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2021年4月30日 (金)

猫ジャケが可愛いアルバムだが,ちょいと微妙な"Bella"。

_20210427"Bella" Rava / Pieranunzi / Pietropaoli / Gatto(Philology)

いろいろな音楽を聞いていて,自分の記憶におけるイメージと違いを感じることはよくあることだ。昨日記事にした"Mirror Ball"はイメージ好転の事例だが,このアルバムは正直イマイチ感が強くなったアルバムだと思える。こんなんだったっけ?ってところだ。

その原因は2曲目の"My Funny Valentine(Take 2)"にある。このアルバムでは”My Funny Valentine"が2回演奏されているが,2曲目のTake 2の演奏はフリーなアプローチから始まって,徐々にあの"My Funny Valentine"に転じていくってところなのだが,このフリーのアプローチがあまりいけていない。デフォルメするなら徹底的にデフォルメすればいいと思うが,結局はスタンダードな演奏パターンに入っていくところに必然性を感じないのだ。策に溺れたという印象が実に強い。私がいくらラッパのワンホーン・アルバムが好きでも,これはいかん。このブログの読者はご存じだろうが,私はフリー・ジャズにも全く抵抗がないのだが,このテイクには中途半端な感じしかしない。

だからこそ,それに続くEnrico Pieranuziのオリジナル,"So Near"のリリカルさが魅力的に響くってのはあったとしても,やはり2曲目に聞かれたフリーのアプローチは好かん。続くEnrico Ravaのオリジナル,"Secrets"はリリカルなイントロから,ややダークなイメージで演じられるが,ここで聞かれるPieranunziのピアノは,リスナーが彼に期待するトーンってところだろう。

それに続くのが”My Funny Valentine(Take 1)”だが,ややテンポを上げてスウィンギーに演奏されるこっちのテイクの方がはるかに上出来であり,アルバムに2テイク入れる必要は全くなかったと言いたくなる。Enrico Ravaのラッパもいい感じである。そして,また最後が集団即興のその名も"Free Tune"なのだが,典型的なフリーになっておらず,リリカルな部分を残しながら,徐々に熱量を上げていきつつ,4ビート的な展開も示すこの演奏は悪くないと思う。

結局のところ,私にとっては2曲目の蛇足感ばかりが強く,そこで印象が悪くなったっていうアルバム。トータルで言えば星★★★☆ってところ。

尚,ライナーを読んでいると,このジャケに写る猫はPillaという名前で,早くに死んでしまったらしいのだが,おそらくはプロデューサーのPaolo Piangiarrelliの飼い猫だったってことだろうか。まぁ印象には残るジャケットであることは間違いないが,それがいいのか悪いのかは敢えて触れずにおこう。でもこのフォント使いはないな(苦笑)。

Recorded on May 29 &30, 1990

Personnel: Enrico Rava(tp), Enrico Pieranunzi(p), Enzo Pietropaoli(b), Roberto Gatto(ds)

2021年4月29日 (木)

久しぶりに聞いたら興奮してしまった"Mirror Ball"

Mirror-ball "Mirror Ball" Neil Young(Reprise)

兄貴ことNeil YoungがPearl Jamと共演したということで,大きな話題を呼んだアルバムがリリースされたのが1995年。もう四半世紀以上前のこととは信じがたいが,Crazy Horseの代わりにPearl Jamを据えて,グランジ的なアプローチで臨んだアルバムである。

正直言ってしまうと,Neil Youngの多作ぶりにはこっちも困ってしまうというところで,このアルバムもしょっちゅう聞くアルバムという位置づけにはない。実のところ,聞くのはいつ以来なのかよくわからないぐらいである。しかし,久々に聞いて,家人がいないことをいいことに,ついついボリューム・ノブを右にひねってしまった。そして興奮してしまった。実にロックなアルバムである。

Crazy Horseと比べると,Pearl Jamには荒々しさが足りないという評価もあるようだが,私には全然問題ないと思えるアルバムである。Neil Youngのヴォーカルのミキシング・レベルをバンド・サウンドにやや埋没させた感じがまた燃える。アドレナリンを分泌させるってところだろう。

こういうことがあるから,手持ちのアルバムはちゃんと聞かないといかんと思うのだが,本作は私が思っていたよりずっとよかった。そもそもこのアルバムを国内盤で買っていたことに気づいたことが実に意外であった。なんで国内盤だったのかは全く記憶にないが,そんなことはどうでもええわと思わせるぐらいの興奮度。たった4日間のセッションで作り上げたところに勢い重視ってところを感じさせるアルバム。星★★★★☆。Pearl Jam名義で出したEP,"Merkinball"も改めて聞いてみようっと(笑)。

Recorded between January 26 – February 10, 1995

Personnel: Neil Young(vo, g, org), Jeff Ament(b), Stone Gossard(g), Jack Irons(ds), Mike McReady(g), Eddie Vedder(vo)

2021年4月28日 (水)

先日のDr. Lonnie Smith盤に触発されて聴いたIggy Popの傑作。

_20210426 "Brick by Brick" Iggy Pop(Virgin)

先日取り上げたDr. Lonnie Smithの"Breathe"に客演して渋いヴォーカルを聞かせたIggy Popであるが,私にとってのイメージとしてはやっぱりこっちだよねぇって感じで久々に取り出したのがこのアルバムである。このアルバムは私が在米中に購入したもののはずだが,それ以来本作は非常に好きなアルバムとなっている。

Dr. Lonnie SmithのアルバムのプロデュースはDon Wasであったが,この作品もそのDon Wasプロデュースであり,今回のDr. Lonnie Smith盤への参加もそうした縁があったのではないかと思っている。だが,ここで聞かれるのは,Stoogesとは違うが,あくまでもロックなIggy Popである。そしてこれがバックのミュージシャンにも恵まれて実にいいアルバムなのだ。ソリッドでありながら,押しまくるだけではない絶妙なバランスがアルバムを通して保たれているところが素晴らしいと思える。そして,ゲストの使い方の適材適所ぶりには感心してしまうが,この辺はDon Wasの手腕だろうなぁって思う。

ジャケのアメコミ的なタッチには,購入時引いたってのが正直なところではあるが,この音楽にはこれがフィットしているように思えてしまうのが勝手なところである。しかし,これはリリースから30年以上経過しても実に優れたアルバムで,全然古びたところがないのがまさに最高。星★★★★★しかない。

Recorded between February 15 and March 23, 1990

Personnel: Iggy Pop(vo, g), Slash(g), Waddy Wachtel(g), David Lindley(g, vln, mandolin, bouzouki, saz), Jamie  Muhoberac(p, key, org), Duff McKagan(b), Charley Drayton(b), Chuck Domanico(b), Kenny Aronoff(ds), David McMurray(sax), Kate Pierson(vo), John Hiatt(vo), Ed Cherney(vo), Sir Harry Bowens(vo), Sweet Pea Atkinson(vo), Doanld Ray Mitchell(vo), Alex Brown(vo), The Leeching Delinquents(vo)

2021年4月27日 (火)

週末に観た古い映画:2本目は「決断の3時10分」

310 「決断の3時10分("3:10 to Yuma")」(’57,米,Columbia)

監督:Dellmer Daves

出演:Glenn Ford,Van Heflin,Felicia Farr, Leora Dana, Henry Jones, Richard Jackell

後にRussell CroweとChristan Bale主演でリメイクされる映画のオリジナルが本作である。リメイク作も私はその年のベスト作の一つに挙げるほど面白い作品であった(記事はこちら)。リメイク作でも同様なのだが,本来は悪役と言ってよいGlenn Ford(リメイク作ではRussell Crowe)がカッコよく描かれるところが特徴的な映画と言ってもよい。まぁ,当時のGlenn Fordはアメリカ映画界の大スターなのだから,そういう扱いでも当然と言えるだろうが,そうした扱いは別にしても,実によく出来た西部劇である。

