロデュースのその手の作品では,Monk集である"That’s the Way I Feel"が好き過ぎて,ほかのアルバムに手が伸びないんだよねぇ...。

末筆ながら,改めてこのアルバムを聞く気にさせて頂いた先輩のOさんに感謝したい。こういう機会でもないとあんまり聞かないもんなぁ。

Recorded Live at New Morning, Paris

Personnel: Marianne Faithfull(vo), Paul Trueblood(p)

2022年1月17日 (月)

すっかり保有しているのを失念していたBarry Harrisのアルバム。

Barry-harris-last-time-i-saw-paris "Last Time I Saw Paris" Barry Harris(Venus)

先日亡くなったBarry Harrisのアルバムなのだが,保有していることすら忘れていたアルバムである。まぁ,なんでかって言えば,私が嫌いなVenusレーベルのアルバムだからってこともあるが,私が保有しているのが紙ジャケ盤で未整理状態になっていたからってのが要因である。Venusレーベルが嫌いなら買わなきゃいいじゃん!と言われそうだが,おそらく中古で安く拾ってきた以外,購入する理由はなかったと思える。

まず,なんでVenusレーベルが嫌いかと言えば,ジャケの趣味が悪い。特にエロ・ジャケは最悪だと思えるが,もう一つ私がこのレーベルを絶対に許せないと思ったのがFred Herschの"Everybody's Song But My Own"であった。Fred Herschの繊細なタッチや音楽性を無視して,プロデューサーの原哲夫の趣味で,くそのような音にしたことがどうしても許せないからだ。以前は購入したものもあったが,新譜が出ようが何しようが,金輪際Venusレーベルのアルバムは買う気がない。それぐらい嫌いなのだ。

ではこのアルバムはどうか?レコーディング時,Barry Harrisは古希を迎えたぐらいであり,まだまだ演奏には支障はない頃だと思うのだが,どうにもこのアルバムには覇気がない。テンポもほとんどミディアムで演じられるため,メリハリが感じられないだけでなく,Barry Harrisの運指も心なしか心もとない感じがしてしまうのだ。Barry Harrisが師と仰いでいるはずのBud Powellの"Oblivion"だって,もっとアグレッシブにやったっていい。 Bud Powellに関して言えば,アルバム,"Chasin’ the Bird"における"Indiana"なんて,Bud Powellと瓜二つのようなのだから,やればもっとできるはずなのだ。

しかしここでは,むしろテンポを上げる"Tea for Two"の方が真っ当に聞こえるってのがどうも納得いかない。言ってしまえば作りが安直で,久しぶりに聞いても全然面白くない。Barry Harrisを聞くならほかのアルバムを選ぶわと言いたくなる。星★★☆ぐらいで十分だ。

このアルバムで一番いいと思えるのは,これまた昨年亡くなったGeorge Mrazだが,それをもってしてもこれは売却予備軍だな(爆)。やっぱりVenusは好かん(きっぱり)。

Recorded on June 2, 2000

Personnel: Barry Harris(p), George Mraz(b), Leroy Williams(ds)

2022年1月16日 (日)

Phoebe Snowは好きだが,これはイマイチだと思えた"Against the Grain"

Phoebe-snow-against-the-grain "Against the Grain" Phoebe Snow(Columbia)

私はPhoebe Snowという歌手が結構好きで,アルバムも91年の”The New York Rock & Soul Revue"までのものはほとんど保有している。例外は"Rock Away"のみである。特にデビュー・アルバムや"Never Letting Go"を愛聴してきたと言ってよい。私はこの人の歌を聞いていると,強烈にNYCを感じてしまうのだが,それはいつになっても変わらない。

それでもって,久しぶりにこのアルバムを取り出して聞いてみたのだが,イマイチ印象がよくない。いい曲もあるのだが,全体的に玉石混交な感じがして,Phoebe Snowのアルバムとしては,微妙な出来だと思えてしまった。

冒頭はPaul McCartney"Every Night"で幕を開けるが,これが可もなく不可もなしって感じで,印象が薄いのだが,私が納得いかなかったが2曲目の"Do Right Woman, Do Right Man"である。Dan Pennが書いたこの曲はAretha Franklinの名唱があるだけに,比較対象のハードルが高くなるのだが,ここでのPhoebe Snowの歌いっぷりが全然面白くない。彼女ならもっとうまく歌えるはずだという感覚しか与えてくれないのは全くもって残念だ。この出足でのつまずきがこのアルバムの印象を弱めてしまうというのはもったいない話だが,Phoebe Snowらしいバックの音でありながら,このアルバムがあまり魅力的に響かないのは,Phoebe Snowの書いたオリジナルが面白みに欠けるためと言ってよいだろう。このアルバムのチャート・アクションがよくなかったのも,偏に曲のせいだということになると思える。

"Oh, L.A."なんて,若干ボサノヴァ・タッチを感じさせて,むしろソウルフルに攻めるよりも,こういう路線をもう少し入れてもよかったのではないかとさえ思える。やっぱり彼女のアルバムの中では一段評価を下げざるをえないアルバムというところ。星★★★。尚,David Matthewsアレンジのホーン・セクションはBrecker BrothersをはじめとするNYのセッション・プレイヤー総出演みたいな感じであるが,ちょっともったいないなぁ。

