待望!Marcin Wasilewski Trioの新作。やっぱり痺れるわ。
"En Attendant" Marcin Wasilewski Trio(ECM)
今年の音楽シーズンの幕開けを飾ると言ってもよい待望の新作の登場である。このブログにも何度か書いているが,今,私が最も信頼するピアニストはBrad Mehldau,Fred Hersch,そしてこのMarcin Wasilewskiである。そのMarcin Wasilewskiのトリオによる新譜とあってはデリバリー,即記事アップである。
前作"Arctic Riff"はJoe Lovanoを迎えたある種の企画盤であったが,あれはあれでいいとして,私としては彼らの魅力はやはりピアノ・トリオでこそ発揮されると思っていた。特に私が引っ掛かったのは前作におけるコレクティブ・インプロヴィゼーションの部分であった。では本作ではどうなっていたか?
結論から言えば,私としては前作よりはるかに評価したい。トリオの3人による即興のようなアブストラクトな展開ももあるにはあるのだが,それを上回る美感がこのアルバムを支配している。録音時期は"Arctic Riff"同様,2019年8月なので,どっちが先だったのか?ってのは実に興味深いところではあるし,前作でも演奏していた"Glimmer of Hope"と"Vashkar"をここでも演奏しているのが,この2枚のアルバムの関係性を示しているような気もする。私にとってはこっちが本番,"Arctic Riff"が番外編のように思えてしまうが,彼らにとっては逆だったかもしれない。
いずれにしても,いつもながらの美学を感じさせる演奏なのだが,Doorsの"Riders on the Storm"のような意外な選曲もありながら,Doorsのメロディが実は非常に優れていたものであることをあぶり出しているような演奏だし,もっと驚いたのは「ゴルトベルク変奏曲」の第25変奏をアダプテーションしたことである。しかし,彼らの手にかかれば,バッハもこうなるかぁみたいな感じで,これがまたまたびっくりである。しかし,そこには彼らの音楽的資質と相俟った深遠なる世界が現れるというところで,実に味わい深い演奏である。
今回このアルバムを聞いても,彼らはやはり現代最高峰のピアノ・トリオの一つだという思いを強くしてしまったが,私にとってはもはやこれは惚れた弱みなのかもしれない。どうしても星★★★★★としてしまうのがその証(笑)。
Recorded in August 2019
Personnel: Marcin Wasilewski(p), Slawomir Kurkiewicz(b), Michal Miskiewicz(ds)
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コメント
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閣下、リンクをありがとうございました。m(_ _)m
閣下は、痺れると思ってましたし、私も見事に痺れました。笑
で、どうも、こちらが先に録音したようですよね。
しかし、期待を裏切らないトリオです!
私もリンクを置いていきます。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2021/09/post-25040d.html
投稿: Suzuck | 2021年9月14日 (火) 08時25分
私も今回のアルバムは絶賛ですね。
やはりトリオのそれぞれの持ち味を生かし、そしてこのアルバムのようにトータル・アルバムとして一つの世界を築くというところが最高ですね。ピアノ以外も実に充実しています。
録音も良く、更に今はハイレゾでストリーモング、ダウンロードも出来て、私の場合はMQAハイレゾでも聴いてみてますが、繊細にしてクリアーな音が、更に三者を心地よく聴き取れて素晴らしいです。いい事態になりました。
リンクお願いします (↓)
http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2021/09/post-187434.html
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年9月14日 (火) 21時38分
Suzuckさん,こんばんは。リンクありがとうございます。
>閣下は、痺れると思ってましたし、私も見事に痺れました。笑
バレバレですよね。
>で、どうも、こちらが先に録音したようですよね。
同じ2019年8月録音となっていて,どっちが先かはわかりませんが,多分こちらを先にレコーディングして,Joe Lovanoを迎えたってところでしょうかね。いずれにしても,今回も実に彼ららしい響きに満ちた素晴らしい作品でした。
投稿: 中年音楽狂 | 2021年9月15日 (水) 21時10分
photofloyd(風呂井戸)さん,こんばんは。リンクありがとうございます。
>私も今回のアルバムは絶賛ですね。
>やはりトリオのそれぞれの持ち味を生かし、そしてこのアルバムのようにトータル・アルバムとして一つの世界を築くというところが最高ですね。ピアノ以外も実に充実しています。
その通りですね。響きの美しさに加えてのこの一体感,見事と言わざるをえません。
>繊細にしてクリアーな音が、更に三者を心地よく聴き取れて素晴らしいです。
媒体は選ばずって感じの素晴らしさです。もう無条件に「好き❤」って言っちゃいます(爆)。
投稿: 中年音楽狂 | 2021年9月15日 (水) 21時13分
こんにちは。
ECMのイメージとピアノ・トリオの素晴らしいイメージがピッタリとハマるアルバムに出会えたと思いました。かなりフリー・インプロヴィゼーションの曲を前面に出していながら、他の曲との垣根もあまりなく、耽美的に、時に少し鋭く、そして淡々として進んでいくのは見事です。今年ではかなり好きな方のアルバムになりました。
当方のリンク先は以下の通りです。
https://jazz.txt-nifty.com/kudojazz/2021/09/post-2c2628.html
投稿: 910 | 2021年9月16日 (木) 13時51分
910さん,こんばんは。リンクありがとうございます。
こちらが期待する音そののものでしたね。私にとって,重要な位置付けにあるトリオですが,今回も素晴らしい作品でした。
やっぱりトリオがこの人たちには似合います。
投稿: 中年音楽狂 | 2021年9月16日 (木) 20時40分