昨日取り上げた「大空港」でもそうだし,「シェーン」でもそうなのだが,ここでのVan HeflinはGlenn Fordとは異なり,「市井の普通の(かつちょっと弱さを持った)人」って感じで描かれるのだが,それがフィットするまさにバイ・プレイヤー中のバイ・プレイヤーってところかもしれない。Glenn Fordとの対比すれば,Glenn Fordがカッコよく描かれ過ぎってところだが,まぁそれがスター・システムであるから仕方なかろう。それを考えるとSergio Leoneの「ウエスタン」で「アメリカの善良」みたいなHerny Fondaが徹底した悪役を演じたのはある意味凄いことであった。

それはさておき,私がこの映画を観ていて実に感銘を受けたのがアメリカの荒野の原風景とも呼ぶべき,ロケ地アリゾナの様子であった。こういうのを見ているだけで西部劇好きは嬉しくなってしまうだろうと思えるし,コンベンショナルな西部劇のよさがつくづく表れていると思ってしまった。

リメイク作はなかなか日本で公開されず,だいぶ時間が経ってから「3時10分 決断のとき」なんてタイトルで公開されたが,改めてこのオリジナルを観て,リメイクも観たくなってしまった私である。ということで,ついつい点も甘くなり星★★★★★。

2021年4月26日 (月)

週末に観た古い映画:1本目は「大空港」

Airport 「大空港("Airport")」('70,米,Universal)

監督:George Seaton

出演:Burt Lancaster, Dean Martin, Jean Seberg, Jacqueline Bisset, George Kennedy, Helen Hayes, Van Heflin

週末に家人が出掛けている隙に(笑),立て続けに古い映画を2本,DVDで観た。その1本目が本作だが,偶然にも両方ともVan Heflinが出演している。

この映画は後に「エアポート」シリーズ化され,駄作を連発するが,この映画はまだまともに見られるレベルだと思う。元祖「グランド・ホテル」形式のパニック映画みたいな感じだが,時代というか,サスペンス感はそんなに盛り上がらない実にのんびりした感じなのが微笑ましい。

ストーリー・ラインはネタバレになってしまうので,あまり書くべきではないと思うが,この映画で最高の儲け役はGeorge Kennedyであることは間違いなく,後のシリーズにも皆勤で出演することになる。そして後年,どんどん出世しているのが笑えるが,これが本当の儲け役。そしてこの映画で最も印象的なのはただ乗り常習犯を演じるHelen Hayes。このコミック・リリーフとも言うべき役柄で,Helen Hayesはオスカーの助演女優賞を獲ることになるが,彼女は「マデロンの悲劇」でこれを遡ること約40年前に,オスカーの主演女優賞を獲っている。これって相当凄いことなのではないかと思えるが,この映画で印象的なキャラクターはGeorge KennedyとHelen Hayesと言っていいと思う。

この映画が公開された1970年という時代を感じるのは,飛行機で平気でタバコを吸っているし,空港内にもあらゆるところに灰皿が置かれていることだが,そもそも自爆するVan Heflinのセキュリティ・チェックはどうだったのよ?って言いたくなってしまうが,まだまだそういう時代だったんだろうなぁと思う。それに加え,このゆったりした展開は現代の映画からすると,少々間延びした感覚を覚えるが,人間ドラマに重きを置くか,サスペンスに重きを置くかで展開は随分変わってくるとは思う。それでも相当ゆったりした展開と言ってもよいだろう。

まぁ,こういう映画は肩ひじ張らずのんびり見ていればいいって感じであるが,私にとってはGeorge KennedyとHelen Hayesに加えて,Jean Sebergのクール・ビューティぶりがなかなかよかった。そうは言っても星★★★☆が精いっぱいとは思うが,まぁ古き佳き時代ってことで。いずれにしても,主演のBurt Lancasterはそれっぽく,Dean Martinはやっぱりねって感じのイメージのキャスティングってところだが,この映画はやはり助演陣が印象的な映画と言ってよいと思う。

2021年4月25日 (日)

幽玄という言葉しか浮かばないJakob Broの新作。

_20210422 "Uma Elmo" Jakob Bro(ECM)

これがECMでのリーダー・アルバムとしては第5作となるJakob Broの新作である。私も彼のアルバムは出るたびに購入して当ブログでも記事にしているが,なぜか"Returnings"は記事にし損なっている。それでもCotton Clubに出た時も観に行っているぐらいだから,結局好きなのだ(笑)。これだけアルバムを出すってことは,Manfred Eicherにも気に入られているってことだろう。

この人の音楽というのはアンビエント,あるいはミニマルな感覚と言ってよい静謐な音楽であり,ダイナミズムの対極にあると言っても過言ではない。NYCのJazz Standardでのライブ盤"Bay of Rainbows"の記事でも書いたが,ライブの場においても,そうした音楽性に変わりがないというのが凄い。

そして,そういう感覚はg~tp~dsという変則的なトリオで演じられる本作においても一切変わりがない。この音楽を聞いていて私が思い浮かぶ表現は「幽玄」しかなかったというところである。我ながら表現力に乏しいと思ってしまうが,ある意味,能を見ているような感覚を覚えたと言ってもよいかもしれない。

ここでドラムスを叩いているのは元Brad Mehldau TrioのJorge Rossyであるが,叩くって感じではないサポートぶりである。昨今,ドラムスを叩く機会が減って,ヴァイブ奏者化しているJorge Rossyの名前をここで見つけるとは意外中の以外って感じもするが,こういう感じでもちゃんとできちゃうのねぇと感心してしまった私である。Brad Mehldauとの共演時もサトルな表現力を持っていたJorge Rossyだが,それを更に突き詰めて,ミニマル化した感じと言えばいいだろうか。

そこにArve Henriksenのラッパが加わっても全然熱量は上がらない(笑)。Jakob Broのアルバムはどれを聞いてもそういう感じなのだが,これが彼の個性であり,音楽的主張なのだろうと思ってしまう。ただ,こういう音楽に耐性があるかどうかは聞く人次第であるから,何じゃこれは?と思う人がいても全く不思議ではない。だが,以前にも書いたことだが,やはりJakob Broのやる音楽は麻薬的で,はまるとこれが気持ちよくなってしまうのだ。今回もこのアルバムを聞きながら仕事をしていたのだが,何の邪魔にもならない(爆)。心地よく身を委ねればいいのだと改めて思った次第。甘いと承知で星★★★★☆としよう。

Recorded in September, 2020

Personnel: Jakob Bro(g), Arve Henrilsen(tp), Jorge Rossy(ds)

2021年4月24日 (土)

Daniel Santiago: このポップな軽さが心地よい。

_20210421 "Song for Tomorrow" Daniel Santiago(Heartcore)

このアルバムが某誌に紹介されており,結構気になって購入したものである。プロデュースがKurt Rosenwinkelというのもあるが,ゲスト陣も気になってのことである。

そして,主題の通りであるが,このアルバムのポップな感覚が実に心地よい。例えば,3曲目にはJoshua Redmanがゲストとして,ソプラノ・サックスで加わっているのだが,まるでライト・フュージョンのようなノリのフレージングを聞かせるのには驚いてしまうのだが,違和感は全くない。多分,私がこういうタイプの音楽が好きだってことを示しているとは思うのだが,昔,Flavio VenturiniとToninho Hortaのアルバムを聞いた時の感覚を思い出していた。

私はそんなにブラジル音楽を聞いている訳ではないが,現代のブラジル音楽らしい軽さとメロディ・センスが相まって,実に魅力的に響くサウンドであり,聞いていて本当に気持ちいいのだ。いろいろなタイプの曲がコンパクト(最長でも4分ちょっとである)に収まっているのもいい感じである。

基本的にはKurt Rosenwinkel,Pedro Martinsとの演奏が多いが,コラボも上々ってところだろう。いきなり冒頭の"Open World"にEric Claptonが客演しているのだが,Kurt Rosenwinkelの"Caipi"でもゲストとして登場していたから,そういう縁ってところか。4曲目にはAaron Parksも登場するが,あまり目立ってはいない(苦笑)。あくまで控えめなのがAaron Parksらしいってところか。