Phoebe Snow(vo, g), Barry Beckett(p, key, synth), Dave Grusin(key), Richard Tee(el-p), Steve Burgh(g), Steve Khan(g), Hugh McCracken(g), Jeff Mironov(g), Warren Nichols(pedal steel), Will Lee(b), Hugh MacDonald(b), Doug Stegmeyer(b), Rick Marotta(ds), Liberty DeVitto(ds), Ralph MacDonald(perc), Michael Brecker(ts), Jon Faddis(fl-h), Corky Hale(harp), Margo Chapman(vo), Michael Gray(vo), Lani Groves(vo), Gwen Guthrie(vo), Linda LaPresti(vo)

2022年1月15日 (土)

今改めて聴くOrnette Colemanの"Free Jazz"。

Free_jazz "Free Jazz" Ornette Coleman(Atlantic)

先日,Freddie Hubbardの"Breaaking Point"を取り上げた時に,ちらっとこのアルバムについても言及したものの,これも久しく聴いていないなぁということで,取り出してきたもの。何を今更って感じもするが,まぁよかろう。

フリー・ジャズと言ってもいろいろなタイプのフリーがあって,実に破壊的なものもあれば,このアルバムのように,今聞いたらどこがフリーなんだと感じるタイプのものもある。その後,発生してくる咆哮型の破壊的フリー・ジャズに比べれば,このアルバムに収められた音楽が何とコンベンショナル(あるいは換言すれば,極めて真っ当)なものに聞こえることか。

もちろん,左右チャネルにクァルテットを並列させて,ソロイストのバックで,ほかのメンバーが自由にカデンツァをつけているという様式は,録音当時は極めて野心的,かつ斬新なものだったと想像される。しかし,ここに集った8人のミュージシャンの優秀性を証明するごとく,極めて音楽的な時間が経過していくのが素晴らしい。ちゃんとソロイストの登場前には,アンサンブル・パートが出現したうえで,ソロに突入するという様式だってちゃんと維持しているから,そういうところは実に真っ当ではある。しかし,優秀なミュージシャンが,Ornette Colemanのコンセプトを完全理解しての演奏を行っていることには,ジャズ的な快楽さえ感じてしまいながらも,当時としては驚異的なことであったのではないか。

まぁ,当時のOrnette Colemanのアルバムってのは,ややタイトルがセンセーショナルに過ぎる部分もあったが,それだけジャズ界において,「何なんだ,これは?」感を産んでいたのだということの裏返しだろう。しかし,彼らから生み出された音楽は,今やあって然るべきもの,あるいは当たり前のものという感じになっているが,その発生過程を振り返ることは非常に重要なことだと改めて思ってしまった。当時は異端だったものも,もはや音楽的なレガシーとして認めるべきものとして,ここは星★★★★★しかあるまい。

Recorded on December 21, 1960

Personnel: Ornette Coleman(as), Eric Dolphy(b-cl), Freddie Hubbard(tp), Don Cherry(tp), Scott LaFaro(b), Charlie Haden(b), Billy Higgins(ds), Ed Blackwell(ds)

2022年1月14日 (金)

Keith Jarrett European Quartetのブートレッグ。素晴らしいバンドであった。

_20220109-4 "Frankfurt 1976" Keith Jarrett(Bootleg)

音楽を聞く上で,ブートレッグまで手を広げるとそれこそ大変なことになってしまう。そのため,私もブートレッグは何枚も保有しているとは言っても,やはりそこには一定以上の縛りが必要だと思っている。まずは基本は良好なサウンドボード音源であること。そして,演奏が誰が聞いても素晴らしいものであること,あるいはどうしても聞きたくなるような演奏であることは必須条件だと思っている。

そういう意味では,元が放送音源ってのがまずは一つの要素になると思うが,今日取り上げるこのブートも元は放送音源で,映像も残っている。このブートは最後の"Long as You're Living Yours"にフランス語のMCが被って雰囲気をぶち壊すのだが,どういう放送だったかはわからないとしても,これだけ良好な音でKeith Jarrettの欧州クァルテットの演奏が収められていれば文句は出ない。

まず冒頭のKeith Jarrettのソロ・ピース,"Song of the Heart"からして素晴らしいのだが,改めて聞いてみるとこのフレーズ,どこかで聞いたことがあるように思えてならなかった。いろいろ考えてみると,これは"Sun Bear Concert"の京都 Part 1のモチーフとほぼ同じではないのかと感じている。"Sun Bear"が録音されたのもこのブートと同じ1976年なので,これを聞いていると,Keith Jarrettの「完全即興」にも「書かれた」モチーフはあったのではないかと思ってしまうのだが,それはさておきである。全編に渡って非常に質の高い演奏が続き,実に嬉しくなってしまうのは私だけではあるまい。こういう音源ならいくらでも発掘してくれと言いたくなる。

