"We All Love Ella: Celebrating the First Lady of Song" Varilus Artists(Verve)
これも実に久しぶりに聞いたアルバム。本作は結構豪華な歌手陣が,Ella Fitzgeraldにトリビュートしたアルバムなのだが,Ellaへの敬愛を示すべく,本人たちの個性はあまり打ち出さず,ストレートに歌唱しているように感じられる。それをよしとするかどうかはリスナーの判断になろうが,ここに参加した歌手陣はリスペクトを優先したってことだと思える。例えばChaka Khanなら更に個性的な歌唱も可能だったはずだが,彼女が歌う"Lallaby of Birdland"なんてむしろ抑制すら感じさせるのだから,これはびっくりである。この辺りはプロデューサーとしてのPhil Ramoneの意向も働いているかもしれない。
私が保有するCDはボートラ2曲含めて全16曲だが,Natalie ColeとChaka Khanの出番が2曲(1曲は二人の共演)と,やや特別扱いで,前半に彼女たちの出番を集めている。基本はビッグバンドをバックに歌う形式であるが,Diana KrallはHank Jonesとのデュオで渋く歌ったり,Lizz Wrightはギターとヴァイオリンをバックにしっとりと歌うという例外もあるが,こういう違いを打ち出すことで,変化をつけているのが楽しい。
Gladys Knightが歌う"Someone to Watch over Me"はややコンテンポラリーな感覚を持たせるのは,このアレンジを担当したBilly Childsらしいところだが,Etta Jamesが歌う"Do Nothin’ till You Hear from Me"のブルージーな感覚と,k.d. langが歌う"Angel Eyes"のけだるい雰囲気は,このアルバムで最も歌手としての個性を出したものと言ってもよいかもしれない。
男性歌手代表はMichael Bubléだが,非常にいい感じで歌っていて女性陣に負けていない。そして本編最後を飾るのがStevie WonderとEllaのデュオによる"You Are My Sunshine of My Life"である。これだけは1977年の発掘音源ってところだろうが,実に楽し気に歌っていて,最後を飾るに相応しいって感じだ。
それに続くボートラ2曲がDee Dee BridgewaterとNikki Yanofskyなのだが,びっくりしてしまうのが後者。当時Nikki Yanofskyは13歳ぐらいのはずだが,とてもその年齢とは思えない歌いっぷりなのだ。スキャット,アドリブ,どちらもちょっと可愛げがないと言いたくなるほど饒舌そのもの。聞いた感じ,相当Ella Fitzgeraldに影響を受けているというところだが,私にはやり過ぎだろうって思えるほどだった。天才と言うのは簡単かもしれないし,確かに凄い歌唱ではあるのだが,私にはやっぱり可愛げがないとしか思えなかった。何ごともやり過ぎは禁物である。
そうは言いつつ,全体的には結構楽しめるアルバムであった。星★★★★。演奏者は非常に多いので,歌手と主要メンツとソロイストだけ記述。尚,ブックレットのPersonnelには誤りがあり,正しくは裏ジャケの記載の通りのはず。
Personnel: Ella Fitzgerald(vo), Natalie Cole(vo), Chaka Khan(vo), Queen Latifah(vo), Diana Krall(vo), Diane Reeves(vo), Lizz Wright(vo), Ledisi(vo), Linda Ronstadt(vo), Gladys Knight(vo), Etta James(vo), k.d. lang(vo), Michael Bublé(vo), Stevie Wonder(vo), Dee Dee Bridgewater(vo), Nikki Yanofsky(vo), Rob Mounsey(p), Billy Childs(p), Terry Trotter(p), Hank Jones(p), Alan Broadbent(p), Gerald Clayton(p), Dean Parks(g), Rodney Jones(g), Russel Malone(g), Jeff Mironov(g), Josh Sklair(g), Anthony Wilson(g), Kevin Axt(b), David Finck(b), Christian McBride(b), Bob Hurst(b), John Clayton(b), Gregg Field(ds), Curt Bisquera(ds), Lewis Nash(ds), Mark McLean(ds), Jeff Hamilton(ds), Tony Kadleck(tp), Steve Wilson(as), Tom Scott(ts), Regina Carter(vln)
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