いずれにしても,このアルバム,なかなかの快楽感をもたらしてくれるアルバムであった。星★★★★☆。

Personnel: Daniel Santiago(vo, g, b, synth, perc), Pedro Martins(g, b, p, key, synth, ds, perc, vo), Kurt Rosenwinkel(g, b, ds, vo), Frederico Hellodoro(b), Sergio Machado(ds), Renato Galvao(ds), Eric Clapton(g), Charis Kalantzas(g), Joshua Redman(ss), Aaron Parks(p), Marina Marchi(vo)

2021年4月23日 (金)

タレント・スカウトとしてのTom Harrellの功績。

_20210418 "Light On" Tom Harrell (High Note)

昨今はTom Harrellがいろいろな編成でのアルバム・リリースを続けているので,活動そのものは活発とは言えないものの,現在も続くTom Harrell Quintetの第1作が本作である。ベースのUgonna Okegwoを除けば,本作がレコーディングされた頃のこのバンド・メンバーの知名度はそれほど高くなかったはずであるが,素晴らしい実力者を揃えていたことは,後々実証されることとなる。そうした意味で,このクインテットが非常に魅力的であり,Tom Harrellにとっても満足のいくバンドであったことが,今も尚,解散したという話はないということにつながっていると思う。逆に言えば,主題にも書いた通り,若きタレントをスカウトする審美眼をTom Harrellが持っていたことの証であるし,彼らへの注目度を高めた功績は大きい。

そのメンバーとはWayne Escoffery,Danny Grissett,Johnathan Blakeであるが,彼らはリーダーとしてもその後素晴らしいアルバムをリリースすることになり,もちろん,元から実力はあっただろうが,Tom Harrell道場で鍛えられた結果ということも可能だろう。彼らの強みはコンベンショナルでも,コンテンポラリーでもどっちでもいけるってところだと思うが,それこそTom Harrellのバンドの路線と合致すると言っても過言ではない。これ以降のアルバムでもそうだが,ダニグリはピアノとRhodesの両刀使いなので特にそういう感覚が強いが,Tom Harrellのバンドは普通の4ビートだけを演奏するって感じではないところのバランス感覚がいいのだが,それを実現できたのはこのメンツだからこそって気がする。

燃え上がるって感じのサウンドとは言えないのだが,このミディアム・テンポ中心で構成されるアルバムは実に心地よく聞けるし,既に演奏のレベルはこのクインテット第1作から高かったってのを改めて感じた私である。このクインテットでリリースしたアルバムは"Number Five"が最後ではないかと思うが,またこのメンツでやってくれることを期待しつつ,星★★★★。しかし,なんで私は"Number Five"の前の"The Time of the Sun"を買っていなかったのか?ストリーミングで聞いたら,なかなかナイスなアルバムであったことを付け加えておく。

Recorded on December 5 & 7, 2006

Personnel: Tom Harrell(tp, fl-h), Wayne Escoffery(ts), Danny Grisett(p, rhodes), Ugonna Okegwo(b), Johnathan Blake(ds)

2021年4月22日 (木)

Hothouse Flowersかぁ...。これも懐かしいねぇ。

_20210417-2 "Home" Hothouse Flowers(FFRR/London)

このHothouse Flowersの2ndアルバムがリリースされたのが1990年のことなので,多分,私がこのアルバムを購入したのはNYC在住中のことではなかったかと思う。どうしてこのアルバムを買う気になったのかははっきりと覚えていないのだが,おそらくプロモーションで米国のTV番組に出ていたのを見てカッコいいと思ったか,店頭でプレイバックされているのを聞いて気に入ったかのどちらかだろう。それから30年以上の時間が経過した今でも,このアルバムに古臭さを感じないのは,やはり同時代を過ごしたゆえのことかもしれないが,こういうサウンドは今も昔も変わらないってことなのかもしれないし,私が根本的にこういう音が好きなんだろうってことだと思う。

Hothouse Flowersはアイルランドのバンドであるが,アイリッシュっぽい響きが強いという感じではなく,十分アメリカ的と言ってもよいような感じである。それはBob SegerやBruce Springsteenを想起させるような曲調があるからだが,同じアイルランド出身でもU2とは違うねぇと感じさせるし,私が気に入ったのは本作から感じ取れるアメリカ寄りの音があったかもしれない。以前にも書いたが,私はロックはブリティッシュよりもアメリカン指向なのだ。

いずれにしても,ロック的な勢いもあれば,メロディ・ラインも非常によくて,このアルバムは久しぶりに聞いても実によい作品であった。Steve Nieveが結構関わっているし,Daniel Lanoisが1曲でドブロを弾いていたりと新しい発見があったのもよかった。星★★★★☆。

Personnel: Liam Ó Maonlaí(vo, p, org, bodhran), Fiachna Ó Braonáin(g, b, vo), Peter O’Toole(vo, b, bouzouki, mandolin), Leo Barnes(sax, org, vo), Jerry Fehily(ds, perc, vo) with Noel Eccles(perc), Claudia Fontaine (vo), Luis Jardim(perc), Carol Kenyon(vo), Andy Darker(vla), Aisling Drury-Byrne(cello), Wilfred Gibson(vln), Garfield Jackson(vla), Nawalifh Ali Khan(fiddle), Daniel Lanois(dobro), Martin Loveday(cello), Steve Nieve(org, p), Andrew Parker(vla), Andy Parker(vla), Steve Wickham(fiddle), Gavyn Wright(vln)

2021年4月21日 (水)

天才とはこういうものだと思い知らされるDerek Trucksの初リーダー作。

Derek-trucks-band"The Derek Trucks Band" (Landslide)

今や世界一のスライド・ギタリストと言っても過言ではないDerek Trucksは1979年生まれなので,まだ不惑を少し過ぎたところである。コロナ禍により停滞はしつつも,Tedeschi Trucks Bandでの活動も順調であり,今や押しも押されぬ名声を確保していると言ってよいDerek Trucksのこれが初リーダー作である。

このアルバムがレコーディングされたのは1996年の秋口なので,何とDerek Trucksは若干17歳である。17歳にしてこのスライドの切れ味,化け物と言ってもよいものだが,これが本当の天才ってものだろう。誰が聞いてもティーンエイジャーの演奏とは思えまい。しかもJohn ColtraneやMiles Davis,Wayne Shorterのジャズ曲をやっているのもティーンエイジャーっぽくない。これをブラインドで聞いて,このスライド・ギターを弾いているのが日本で言えば高校生の年齢だってわかる人間がいるだろうか?って感じなのだ。既に圧巻の技量と貫禄って感じなのだ。

そもそも冒頭と最後をインドの楽器,サロードを演奏するってのも渋過ぎる。とにかく10代の前半にはプロとして活動していたというのだから,早熟も早熟であるが,やはりそれは凡人からすれば,「天才」と呼ぶしかないのである。このフレージングのセンスはどうやれば身につくのかと思いたくなるような見事さである。

後のアルバムに比べてみても,それほど遜色はないし,ジャズ曲をやっていると言っても,フレージングは完全にロック,あるいはブルーズ基調である。やろうと思えば,今のDerek Trucksならもっと渋く演奏できるかもしれないが,これぐらいが若気の至りみたいな感じで,録音当時を考えれば丁度いいのだ。"Naima"のファンク感のあるアレンジは面白いしねぇ。後のアルバムに比べれば,完成度はまだまだって気もするが,これは強烈な初リーダー作であり,天才の証である。星★★★★。いや,やっぱり凄いわ。

Recorded on September 30, October 1-4, 1996

Personnel: Derek Trucks(g, sarod), Todo Smalie(b), Bill McKay(org, el-p, key, synth, vo), Yonrico Scott(ds, perc), Gary Gazaway(tp, fl-h)

2021年4月20日 (火)

珍しくもあっという間に読み終えてしまった東野圭吾の新作。

Photo_20210417142401 「白鳥とコウモリ」東野圭吾(幻冬舎)