今にして思えば,この欧州クァルテットってのは実に強力なバンドであった。後に発掘された"Sleepers"も強烈この上ないアルバムだったし,私としては好みも入っているが,米国クァルテットより一段高く評価すべきだと思っている。米国クァルテットには”Survivor’s Suite"という超弩級の傑作があるとしても,欧州クァルテットのどれもが素晴らしいと思える作品群のクォリティに比べれば,平均点が違うと思えるのだ。ここでも彼らが実にクリエイティブな演奏をしていたことがよくわかる優れたドキュメント。見事なものだ。

最初のソロ曲がYouTubeにアップされていたので,画像を貼り付けておこう。

Recorded Live in Frankfurt on September 18, 1976

Personnel: Keith Jarrett(p), Jan Garbarek(ts, ss), Palle Danielsson(b), Jon Christensen(ds)

2022年1月13日 (木)

渋い。ジャケも渋いが,音も渋いBobby Timmonsのアルバム。

_20220109-3 "Born to Be Blue!" Bobby Timmons(Riverside)

このアルバムは懐かしい。私が学生時代から随分と長い期間に渡って世話になった高田馬場のジャズ喫茶,Milestoneの店頭にこのアルバムのジャケットがずっと飾られていて,これほど雰囲気のあるジャケはなかなかないと思っていた。それもあって,私はこのアルバムのアナログ盤を持っていたはずなのだが,それが行方不明となってしまったのは実にショックであった。売ったはずはないのだが,一体どこへ消えてしまったのかという感じだったのだ。今は紙ジャケのCDで保有しているものの,このジャケはやっぱりアナログで愛でたいよなぁと今でも思っている。残念ながらMilestoneは閉店してしまったが,そうした思い出は残っているし,今後も消えることはない。

それはさておきである。このアルバム,ジャケも渋いが,収められた音楽も実に渋い。思わず「くぅ~っ」となってしまうようなナイスなピアノ・トリオによるアルバムなのだ。歴史的名盤とは言わないが,夜,小音量で流しても絶妙な雰囲気,あるいは理想的なアンビエンスを醸し出してくれるアルバムと言えばよいだろうか。こういう音楽が流れていると,ついつい酒の量が増えるって感じの音楽だ。

誤解を恐れずに言えば,黒人にしか出せない音が全編に渡って収められていて,ある意味,ジャズってこういうもんだって言いたくなるような感覚すら与えると言っても過言ではない。逆に言えば,この音楽をいいと思えない人とは私は話が合わないだろうなぁとさえ思ってしまう。まぁ,そういうアルバムって各々のリスナーに存在しているだろうが,本当に私にとっての密かに愛すべきアルバムなのだ。

このジャケから想像されるような音が見事に紡ぎ出されるって感じだと思ってもらえばよいだろう。どこから聞いてもナイスなアルバム。ジャケにオマケして星★★★★☆。いやぁ,ええですわぁ。

Recorded in September 1963

Personnel: Bobby Timmons(p), Sam Jones(b), Ron Carter(b), Connie Kay(ds)

2022年1月12日 (水)

Freddie Hubbardの"Breaking Point":前衛と伝統のはざまってところ。

_20220109-2 "Breaking Point" Freddie Hubbard(Blue Note)

久々に聞いたこのアルバムだが,タイトルは「限界点」あるいは「極限」なんて大仰ではあるが,まだまだ十分コンベンショナルな演奏と言ってもよい。確かにタイトル・トラックのようにややフリーがかったところはあるが,決してこれはフリー・ジャズではなく,あくまでも伝統技法の中で,若干の前衛色をまぶしたってところだろう。

Freddie Hubbardの場合,それこそOrnette Colemanの"Free Jazz"にも参加しているのだから,もっとフリーな世界に行こうと思えば行けるはずの人だ。その一方でJazz Messengersでも演奏していたのだから,ある意味何でもできてしまう訳だが,ここでは上述の通り,伝統の枠内に留まっているってことでの「限界点」と私は感じる。

朗々としたFreddi Hubbardのラッパは相変わらずの響きと言ってよいが,ここではJames Spaldingの切り込み具合もなかなか楽しい。更にこのアルバムで印象深いのがRonnie Mathewsかもしれない。どちらかと言えば地味な感じのするRonnie Mathewsが,いかにも新主流派的なセッティングの中で,印象的なピアノを聞かせている。まさにBlue Noteって感じの音であるが,今聞いても十分に楽しめる快作。星★★★★☆。

Recorded on May 7, 1964

Personnel: Freddie Hubbard(tp), James Spalding(as, fl), Ronnie Mathews(p), Eddie Kahn(b), Joe Chambers(ds)

2022年1月11日 (火)

久々にHigh Fiveを聞いた。

_20220109 "Jazz Desire" High Five Quintet(V.V.J.)

