元Brad MehldauトリオのJorge RossyによるECM作。
Jeff Ballardに交代するまで,Brad Mehldauトリオの不動のドラマーであったJorge RossyによるECMからのリーダー作である。トリオ脱退後はドラマーと言うより,ヴァイブ奏者としての活動が活発になっていたと思うが,本作においてもドラムスはJeff Ballardに任せて,リーダーはヴァイブとマリンバに専念している。
Manfred EicherはExecutive Producerとクレジットされているので,持ち込み音源と思われるが,Jorge RossyはJakob Broの"Uma Elmo"に参加していたから,それが縁となってのリリースとなったのかもしれない。サウンド的にはECMのアルバムとしては,コンベンショナルなジャズ・フレイヴァーが漂わせつつも,音数が多い訳ではなく,へぇ~って感じである。この辺りは,ECMが日ごろ使っているスタジオやエンジニアと違うところも影響しているだろう。
特筆すべきは私のしょぼいオーディオ・セットで聞いても感じられる音のよさである。非常にクリアで粒立ちのよい音に聞こえる。こうした演奏を捉えるためには,音のクォリティも必要だと思うが,まさに音楽にぴったりのエンジニアリングではないかと思える。ECMの音には独特のECMらしさが存在するが,これは明らかに昨今のECMの音とは異なるように感じる。
収録された全10曲中9曲がJorge Rossyのオリジナルで,残る1曲がChris Cheek作ってのが面白い。まぁ,Jorge RossyにはChris Cheekとの共演歴もあるから,取り上げることには違和感はないが,「敢えて」ってところは,今でも付き合いがあることの証であろう。アルバム全編を通じて聞いてみると,決して悪いとは思わないが,突出した魅力を感じるかと言うと,そうでもないってのが正直なところである。私としては4ビート的な展開の方が面白く聞けたので,この編成にはよりオーセンティックな感じでの演奏の方がフィットしているのではないか。
まぁヴァイブ・トリオってのはあるようでない編成であり,そこが難しさと言うこともできるが,よほど魅力的にやらないと聞く方も集中力が保てないって気がする。それに敢えてチャレンジする姿勢は立派と認めつつも,アルバムとしてはプレイバックの頻度は高まりそうにないというのが正直なところ。星★★★☆。
Recorded in September 2020
Personnel: Jorge Rossy(vib, marimba), Robert Landfermann(b), Jeff Ballard(ds, perc)
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