最近,本を読む機会もスピードも落ちまくっているが,先日,久しぶりにオフィスに行く機会があって,近隣の書店に行ったらこの本が並んでいた。私は東野圭吾の本はそこそこ読んでいると思うが,昨今の出版ペースは濫作ではないのかと思っていたので,今回の本は結構久しぶりの東野圭吾となった。最後に読んだのはガリレオ・シリーズの「沈黙のパレード」はずだから,多分それ以来だろう。

東野圭吾の出版ペースを見ていると,よくもまぁこれだけストーリーラインが浮かぶものだと感心するのだが,正直手が伸びなくなっていたのも事実である。しかし,今回の新作は足掛け4年に渡る雑誌への断続的な連載を経て,それを長編としてまとめたものであるから,時間を掛けてストーリーの構想は練っていたのだろうと想像される。私もそうした東野圭吾の術中にはまり,週末にあっという間に読み終えてしまった。そうさせる筆力は大したものだと思う。日頃,私が家庭内で本を読んでいる姿など見たことがないであろう家人さえ,そんな私の姿を怪訝に思っていたのではないかというぐらいの感じで読み進めていたのには我ながら驚いている。

特に前半から中盤にかけての展開は実に面白く,次への展開を楽しみにさせるものだったと思うが,結末に向けてはやや性急感,悪く言えば取ってつけた感があったように思えるのも事実である。しかし,ストーリーに破綻はないので,実に面白く読めたということは認めなければならないだろう。そういうところも評価して星★★★★☆としよう。私の中ではよく出来た感では「新参者」の方が上だが,これはこれでベストセラー街道一直線というのは納得できる。

読み終えて,この話を映画にするなら,どういうキャスティングがいいかかなぁなんて思ってしまった私である。

2021年4月19日 (月)

いやはや強烈。「ファーゴ」をAmazon Primeで初めて観た。

Fargo 「ファーゴ(”Fargo”)」(’95,米/英,PolyGram)

監督:Joel Coen

出演:Frances McDormand,John Carroll Lynch,William H. Macy,Steve Buscemi, Peter Stormare

先日「ノマドランド」を観に行って,改めてFrances McDormandの演技に感心してしまったので,彼女が「スリー・ビルボード」に先立ってオスカーを獲ったこの映画を観てみた。

この映画,描写は結構えげつない部分はあるが,実に面白い映画であった。98分という枠も適切,ストーリー展開も間延びするところがない。そして,やはりFrances McDormandの演技である。監督のJoel CoenはFrances McDormandの旦那であるが,才能のある者同士が結びつくってのはこういうことだなぁと思わざるをえない。何とも飄々とした演技とはこういうことを言うのだろうと思えた。えげつないストーリーとの対比が明確で,そういうところを演出でも狙っている感じがした。うまいねぇってところだろう。

それにしても,警察官を除く登場人物が一筋縄でいかないキャラクターばかりであり,まともじゃないよなぁと思わせるに十分。中でも偽装誘拐を仕掛けるJerry役のWilliam H. Macyの情けなさは天下一品。見ていて,出てくるのがほぼ悪人ばかりではないかと思えた「悪人」を思い出してしまった。これが実話だったら大変だと思えたが,オープニング・タイトルの「実話に基づく」ってのはフェイクだって言うんだから,洒落がきつい。私はCoen兄弟の映画とはほとんど縁がなく,これまで観たのは「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」ぐらいだが,全然映画のタイプが違うねぇと思ってしまった。だからこそ感心してしまうって話もあるが...。

いずれにしても,この映画は本当によく出来た映画であり,こういう映画はリアルタイムで観るべきだったなぁとつくづく思ってしまった。星★★★★★。まぁ,私ももうすぐ還暦なので,映画も1,200円で観られるようになるから,そしたらバンバン劇場通いしようっと(笑)。

2021年4月18日 (日)

「旅情」に続いて,「リトル・ロマンス」をDVDで観て,ヴェニスを懐かしむ(笑)。

A-little-romance 「リトル・ロマンス("A Little Romance")」(’78,仏/米,Orion/Warner Brothers)

監督:George Roy Hill

出演:Laurence Olivier,Diane Lane,Thelonious Bernard, Arthur Hill, Sally Kellerman

先日「旅情」を観てヴェニスを懐かしむモードになってしまい,観たのがこの映画。「旅情」の記事にも書いたが,この映画は何と言ってもDiane Laneが可愛いくて,それだけでOKみたいなのだが,久しぶりに観ると何ともほのぼのしたいい映画であった。結局のところ,私は単純にこの映画が好きなのだ。 ヴェニスは後半にちょこっと出てくるだけだが,これぐらいでもヴェニスの風景は十分楽しめる。何てたって,ため息橋が重要な位置づけだしねぇ。

Daine Laneはもちろん可愛いのだが,Laurence Olivierが何とも味のある演技で,やはり名優は違うと思わされる。そして,何だかんだ言って,私はGeorge Roy Hillという監督が撮った映画が総じて好きだということを痛感させられる。この映画も,Thelonious Bernard演じるDanielが映画好きという設定ゆえに,Geroge Roy Hillが撮った「明日に向かって撃て!」やら「スティング」やらのシークェンスも出てくるところも楽しい。

とにかくこの映画は観ていて実に心地よいというか,気持ちのよい映画である。登場人物の造形も魅力的で,メリハリがついているの大いに結構である。本作で得している役なのが母の再婚相手,Richardを演じるArthur Hillだろう。母親役のSally Kellermanのダメダメぶりに比べると実に好人物に思えてしまうところがいいのだ。

他愛のないストーリーだと言ってしまえばその通りなのだが,その他愛のなさを愛でたいと思える私である。こういう映画をいつまでも好きでいられるおっさんでありたいと改めて思った。星★★★★☆。

2021年4月17日 (土)

これも久しぶりの「呪われた夜」。

One-of-these-nights"One of These Nights" Eagles(Asylum)

私はEaglesのアルバムは最近出たライブ盤は別にして,全て保有している(と言っても,ライブ盤も入れた当時のフル・ボックス・セットがその殆ど)ぐらいのファンと言ってもよいが,これまでこのブログで記事にしたのは"Long Road Out of Eden"を酷評したものぐらいである。Beatlesのことを書きにくいのと同様の「今更感」があるのは仕方がないところなのだ。しかし,今日は気まぐれで「呪われた夜」である。

このアルバムは次作にして最高傑作"Hotel California"への助走と言ってもよい作品だと思う。確実にそれまでのアルバムとは異なる雰囲気を冒頭のタイトル・トラックが醸し出しているからだが,このアルバムは私にとってはこの1曲が最も印象的であった。それまでのカントリー・ロック的なるものとは完全に一線を画したロック・フレイヴァーの強さが記憶に残っているし,この曲は本当にカッコいいと思った。

しかし,”Hotel California"に比べると,従来路線の感じも残っているのが特徴で,曲ごとの魅力には溢れるものの,ちょっとしたごった煮感も覚えるというのが正直なところなのが,このアルバムだろう。本作はBernie Leadonの最終作となったが,Leadonのバンジョーを活かした"Journey of the Sorcerer"なんて,全然雰囲気が違ってしまっていて,Bernie Leadonのやりたいことと,バンドの方向性が乖離していったことを明らかにしてしまっているとだって言えるのだ。"Lyin’ Eyes"も実にいい曲だと思うが,これだってタイトル・トラックとは異なる路線で,まだまだ一貫した方向性とはなっていなかったのである。

なので,今にして思えば,いいアルバムではあるのだが,言い換えればヴァラエティに富むとも言えるが,一方では何とも言えない中途半端さを感じる部分がある。もちろん,Eaglesにとって,本作がスタジアム級のバンドへの飛躍の原点になったことを思えば,重要なアルバムではあると思うが,"Hotel California"の完成度の高さに比べると,微妙な感じは残る。しかし,繰り返しになるが,曲は粒ぞろいであることは間違いない。Randy Meisnerにとっても,"Take It to the Limit"を生んだということで,意義はあったということで,半星オマケで星★★★★☆。