High Fiveが瞬間風速的に日本でも人気が出たのは2008~9年ぐらいのことだから,もう10年以上も前のことだ。2010年に"Split Kick"をリリースしたのが最後になっていて,今やバンドも解散状態ではないかと想像されるが,一時的にでも人気が出ていたのは間違いないところだし,私は行けなかったが,Blue Note東京でもライブをやって,そのライブ盤も出ている。ライブ盤が出た際,私は『ラテン的な「熱さ」だけの演奏からの脱却を図らないと,彼らは飽きられてしまうおそれがあるように感じられてならない。』なんて書いているが,あながち外れてはいなかったかななんて思っている(記事はこちら)。彼らの音楽ってのは聴いていて楽しいのは事実なのだが,音楽的な深みに欠けるってのは否定しようがないと感じるのだ。

今日,久しぶりに聞いたこのアルバムを聞いても,その感覚は変わらない。賑々しく盛り上がって,聴いている分にはうまいとは思うし,そんなに不満は感じないのだが,例えばQueenの"Another One Bites the Dust"のような曲をやられると正直ずっこける感覚があった。やっぱり軽い。どうしてもその軽さが否めない。各々の書く曲("Another..."以外はメンバーのオリジナル)にはそこそこ魅力はあって,各人のソロも悪くないのだが,印象が強まらないってのが正直なところである。ラテン系らしい軽さと言ってもよいが,やはり一本調子な感じがあるので,何度も続けてプレイバックしたいとは思えないのだ。

と相当な辛口なことを書いているが,前述の通り,楽しい演奏であることは間違いないし,ライブでこういう演奏をすれば,やんやの喝さいを受けるだろうなぁと思うが,まぁ私にとっては気まぐれに取り出して聞けばいいやぐらいのアルバム。演奏の楽しさに免じて半星オマケの星★★★☆。私も以前に比べれば,相応に欧州ジャズは聞くようになったとは言え,どちらかと言えば美的な方面への傾斜が強くなったことも,彼らに対する評価が上がらない理由かもしれない。

Recorded in February 2004

Personnel: Daniele Scannapieco(ts), Fabrizio Bosso(tp, fl-h), Luca Mannutza(p), Pietro Cianglini(b), Lorenzo Tucci(ds)

2022年1月10日 (月)

先日久々にライブハウスに行った:3 Trumpeters Night@銀座シグナス。

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世の中はオミクロン株感染拡大で,またもライブにも影響が出てくるのではないかと心配されるが,そんなことにお構いなく,先日,知人の誘いに乗って,銀座のシグナスにお邪魔してきた。当日はトランペット3本にリズム隊という珍しい編成のバンドであったが,3本のトランぺッターはみんなうまいと思うし,個性の違いがよく出ていて実に面白かった。赤塚謙一が1曲でホルンを吹いて,アンサンブルを聞かせていたのも珍しい。

コロナ禍の拡大により,去年行ったライブはKing Crimson1回きりであることからもわかる通り,私はここのところ,ライブにほとんど行けていないし,ライブハウスには2年近く行ってない(最後に観たのは,20年1月のWayne Krantzに遡る...)のだが,久しぶりに間近で見るライブはやはり感慨深いものがあった。フロントのラッパに加えて,私が感心してしまったのが,リズム隊の実力。編成ゆえに,基本的にはハード・ドライヴィングな演奏が多かったが,ソロもバッキングも大した実力だと思ってしまった。全員うまいのだが,私が特にびっくりしたのがピアノの佐々木毬奈。あいにく,私が座っていた席からは彼女がプレイする様子は死角になっていて見えなかったのだが,フレージングもカッコいいし,実に大したものであった。

時節柄,声を出すことは憚られたので,演奏終了後に彼女と目が合った時にThumb Upしておいた。日本のジャズ界,侮れないねぇ。写真は勝手ながら座席からスマホで撮らせてもらったもの。

Live at 銀座シグナス on January 7, 2022

Personnel: 銘苅盛通(tp), 室賀健司(tp), 赤塚謙一(tp, fr-h), 佐々木毬奈(p), 吉峯勇ニ郎(b), 高橋克弥(ds)

2022年1月 9日 (日)

正月休みにNetflixで観た「ドント・ルック・アップ」

Dont-look-up 「ドント・ルック・アップ("Don’t Look Up")」(’21,米,Netflix)

監督:Adam McKay

出演:Leonard DeCaprio, Jennifer Lawrence, Rob Morgan, Meryl Streep, Cate Blanchette, Jonah Hill, Mark Rylance, Timothée Chalamet, Ariana Grande

現在,劇場でも公開されているこの映画をNetflixで観た。この映画は彗星と地球の衝突というSF的テーマを背景とした,あくまでもブラック・コメディとして観るべきものとまず言っておこう。出てくる人物それぞれが往々にして相当のろくでなしに描かれていて,「まとも」なのは上に書いたキャスト陣ではJennifer Lawrence,Rob MorganとTimothée Chalamet(及び中盤を除くDeCaprio)ぐらいとしか思えないって感じだろうか。

台詞やプロットには思わず笑ってしまうってところもあるのだが,それは爆笑ではなく,あくまでもブラックな笑いってところであり,その皮肉はこの映画のタイトルが"Don’t Look Up"であるところに象徴されていると言ってもよいかもしれない(それは観てもらえばわかる)。

まぁ,それでも決してテンポがいい映画でもないし,同じAdam McKayが撮った映画なら「マネー・ショート 華麗なる大逆転」(この映画に関する記事はこちら)の方が,はるかによく出来ていたと評価せざるをえない。役者は揃っていて,それなりに楽しめるとは思うが,登場人物への皮肉の利かせ方が今一つ足りないってところだろう。星★★★。しかし,映画はやはり劇場で観るべきかなと思ったのも事実。こっちはいつでもPauseできると思うと,集中して観てないってのが実態なんだよねぇ。

2022年1月 8日 (土)

Brad MehldauのVanguard音源:これにはまだダウンロード制限があるのか?