Personnel: Glenn Frey(vo, g, p. el-p, harmonium), Bernie Leadon(vo, g, banjo, mandolin), Don Felder(vo, g), Randy Meisner(vo, b), Don Henley(vo, ds, perc)

2021年4月16日 (金)

これを聞くのは何年ぶり?Kenny Rankinのスタンダード・アルバム。

_20210412 "A Song for You" Kenny Rankin(Verve)

Kenny Rankinが亡くなったのは2009年のことであったが,2002年リリースの本作が彼の遺作になるのだろうか。いずれにしても,私がこのアルバムをプレイバックするのはいつ以来のことか全く記憶にない。10年以上経過している可能性も否定できないぐらい,実に久しぶりにこのアルバムを聞いた。

このアルバムはTommy LiPumaとAl Schmittという強力コンビによりプロデュースされているが,実に穏やかなスタンダード集となっている。基本となるクァルテットが伴奏をつけ,ゲスト,ストリングス,ホーンが加わるという編成は結構豪華なものであるが,演奏や歌唱は力んだ部分が微塵も感じられない落ち着いた作品であり,これは完全に大人のためのアルバムと言ってよいだろう。

このアルバムで面白いのは"Round Midnight"と思うが,こういう感じの歌いっぷりってのは今までになかったって思える。思わず「へぇ~」となってしまうような,いい意味での「軽さ」がこのアルバムの特性だと言ってしまってもよいだろう。こういう音楽がバーで小音量でかかっていれば,絶対に耳をそばだてるだろうと思えるような洒脱さと言い換えてもよいかもしれない。更にBeatlesの”I’ve Just Seen a Face"やLeon Russellの"A Song for You"がこうなるか!?って思わせるのも実に面白い。崩しの美学って感じか。

本作は比較的取り出しやすい場所に置いてあるにもかかわらず,ちっともプレイバックしていない私も困ったものだが,久しぶりに聞いて,このアルバムの心地よい魅力を感じたのであった。刺激は全然ないと言ってもよいが,もっと知られてよいし,もっと聞かれてもよいと思えるアルバム。星★★★★。

Personnel: Kenny Rankin(vo, g), David Spinozza(g), Leon Perndervis(key), Christian McBride(b), Lewis Nash(ds), with John Beasley(synth, arr), Roy Hargrove(tp), Chris Potter(ts), Russell Malone(g), Alan Broadbent(arr) with strings and horns

2021年4月15日 (木)

Robbie Dupree:懐かしいねぇ。

_20210411-3 "Robbie Dupree" Robbie Dupree(Elektra)

「ふたりだけの夜」である(笑)。完全に気まぐれで取り出したアルバムだが,まだ私のCDラックでは一軍半ぐらいの位置づけには留まっているのだ。このアルバムが出たのが1980年,"Steal Away"と”Hot Rod Hearts"が結構ヒットして,前者はそのリズム・フィギュアがDoobie Brothersの"What a Fool Believes"みたいだと思わせたのももう40年以上前。時の流れを感じさせずにいられない。

その後もRobbie Dupreeはアルバムをリリースしているようだが,言ってしまえば「一発屋」である。このアルバムこそがRobbie Dupreeのイメージであり,彼の音楽と言えばこれになってしまうというのが一般人の捉え方だろう。だが,この典型的なAOR的な響きは,同時代を過ごした人間としては実に懐かしい。今でもこのアルバムの魅力というのは,私たちの年代の人間にとっては色褪せないってことだと思う。

バックを支えるメンツにはそれほどメジャーな人の名前は見当たらない。敢えて言えばこれまた「一発屋」と言ってもよいBill LaBountyが参加しているのが面白い。まぁそれでも,結構よく出来たアルバムだったなぁと思えるぐらいの曲のクォリティを確保しているところは,Robbie Dupreeの名誉のために言っておきたい。当時はこういう感じのアルバムがそれこそ雨後の筍のごとく結構あったなぁと思いつつ,本作が今でもカタログにちゃんと残っているところは,このアルバムのよさの裏返しだろう。星★★★★。

Personnel: Robbie Dupree(vo, hca, perc), Bill Elliott(key), Bill LaBounty(key, vo), Michael Boddicker(synth), Robert Palmer(g), Brian Ray(g), Dennis Herring(g), Bob Bordy(g), Kal David(el-sitar, vo), Rick Chudakoff(b, key), Peter Bunetto(ds, perc), Miguel Rivera(perc), Alan Estes(perc), Jerry Peterson(sax), Leslie Smith(vo), Arno Lucas(vo), Matthew Weiner(vo), Joe Turana(vo)

2021年4月14日 (水)

Iggy Popの参加が意外なDr. Lonnie Smithの新作が楽しい。

_20210411-2"Breathe" Dr. Lonnie Smith(Blue Note)

私がDr. Lonnie SmithのライブをBlue Note東京で観たのももう3年近く前のことである。そのライブはリーダーよりのギターのJonathan Kreisbergへの注目度を更に高めたものと言ってもよかったが,演奏自体は相応に楽しめるものだった。そんなDr. Lonnie Smithの新作がリリースされたのだが,こちらもJonathan Kreisberg入りなので,それも大きな要素となっての購入となった。

前作"All in My Mind"もJazz Standardでのライブであったが,今回も8曲中6曲はJazz Standardでのライブ。そして,冒頭と最後の2曲がスタジオ録音であるが,何とその2曲におけるゲストがIggy Popである。Iggy Popは結構あっさり歌うというか,典型的なIggy Popの歌を期待して聞くとびっくりしてしまう感じの枯れたと言ってもよい歌いっぷりである。しかも,最後にやっているのはDonnovanの"Sunshine Superman"だしねぇ。また,それがDr. Lonnie Smithのトリオの演奏とフィットしているところに更にびっくりである。

そしてライブ音源の方にはトリオでの演奏が2曲に,トランペット,トロンボーン,テナー,バリトンの4管が加わった演奏が4 曲という構成になっているが,この4管入りの演奏が,スモール・バンド的なアンサンブルとソロ回しを聞かせてなかなか楽しい。オルガン・ジャズってこういう感じがいいねぇと思わせるものなのだ。こうした構成にはプロデューサーを務めるDon Wasの趣味が表れているようにも思えるが,ジャズ・ファンの心がわかっているねぇと言いたくなるような演奏である。

4管入りの曲においては,私の目当てと言ってよいJonathan Kreisbergの出番は控えめで,"Pilgrimage"を除けば伴奏に徹している感が強いが,トリオ演奏においてその分スポットライトを当てるってところか。そして,そこで聞かせるJonathan Kreisbergのフレージングにはやっぱり痺れる。まぁ,本作ではJonathan,Jonathanと言わずに,リーダーのオルガン・プレイを楽しむのが筋として,これは聞いていてかなり楽しいアルバムであり,この気持ちよくゆるめのグルーブに満ちた演奏をライブの場で観たら,絶対身体が揺れてしまっていただろうって演奏である。そういうところも評価して,ちょっと甘いと思いつつ,星★★★★☆。そして,前作に続いて1曲に客演するAlicia Olatujaの歌のうまさは相変わらず。彼女がCotton ClubにBilly Childsと来た時も実にうまいと思ったが,その感覚は不変。このゴスペル的感覚がたまらん。

それにしても,ここでのライブ演奏が収録されたNYCのJazz Standardの閉店は惜しいと思わせる。Dr. Lonnie SmithがライナーにJazz Standardへの謝辞を掲げているのもよくわかる。今やお店は閉店したが,配信ライブを行っているJazz Standardなので,いつの日か復活してくれるのではないかと考えたいが,そもそも私が次にNYCを訪れるチャンスはいつ来るのかってところなのが辛いところ。

Personnel: Dr. Lonnie Smith(org), Jonathan Kreisberg(g),Johnathan Blake(ds), Iggy Pop(vo), Alicia Olatuja(vo), Sean Jones(tp), Robin Eubanks(tb), John Ellis(ts), Jason Marshall(bs), Richard Bravo(perc)