Brad-mehldau-trio-the-complete-friday-ni "Live: The Complete Friday Night Sets" Brad Mehldau Trio(Nonesuch)

この音源については2009年に既に記事にしている。これは"Brad Mehldau Trio Live"の元となったVillage Vanguardでのライブ音源のうち,2006年10月13日の金曜日の3セット分の演奏を丸ごと収めたものである。”Brad Mehldau Trio Live"が10/11から10/15の演奏からピックアップした音源から構成されているのに対し,本デジタル・アルバムは10/13のみの演奏というのが大きな違いである。Brad Mehldauがセット毎にどういう演奏をしているのかが聞けるのが実にありがたいセットなのだ。

そんな音源であるが,今はどうかわからないのだが,これがリリースされた当時はダウンロードが米国内からに限るという縛りがあって,なかなか入手できなかった。しかし,2009年10月から11月に掛けての世界一周出張の道すがら,米国滞在中にすかさずダウンロードしたのであった。

これだけインターネットが発達した世界においては,今やダウンロードを米国内からに絞るなんてことは機会損失にしかならないはずであるから,Nonesuchとしても今はどこからでもダウンロードできるようにしていると信じたい。いずれにしても,Brad Mehldauの追っかけとしてはどうしても入手しなければならなかった音源である。そして今聞いても実に素晴らしい音源であり,この頃から完成されたトリオであったことがわかる。評価としては稀少性も含めて星★★★★★しかない。この音源,Nonesuchストア・エクスクルーシブなので,ストリーミングでも聞くことはできないのだが,機会があれば,是非聞いてみて頂きたい音源である。

ここからは余談。今にして思えば,このアルバムをダウンロードした時の出張はワルシャワ~ロンドン~NYC~ボストンというかなりきつい出張だったのだが,ロンドンやNYCでは丁度ハロウィーンの時期に重なり,酔った兄ちゃん,姉ちゃんが街中に沢山いたなぁなんて懐かしむのも私の加齢の証左。ついでに言えば,出張中にはNYCマラソンも開催され(私は週末はバテバテだったのでマラソンそのものは見た記憶がない...) ,土産にド派手なNYCマラソンのロゴ入りウインドブレイカーを買ったのも懐かしい(今でも着ている)。

ライブもロンドンでJanek Gwizdala's Research Featuring Wayne Krantz, Gwilym Simcock and Gary Husband,NYCでPat Martino,そしてTom Harrellを観ているのだから,今よりは若いだけにタフだったねぇ。ロンドンのライブなんて,後にPat Methenyと共演するGwilym Simcockが入っていたのも懐かしい(当時は全然知らなかった)。ベースのJanek Gwizdalaも渡辺香津美やPeter Erskineとの共演でその名を再認識するのは後年になってからだが,Krantz目当てに行った割に,今にして思えば凄いメンツであった。こういうことを書いていると,本当に仕事なのか,遊びなのかわからないねぇ(爆)。

Recorded Live at the Village Vanguard on October 13, 2006

Personnel: Brad Mehldau(p), Larry Grenadier(b), Jeff Ballard(ds)

2022年1月 7日 (金)

Fred Herschの待望の新作は弦楽クァルテットとの共演。

_20220105 "Breath by Breath" Fred Hersch(Palmetto)

純粋な新作としては"Songs from Home"以来となる,待望のFred Herschの新譜である。Fred Herschがライナーにも書いている通り「インサイト・メディテーション(ヴィパッサナー瞑想)」に触発されて書いた8曲が組曲("Sati Suite"と題されている。このSatiはエリック・サティのSatieではなく,「気づき」を意味するらしい)として演奏され,最後にアンコール的に”Pastorale"が演じられるというもの。こうなると若干の胡散臭さも感じる向きもあろうが,純粋に音楽的に楽しめばいいと思う。

瞑想がテーマに据えられているだけに,音楽は基本的に静謐に流れていく。Fred Herschはライナーに組曲を続けて聞いて欲しいと記しているが,あっという間に時間が経過する美しい音楽である。若干リズム的な盛り上がりを示すのは,組曲の最後に収められた"Worldly Winds"ぐらいか。これは瞑想から現実への回帰みたいな感じかもしれない。

ここでの演奏は,同じ弦楽クァルテットとの共演でも上原ひろみとは随分と違うと思わせる。Fred Herschの子供の頃のピアノの先生は,ラサール・クァルテットのチェリスト夫人で,弦楽クァルテットの音楽に触れる機会が多かったらしく,ここでのアレンジメントもへぇ~と思わせるぐらいさまになっている。まぁ,Fred Herschのリリシズムを考えれば,弦楽クァルテットとも相性はよいだろうとは思わせるが,こちらの期待通りってところであった。

本作のリズム隊は,通常のFred Herschのトリオとは異なり,Drew GressとJochen Rückertというコンビである。これはMarc Coplandの"Haunted Heart & Other Ballads"や"Some Love Songs"のリズム隊ではないか。Drew Gressとは以前から共演関係があるが,ドラムスにJochen Rückertを据えるということには,レギュラー・トリオ以上のリリカルな展開を狙ってのことかと思いたくなる人選である。もちろん,それは成功と言ってよいと思えるナイスなアルバム。刺激には乏しくとも,詩情あふれるとはこういうのを言う。星★★★★☆。

Recorded on August 24 & 25, 2021

Personnel: Fred Hersch(p), Drew Gress(b), Jochen Rückert(ds), Rogerio Boccato(perc), Crosby Steet String Quartet<Joyce Hammann(vln), Laura Seaton(vln), Lois Martin(vla), Jody Redhage Ferber(cello)>

2022年1月 6日 (木)

正月早々Netflixで「ジョーズ」を観た。

Jaws 「ジョーズ(”Jaws”)」(’75,米,Universal)

監督:Stephen Spielberg

出演:Roy Scheider, Robert Shaw,Richard Dreyfus,Lorraine Gary, Murray Hamilton

私はAmazon Primeには加入しているが,これまではNetflixには未加入であった。双方が切磋琢磨してコンテンツの充実を図ってくれればいいと思っていたが,オリジナル・コンテンツにはNetflixの方に興味深いものがあったのも事実である。そんなところに,娘が独自に契約をしているのはわかっていたので,彼女が年末年始に東京に戻ってきた際に,契約をプレミアム契約に変更してもらい,めでたく私も見られるようになった。もちろん追加で発生する料金は私持ちである(苦笑)。

そんなところで,早速オリジナル・コンテンツを観ればいいのだが,私が最初に観たのが懐かしの「ジョーズ」である。1975年の映画であるからもはや半世紀近く前の作品だが,今でもユニバーサル・スタジオの主要アトラクションとして生き残っているのが凄い。それぐらい当時はインパクトの強い映画だったと思える。

ストーリーはお馴染みのものであるし,映画のポスターも実に懐かしいよねぇって感じである。私は公開時,映画館でもこの映画を観て,その後もレーザーディスク等で何度か観たはずだが,DVDやBlu-rayは買っていないと思う。なので,懐かしさ半分で観たのだが,時間の経過による若干の古臭さは否めないものの,十分面白く観られたと思う。

主役の3人は,一人では地味でも,この3人の組合せがうまいバランスを取っているなぁと改めて思わされた。こういうのをキャスティングの妙と言う。ここに超弩級のスターがキャスティングされていたら,この映画の印象は変わっていたはずだ。そして音楽は当時は知る由もなかったが,「春の祭典」を下敷きにしている(だろう)なんてことは後からわかったことである。

いずれにしても,よく出来た映画であることは間違いない。星★★★★☆。今後はうまくAmazon PrimeとNetflixを使い分けていくことを考えたいと思う。

2022年1月 5日 (水)

私が評価できないBrad Mehldauのアルバム。

_20211231"Anything Goes" Brad Mehldau(Warner Brothers)

このブログを定期的にご覧頂いている方であれば,私がBrad Mehldauの相当のファンであることはご承知だと思う。ピアニストとしてのBrad Mehldauの魅力に痺れて,公式音源のコンプリートを目指す(+注目すべき音源はブートも仕入れる)ような私であるから,Brad Mehldauの音楽についてはほぼ好意的に評価しているというのが事実である。しかし,そんな私でもこれは駄目だなと思える例外的な音源もあるのだ。それがこの"Anything Goes"である(ほかにも評価していないものもあるが,またそれは別途...)。

私がBrad Mehldauに痺れるのは,曲の美しさを活かしながらも,独自のピアノ・スタイルを打ち出すところにあるのだが,このアルバムが気に入らないのは,明らかに策に溺れたという感覚を与える演奏が存在するということだ。冒頭の"Get Happy"然り,終盤の"Smile"然りである。何度聞いても,ちっともいいと思えない演奏というのはこういうものだろうと思わざるをえない。それは久々にこのアルバムを取り出して聞いてみても変わらないのだ。

もちろん,全部が悪いと言っているのではない。ラストの”I've Grown Accustomed with Her Face"等は相応に魅力的に響く(と言っても,もっとよく出来たはずだとも思っている)し,このアルバムではPaul Simon作の"Still Crazy after All These Years"を選曲したことは非常に重要だと思う。しかし,そうした要素をもってしてもネガティブに評価せざるをえないような演奏を入れてしまったのが,私としてはどうしても解せないし,納得がいかないのだ。

今にして思えば,本作がJorge Rossyとの最終作となった訳だが,それは「策を弄し過ぎた」ことによるトリオとしての煮詰まり感のようなものを,Jorge Rossyに与えたのではないかとさえ勘繰ってしまうのだ。私にとっては,何度聞いても好きになれない鬼門のようなアルバムと言ってよいが,Brad Mehldauとて,傑作ばかりを産んでいる訳ではないということを証明している。星★★★。