2021年4月13日 (火)

「旅情」:この映画を観るのも45年ぶりぐらいか...。

Summertime 「旅情("Summertime")」(’55,英/米,United Artists)

監督:David Lean

出演:Katherine Hepburn,Rossano Brazzi,Isa Miranda, Darren McGavin, Mari Aldon

主題の通りである。私がこの映画を観るのは小学生の高学年か,中学生の時分以来のことになると思うが,ヴェニス(ヴェネツィア)が舞台であることはすっかり失念していた。今回,この映画を久しぶりにDVDで観て感心してしまったのが,ヴェニスの街は,私が訪れた2013年とこの映画のロケが行われた1950年代半ばとほぼ何も変わっていなかったということだろうか。もちろん,細かいところは近代化しているはずだが,街並そのものが不変であったことに何とも言えず感動してしまった私であった。そうした意味でも,ストーリー以前にヴェニスの観光映画として,まずは一級品なのだ。

それはさておき,本作は名匠David Leanが撮ったクラシックなラブ・ストーリーである。今の時代感覚からすれば,古臭いと思われても仕方がないようなお話ではあるが,それでもこういう心の機微ってあるよなぁって思ってしまうのが我々の年代ってところか。もちろん,ラストに向かった展開が唐突だとか,ケチをつけようと思えばいくらでもつけられる。だが,「旅情」という邦題がこれほどしっくりくる映画はないと思えるし,そういう時代だったのだ。

この映画は全編で展開されるヴェニスの美しい風景,Katherine Hepburnのうまさ,そしてRossano Brazziの美男ぶりを堪能すればいいのである。こういう映画を観ていると,古き佳き時代と思わざるをえない。現代のように直截的なエロティシズムには走らず,花火をメタファーにするところも何とも奥ゆかしい。そして,小道具として使われるクチナシ(Gardenia)の意味合いが,その花言葉を知れば知るほど,実に切ないのだ。小学生か中学生の私がこの映画を見てどう思ったかは記憶の彼方ではあるが,この歳になってこういう映画を観ると,当時とは全く別の感慨が生まれるということを感じさせられた映画であった。星★★★★。

この映画を観て,改めてヴェニスという街の魅力を感じてしまったので,次はDiane Laneが超可愛い「リトル・ロマンス」でも見るかなぁ(笑)。

2021年4月12日 (月)

今年のオスカー最有力,「ノマドランド」を観た。

Nomadland 「ノマドランド(”Nomadland”)」(’20,米/独,Fox Searchlight)

監督:Chloé Zhao

出演:Frances McDormand,David Strathairn,Linda May, Swankie,Bob Wells 

コロナ禍の影響を受けて,今年のオスカーのノミネーションはいつもと感じが違うのは仕方がないところだろう。しかし,下馬評で有力視されている映画が本作ということで,今回劇場で観てきた。既にヴェネツィア国際映画祭では最高賞の金獅子賞を獲っているが,確かに有力な作品だと思った。まさにロード・ムーヴィーと言うべき映画なのだが,この映画の凄いところは,出演するノマドが本物のノマドだってことなのだ。フィクションとノンフィクションの間を行くこの映画は,ストーリー的には極めて淡々としているのだが,ノマドの生活感を見事に活写しているってところだろう。素人と言ってよい多くの出演者でありながら,ドラマとして成立させること自体がチャレンジであったはずだが,こうして筋の通った映画に仕立てた監督,脚本,編集の三役をこなしたChloé Zhaoは称賛に値するだろう。

そして映し出される米国の風景が何とも言えない。雪の残る山間部とアリゾナの風景が交錯するところに米国の広大さを感じる訳だが,そこを移動しながら暮らすノマドはまさに自由な遊牧民って感じである。そうした風景をとらえた撮影に関しても評価されるであろうから,これもかなりオスカーは有力。

更に製作も兼ねたFrances McDormandは疑うことなき名女優である。3度目の主演女優賞もありだと思わせるノマドへのなりきりぶりである。

この映画が高く評価されるのは前述の通り,フィクションとノンフィクションを見事に融合させたことに加え,実在のノマドたちの貢献度の高さも見逃せない。演技と言うより彼らの人生観が反映していると言っても過言ではないと思えるのだ。そうした部分に感情移入できるかどうかがこの映画の評価につながるのではないだろうか。映画的なストーリーという点では先日観た「ミナリ」が勝っていると思うが,総体的な映画としてのパワーでは「ノマドランド」が上だと思う。ある意味「1917」同様の映画としてのチャレンジを楽々とクリアしているのが凄い。ただ,繰り返しになるが,これは観る人によって,相当評価が分かれると思えるが,私としてはちょっと甘いかもしれないものの星★★★★★。よくできましたって感じである。そして,”See You Down the Road."ってセリフが何とも印象深い映画。

2021年4月11日 (日)

才人,Vijay Iyerの新作がまたまた素晴らしい。

_20210410-2 "Uneasy" Vijay Iyer(ECM)

ACTレーベル時代から優れた作品をリリースしていたVijay Iyerだが,ECMに移籍してからの作品群はどれも文句のつけようのないものばかりで,私としても極めて高い評価を続けてきた。とにかく,どのような作品を取っても,失望させられることがないというのは実に見事。しかも弦楽クァルテットとの共演だろうが,Wadada Leo Smithとのデュオだろうが,Craig Tabornとのデュオだろうが,クォリティを維持しているのが凄いのだ。

そのVijay Iyerにとって,"Break Stuff"以来の久しぶりのピアノ・トリオによるアルバムであるが,長年のトリオからメンツを変えての第1作となる本作がこれまた素晴らしい出来である。基本的にVijay Iyerのオリジナルが中心であるが,そこに"Night And Day"が何の違和感もなく入り込んでくる。今は亡きGeri Allenの”Drummer’s Song"もミニマルな導入部から,反復フレーズは継続しながらも徐々に熱を帯びる展開も実に魅力的。とにかくどこを切っても実にレベルが高いのだ。

昨今のレコーディングにしては,ミキシング・レベルが抑制気味のような気がするが,音のバランスは取れていると思うので,気にすることはない。これが意図的なものかどうかはわからないが,このピアノ・トリオを聞くにはこれぐらいがいいのではないかと感じる。特にLinda May Han Ohのベースの音は,ベースってのはこういう感じで鳴るのが丁度いいと思わせるものだ。やたらに低音を強調しなくても,魅力的に響くベース音である。

相変わらずというか,このトリオの演奏はちょっとECMっぽくないようにも感じられるが,決してコンベンショナルなピアノ・トリオではなく,あくまでも現代のピアノ・トリオではある。しかし,以前にも書いたように,Manfred Eicherがこういう音楽をプロデュースしているのは,Vijay Iyerへの信頼の裏返しということになるのではないか。そして,その信頼を裏切ることのないVijay Iyer,さすがである。

まぁちょっとTyshawn Soreyは叩き過ぎって気がしないでもないが,実に優れたピアノ・トリオ・アルバムであることは間違いない。今回も実にいい作品であり,Vijay Iyer,本当に信頼に値するミュージシャンである。星★★★★☆。

Recorded in December, 2019

Personnel: Vijay Iyer(p), Linda May Han Oh(b), Tyshawn Sorey(ds)

2021年4月 9日 (金)

もはや懐メロ?Neil Larsenの”Jungle Fever”。

_20210408 "Jungle Fever" Neil Larsen(A&M)

いやはや懐かしいアルバムである。と言っても,私はこのアルバムをリアルタイムで聞いた訳ではなく,後付けで聞いたものだが,それでも何とも言えない「懐メロ」感があるのだ。思うにこのアルバム,結構はやったと思うのだが,リリースされた頃はまだ私はこの辺まではカヴァーできていない頃である。フュージョンで聞いていたのはナベサダとかLee Ritenourの"Gentle Thoughts"あたりどまり。だが,このアルバム,今聞いてもおそらく本国より日本で受けたはずだと思ってしまう。