しかしながら,こういうアルバムを聞いたとしても,Brad Mehldauが私にとっての最重要ピアニストであることには何の変りもない(きっぱり)。本作は失敗作だとしても,次の東京でのソロ・ライブのようなアルバムを出して,ちゃんとリカバリーするところが大事なのだ。

Recorded on October 8 & 9, 2002

Personnel: Brad Mehldau(p), Larry Grenadier(b), Jorge Rossy(ds)

2022年1月 4日 (火)

豪華なメンツによる正調フリー・ジャズ:これはハードル高いなぁ。

_20211228-2 "A Love Sonet for Billie Holiday" Wadada Leo Smith, Jack DeJohenette & Vijay Iyer(TUM Records)

新年早々記事をアップするにはハードルの高い音楽を選んでしまった気もするが,デリバリーが昨年末ぎりぎりだったので,まぁしょうがない(苦笑)。ご覧の通りのメンツによる正調フリー・ジャズである。1曲が3者の共作となっている以外は,作曲者のクレジットがあるから,テーマはあるのだろうが,真っ当にテンポを刻むという展開はあまりなく,3者が自由に対話したって感じのコレクティブ・インプロヴィゼーションと考えればいいと思う。

相応にリズムとメロディ・ラインが出てくる感じなのはJack DeJohnette作の"Song for World Forgiveness"の後半と3者共作の"Rocket"のみってところ。そんな音楽であるから,誰にでも受け入れやすい音楽とは言えない。しかし,Wadada Leo SmithとVijay Iyerには"A Cosmic Rhythm with Each Stroke"という素晴らしいデュオ作があった(記事はこちら)から,そこにJack DeJohnetteが加わることで,更に強力なアルバムになることを期待するのが筋ってものだ(きっぱり)。だが,このアルバムは,"A Cosmic Rhythm with Each Stroke"がもたらしたような感覚を与えるところまでは行かなかったというのが正直なところである。

どうもJack DeJohnetteはDave Liebmanとの"Fire"でもそうだったのだが,フリー的なアプローチに相性必ずしもよくないのではないかと思ってしまったが,そのため,この三者ならではの相乗効果が生まれていないように感じられるのだ。まぁ,レコーディングされたのは約5年前とは言え,Wadada Leo SmithもJack DeJohnetteも後期高齢者なので,そんな激しくはやれないってところはあるだろうが,それでもJack DeJohnetteにはもっとソリッドなドラミングを期待してしまうのだ。

もちろん,この三者による演奏であるから,演奏のレベル自体は相応に高いと評価できるし,Vijay Iyerのエレピやハモンドの使い方も面白いと思うが,これだったらWadada Leo SmithとVijay Iyerのデュオの方がよかったと思わせてしまうところが,このアルバムの決定的な難点。星★★★☆。しかし,こんなアルバムがフィンランドの会社からリリースされるってのが不思議な気もするが,このTUMって会社のカタログ(https://tumrecords.com/new-music)を見ると,Wadada Leo Smithだけでなく,ほかにも濃い~メンツによる超ハイブラウそうな(笑)アルバムが並んでいて,目が点になってしまった。

Recorded on Novemver 22, 2016

Personnel: Wadada Leo Smith(tp),Vijay Iyer(p, el-p, org, electronics), Jack DeJohnette(ds, perc)

2022年1月 3日 (月)

今更ながらDavid SylvianとRobert Frippの共演作を。

_20211230 "The First Day" David Sylivian & Robert Fripp(Virgin)

昨年の回顧記事を書いた際,King Crimsonのライブについて触れたところ,ブログのお知り合いである風呂井戸さんからDavid SylvianとRobert Frippの共演についてのコメントを頂いた。そう言えば,このアルバム,保有しているがブログにアップしていないなぁということで改めて聴くことにした。

正直言って,私はDavid Sylvianにも,Japanにも全く関心がなかったと言ってよいので,このアルバムを購入する気になったのは偏にRobert Frippゆえである。ジャケを見ればわかる通り,これはあくまでもDavid Sylvianのアルバムであって,Robert Frippはゲストという扱いと考えるべきだろうが,Robert FrippがCrimson,あるいは自分が中心となった編成以外でどういう演奏をするかというところの興味があった。私の中ではFrippがゲスト的に演奏したものと言えば,David Bowieの"Heroes"ってことになるが,ここではどうだったか。

結論から言ってしまえば,実にRobert Frippらしい演奏をしているし,こので生み出される音響はまさにRobert Frippの音としか言えないものとなっていて,Robert Frippのファンは楽しめるものに違いない。そして,音楽的にも実によく出来たアルバムだったなぁと改めて思ってしまった。全曲に渡ってFrippは作曲に関わっているから,Frippの個性が出るのも当然なのだが,バックにはTrey Gunnもいるし,ドラムスはPeter Gabrielを支えたJerry Marottaだから,まず間違いない布陣と言ってもよいものであった。

どちらかと言えば強烈な激しさは感じさせない序盤の展開から,突如現れる裏Crimson的な響きの"Firepower"や,"20th Century Dreaming"のヘヴィーなサウンドにはのけぞるが,これが実にKing Crimson的な刺激に満ちていて,高揚感を与えるものとなっている。それに続く"Darshan"なんて延々続くファンク的なところも感じさせて,このビートにはまってしまうと,これがまた心地よいことこの上ないのだ。これなんて,ある意味Talking Headsの"Remain in Light"的と言ってもよいかもしれないが,聴いていると一緒にギターでカッティングをかましたくなるぜ!って感じなのだ。これはどう考えても麻薬的。転じて最後の"Bringing Down the Light"はエピローグのように,アンビエント的に締めるってのもいいねぇ。

アルバム全体で7曲で("Darshan"なんてなんと17分越えだ),そうした構成はプログレ的と言ってもよいが,それよりも何よりも,David Sylvianの声って結構魅力的だったのねぇなんて今更ながら思っていた私である。久しぶりに聞いたら実によかったので,彼らが残したライブ盤もこれまた今更ながら発注してしまったのだが,そちらについては改めて書くとして,これはこれで私としては再評価に値する音楽だと思った。星★★★★☆。いやぁ~,今更ながらですがカッコええですわ。

Personnel:David Sylvian(vo, g, key, tapes), Robert Fripp(g, frippertronics), Trey Gunn(stick, vo), David Bottrill(treatments, sample-perc, prog), Jerry Marotta(ds, perc), Marc Anderson(perc), Ingrid Chavez(vo)

2022年1月 2日 (日)

新年最初の音楽はStan Getzの発掘音源。Astrud Gilbertoの下手さ加減が改めてよくわかる(苦笑)。

Stan-getz-berlin-1966 "Live at the Berlin Jazz Festival" Stan Getz / Astrud Gilberto(The Lost Recordings)

新年最初の音楽はこれにしようということで,昨年後半にリリースされていたが,全くノーマークだったStan Getzの発掘音源である。1966年の欧州楽旅の記録で,同年には"Stan Getz Quartet in Paris"という音源もあるが,ここはAstrud Gilbertoがゲストで加わった2枚組。また,レコーディングの期日は近いものの,ベースがパリではSteve Swallowなのが,ここではChuck Israelsというのが珍しい。

まぁ,パリのライブでも感じたことだが,Roy Haynesは一部の曲では明らかに叩き過ぎで,Stan Getzの音楽に合っているとは思えない部分があるのは仕方がないが,Stan Getzのプレイは好調そのものなので,安心して聞ける音源だと言ってよいと思う。Astrud Gilbertoとの共演は"Getz/Gilrberto"や"Getz au Go Go"があるので珍しいものではないが,まぁこの時期,この二人が演奏するとどんな感じだったのかってのを知る上では興味深い。

ディスク1はGetzのクァルテットによる演奏で,パリの演奏同様のレベルは維持している。しかし,ディスク2に移って,Astrud Gilbertoが登場するに至って,わかっていたとは言え,Astrud Gilbertoの歌の下手くそさ加減に,私は正直辟易としてしまったのであった。スタジオ録音ならごまかしもきいただろうが,ライブではその下手さ加減が露骨に出てしまう。特に前半のひどさはもはや救いようがないレベルと言ってしまおう。世の中「ヘタウマ」なんて表現もあるが,私にとっては単なる下手くそな歌手に過ぎないと思わせるのが冒頭の"One Note Samba"である。

まぁ,緊張もあったんだろうなぁとは思う。以前,Dave GrusinのDream Orchestraと一緒に日本に来たMichael Franksが,ど緊張でひどい出来だったのを思い出していた私である。Michael Franksは,後にNYCのBeacon Theaterで観た時は結構まともだったから,来日時の体たらくは武道館という場にビビったというところではなかったかということを考えると,ここでのAstrud Gilbertoもベルリン・フィルハーモニック・ホールという場の雰囲気に呑まれたということか。演奏が進むにつれて,徐々に緊張はほぐれてきたとも感じさせるが,「声」の魅力はあったとしても,この程度ではねぇというレベルではどうしようもない。

"Getz au Go Go"ではそれほど気にならなかった下手くそさ具合が,修正のおかげだろうと勘繰らざるをえないというのがこの発掘音源を聞いての正直なところ。せっかくゲットした音源なので,今後はAsrud Gilbertoのことは無視してこのアルバムを聞くことにしようってところ。Stan Getzに免じて星★★★★。新年早々,いきなり辛口になってしまった。世の中のAstrud Gilbertoファンの皆さん,ごめんなさいってことで...(笑)。

Recorded Live in Berlin on November 4, 1966

Personnel: Stan Getz(ts), Gary Burton(vib), Chuck Israels(b), Roy Haynes(ds), Astrud Gilberto(vo)

2022年1月 1日 (土)

あけましておめでとうございます。

Sunrise-in-nyc

皆さん,あけましておめでとうございます。

今年はどんな年になるのか,期待と不安が交錯しますが,きっと去年よりはいい年になると信じたいですね。

それにしても,このブログも16年目って,我ながらよく続いていますわ。還暦過ぎのおっさんのボケ防止には丁度ええわってことで,今年もよろしくお付き合い下さい。

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