なぜか。ここで奏でられるメロディ・ラインがマイナー・キーのものが多く,おそらくは日本人の琴線をくすぐるからだ。フュージョンもいろいろあるが,このメロディ・ラインには何とも言えない魅力を感じるリスナーが多かったであろうことは想像に難くない。本作に収められている"Wind Song"は私はGeorge Bensonの「メローなロスの週末」(笑)で聞いたのが最初だったのだが,こっちがオリジナルだったのねぇって知ったのは随分後になってからである。フュージョンと言えば,明るくカラっとした感じってのが「定説」みたいなところに,このマイナー・キーがある意味異質ながらも,日本人には魅力的に響いたのではないかと思えるのだ。しかも"Last Tango in Paris"なんてやっているし,そこでソロを取るのはMichael Breckerだしと,これはおそらく当時のリスナーには訴求力が高かったのではないかと想像させるに十分である。

今となっては40年以上前の音源であるから,当然時代を感じさせるが,今聞いても結構魅力的に響くのは,アルバム全体に溢れるマイナー調ゆえの哀愁感ってところではないかと思ってしまった。久しぶりに聞いたのだが,ついついはまってしまった私である。星★★★★。

Personell: Neil Larsen(p, key, org), Buzz Feiton(g), Willie Weeks(b), Andy Newmark(ds), Ralph McDonald(perc), Michael Brecker(ts), Larry Williams(as, a-fl), Jerry Hey(tp, fl-h)

2021年4月 8日 (木)

Crusadersのこのコンピレーションはよく出来ている。

_20210405-6"Groove Crusade" Crusaders(MCA)

私はCrusadersのファンってほどではないので,保有しているアルバムも限定的である。そんな中,結構気に入っているのがこのコンピレーション盤なのだ。

タイトルにある通り,このコンピレーションのテーマはグルーブなのだ。そして,ここで醸し出されるグルーブが何とも心地よい。実によく出来ていると思わせるのだが,その理由はこのアルバムをコンパイルし,曲順を決めたのがStewart Levineだということだろう。Stewart Levineは長きに渡ってCrusadersのプロデュースを手掛けてきただけあって,彼らの魅力なり,リスナーが彼らに何を求めるかなりをちゃんと理解していたと思わざるをえない。だからこそ,全編に渡ってCrusadersらしいグルーブが楽しめて,この一貫性が重要なのだと感じさせてくれるのだ。

このある意味ゆるいグルーブに身を任せることの心地よさゆえに,私はこのコンピレーションを手放すことができないのだろうと思う。こういうのからCrusadersに入ると,彼らの音楽の魅力を的確に理解することができると思う。実によく出来たコンピレーションとして,これまでCrusadersの音楽に触れたことがない人には丁度いいアルバムだし,Crusadersのファンにだってこの曲順は訴求力大だろう。これを聞いていると2枚組のベスト盤が冗長に聞こえてしまう,と言っては言い過ぎか。

2021年4月 7日 (水)

Gal Costaの新作が心地よいことこの上ない。

Gal-costa-nenhuma-dor"Nenhuma Dor" Gal Costa(Biscoito Fino)

Gal Costa,もう75歳だそうである。デビューから55年以上経過しているのだから,年齢を重ねるのは当然である。私は彼女のアルバムを全部追い掛けている訳ではないのだが,近年出たアルバムはピンと来ないなぁって感じだったのも事実なのだが,このアルバムはストリーミング,で聞いた瞬間,ストリングスを交えたそのサウンドのその心地よさに完全にまいってしまったアルバムである。これは買わざるをえないと即決した次第である。

過去の名曲を改めて取り上げるというのは人生の後期においてありがちな企画ではあるが,それをここでは息子と言ってよいようなミュージシャンたちとの共演で作り上げるというのが素晴らしい。私は自分自身の若さを保つためにはある意味チャラチャラした部分を残存させたいと思っているクチ(爆)だが,Gal Costaの場合は,「若いツバメ」の力も借りたってところだろうか。それが大成功だったと思えるアルバムである。

私はブラジル音楽への造詣が深い訳ではないが,ブラジル音楽に求めたくなるような要素,あるいは私が気持ちよいと感じるブラジル音楽の要素がこのアルバムには詰まっていると感じられるのである。ここに感じられる感覚こそが「サウダージ」だろうとさえ言いたくなってしまうのだ。こういう音楽をやられてしまっては文句のつけようもないし,当分このアルバムのプレイバック頻度は上がることは確実といいたくなる一品。たまりませんな。35分足らずのアルバムだが,これぐらいが丁度いいとも言えるし,何度でもリピートできるのが嬉しい。星★★★★★。北島康介ではないが,「気持ちいい,チョー気持ちいい」アルバム。

Personnel: Gal Costa(vo), Rodrigo Amarante(vo, g, b, mandolin, perc), Criolo(vo), Ze Ibarra(vo, p), Antonio Zumbujo(vo), Seu Jorge(vo, g), Tim Bernardez(vo, g), Rubel(vo, g), Jorge Drexler(vo, g), Zeca Veloso(vo, g), Felipe Pacheco Vnetura(g, b, vln, vla, sample), Marcus Ribeiro(cello), Pedro Coelbo(b), Gabriel Vaz(ds, perc), 

2021年4月 6日 (火)

これはもの凄い!「高橋アキの世界」。

Piano-space 「高橋アキの世界(”Piano Space”)」高橋アキ(EMI)

前々からこのブログにも書いているが,私は現代音楽のピアノ曲がかなり好きである。アブストラクトな音場に身を委ねると心地よいというのが一番の要因だが,それって変態だって言われても抗弁できないとは思う。しかし,好きなものは好きなのだ。

そうは言いながら,Peter Serkinは例外にして,ほぼECM New Seriesが私のそうした音楽の鑑賞の中心になってしまっていて,それ以外のフォローは決して十分とは言えない。そんな中で,たまたまオークション・サイトで見つけたこの3枚組のアルバムは,「おぉっ,これは...」と思わせるに十分なプログラムである。最初の2枚は日本人作曲家,3枚目が海外の作曲家というくくりになっているのだが,まさに「The 現代音楽」である。これは買わずにおれん,聞かずにおれんということで,オークションでゲットしたのだが,見本盤であることはさておき,今から50年近く前の古いレコードなので,ボックスも傷んでいた(死ぬまで売る気はないので,自分で補修した...)が,それでもレコードはほとんどプレイバックされた形跡がない綺麗なもので,全然文句なしである。こういうのは聞ければいいのである。

そして,私が期待した通りの「The 現代音楽」が全編にわたって展開されるという全くもって素晴らしいレコードである。2009年にはタワー・レコードでCD復刻されたようだが,そんなことには全然気づかずであった私が悪い,というかその頃はそこまで現代音楽にはまっていなかったとも言える訳で,今から考えれば買っておけばよかったと思わざるをえない。

しかし,今回,アナログで入手して,これは一枚,一枚ひっくり返しながら聞くという楽しみがあるなぁと思っていた私である。まじでこれははまる。いや,最高である。ここでの高橋アキのピアノの響きを聞いていれば,すぐにその世界に没入できる。クリアにして見事な粒立ちのピアノの音を聞いているだけで至福の時間が過ごせる。これはまさに私のツボにはまった音楽であり,サウンドであった。「明晰」とはこういうことなのかと思いたくなる。星★★★★★。最高である。大げさに言えば人生の宝ともなるな。

Recorded in 1972 and 1973

Personnel: 高橋アキ(p, el-p), 祖堅方正(tp)

2021年4月 5日 (月)

豪華なメンツが揃ったGary Burtonの落ち着いた「ほぼ」スタンダード集。

_20210331"Departure" Gary Burton(Concord)

このアルバムがリリースされたは1997年のはずだが,当時としてもかなり豪華なメンツが揃っていたと思わせる作品である。当時,この中で一番マイナーだったのがFred Herschであろうというのが信じがたいが,それほどのメンツである。

ではあるが,このアルバムは豪華なメンツが丁々発止の演奏を繰り広げる訳ではなく,実に落ち着いた演奏が展開されるほぼスタンダード集である。そもそもGary Burtonのスタンダード集ってのが珍しいと思うが,バックのメンツも楚々とした演奏で,Gary Burtonに応えている。

私がほぼスタンダードと書いたのは例外はChick Coreaの"Japanese Waltz"と,TVシリーズ"Frasier"の主題歌である”Tossed Salads And Scrambled Eggs"ゆえだが,前者は再編したAkoustic Bandのライブでもやっているのだが,初出が何だったのかよくわからない。このアルバムがレコーディングされた96年の段階で取り上げているので,その頃には既に認知されていたということか。後者は米国のTV番組だから,我々にあまり馴染みがないのもある意味当然である。

それ以外のスタンダード(あるいはジャズマン・オリジナル)も,ある程度は知られているものの,超有名な曲は少ないと言ってもよいのだが,その辺りがGary Burtonのセンスってところだと思う。最後のHorace Silverの"Ecaroh"とか言われても,何だっけ?って反応になってしまうし,Ellington/Strayhornの"Depk"は「極東組曲」からというチョイスは渋いのか,ひねっているのかって感じだろう。

だが,演奏はどれもがリラックスした感覚に富んだものであり,穏やかに時間が流れていく。刺激には乏しいし,このメンツならではの感じもあまり出ていないのだが,ソロのレベルは高く,相応のくつろぎ感を生み出していて,気楽に聞くには丁度いいわって感じである。ジョンスコも変態フレーズは抑制し,結構普通に弾いているのも微笑ましい。ちょいと甘めの星★★★★ってところ。

Recorded on September 20-22, 1996

Personnel: Gary Burton(vib), John Scofield(g), Fred Hersch(p), John Patitucci(b), Peter Erskine(ds)

2021年4月 4日 (日)

久しぶりに「アルカトラズからの脱出」をDVDで再鑑賞。

Escape-from-alcatraz 「アルカトラズからの脱出(”Escape from Alcatraz”)」(’79,米,Paramount)

監督:Donald Siegel

出演:Clint Eastwood,Patrick McGoohan,Roberts Blossom,Paul Benjamin,Frank Ronzio,Jack Thibeau,Fred Ward

この映画を観るのも久しぶりである。DVDを保有しているのはわかっていたのだが,実際に観たのがいつ以来かは全く覚えていない。前に観た時も結構地味だなぁと思っていたが,今回観てもやっぱり地味だった。それは決して悪い意味ではない。派手なアクションとかはないが,サスペンスフルな展開が実に面白く,見ごたえのある映画であった。

端的に言えば,脱獄映画なのだが,難攻不落,脱出不能と言われたアルカトラズ刑務所から,実際に脱獄してしまったというのも凄いが,その手口は実に単純で,そんなことあるのか?と思ってしまうが,「事実は小説より奇なり」である。

そして,この映画,Clint Eastwoodの監督業の師匠と言ってよいDon Seigelとコンビを組んだ最終作というのも思い出深い。彼らの最高傑作は「ダーティハリー」だということに異論を差し挟む余地はないだろうが,彼らの最終作として実に味わい深い作品を作ったものだと思う。Clint Eastwoodは相変わらずカッコよく描かれているが,この映画の味わいを増した要因は脇を固める役者陣だったと思える。それぞれのキャラクターが実に面白く,それがこの映画をより良いものにしたと感じる。もはや40年以上前の映画だが,妙なギミックがない分,今の時代でもリメイクできそうな感じである。久しぶりに観たが,面白かったことは間違いない。星★★★★。

Alkatraz-mosaic 今や,舞台となったアルカトラズ島は国立モニュメントみたいになっていて,観光で訪れることができる(今はコロナで閉鎖中だが...)。私も在米中,西海岸の友人を訪れた時に刑務所の監獄跡に入って写真を撮ったのも懐かしい。右が今から30年ぐらい前のアルカトラズ島での写真。顔にはモザイクを掛けているが,我ながらさすがに若いや(笑)。

2021年4月 3日 (土)

Nik Bärtschの新作はピアノ・ソロ:ファンク度は低いが,ミニマル感覚は強まる。

_20210327 "Entendre" Nik Bärtsch(ECM)

Nik Bärtschの音楽というのはファンクとミニマリズムをうまく融合させた音楽で,RoninやMobileでやっている音楽は私の嗜好に見事にはまっていると言ってよい。なので,Nik Bärtschの新譜がリリースされれば,無条件に購入している。今回もECMからリリースされたNik Bärtschの新作はピアノ・ソロである。

Nik BärtschにはECMと契約する前にリリースした"Hishiryo"というピアノ・ソロがあるのだが,ファンク度を重視するバンド名義のアルバムは買っていても,ソロについては購入しておらず,本作がピアノ・ソロに触れる初めての機会となった。ピアノ・ソロだとどういう感じなのかってのがやはり注目点となる。

それで以て今回のアルバムを聞いてみたのだが,やはりピアノ・ソロなので,ファンク度は抑制されるのだが,Nik Bärtschらしいミニマルな感覚は十分出ているし,随所にスリリングな感覚も感じさせるアルバムとなっている。彼のアルバムに収録された曲のタイトルは名は"Modul"に番号を付したものなのだが,本作には最後に"Déjà-Vu, Vienna"というタイトルが付いた曲が入っているのが珍しい。

その"Déjà-Vu, Vienna"はスローに展開されるミニマルな曲で,若干のメロディ・ラインも顔を出すが,”Modul XX"と言っても通じてしまうだろうと突っ込みたくなるのも事実。だが,全編を通じて,これが気持ちいいのである。

このミニマルな感覚,聞く人によっては何がいいのかさっぱりわからんという世界かもしれないが,こういうのがいいと思ってしまう私のような人間にとっては非常に心地よい時間が過ぎていく。決して難解ではないし,素直に身を委ねればいいという感じだろう。今回のアルバムも実に気持ちよく聞けてしまった。このグルーブ,特殊だとは思うのだが,好きだなぁ。星★★★★☆。

Recorded in September 2020

Personnel: Nik Bärtsch(p)

2021年4月 2日 (金)

L.A. Getaway: 豪華なゲストも魅力の何ともカッコいいロック・アルバムである。

_20210324 "L.A. Getaway" Joel Scott Hill / John Barbata / Chris Ethridge(Atco)

このアルバムを聞いたのも実に久しぶりのことであったのだが,これほどカッコいいアルバムだったのか...と感じざるをえない作品である。私はブリティッシュ・ロックよりもアメリカン・ロックにより強いシンパシーを感じてきたと言ってもよいのだが,そんな私のツボにはまったサウンドと言えばいいだろう。とにかく,メインを張るJoel Scott Hillの声に痺れる。

L.A.と名前が付いているからと言って,ウエスト・コースト・サウンドを期待すると,これが全く違う。どちらかと言えば,スワンプ・ロックという感じのアーシーな感覚が強い。私は所謂ウエスト・コースト・サウンドも好みではあるのだが,ここで展開されるロックを聞いていれば,更に痺れるとしか言いようがないのだ。

Joel Scott Hillという人の消息はCanned Heatにも参加したということぐらいしかわかっていなくて,はっきりしないのだが,この一枚を残しただけで好き者の心はつかんでしまうという感じである。こういうのをちゃんと一軍にしていなかったことも反省して星★★★★★としてしまおう。それにしても凄いメンツだよねぇ。

Personnel: Joel Scott Hill (vo, g), Chris Ethridge(b, p, vo), John Barbata(ds), Clarence White(g), Sneaky Pete(g), Mac Rebennack(p), Spooner Oldham(p), Leon Russell(p), Larry Knetchel(otg), Booker T. Jones(org), John Sebastian(hca), Bobbye Hall Porter(perc), Robert Guseus(perc), Clydie King(vo), The Blackberries(vo)

2021年4月 1日 (木)

これも久々。Marcus Miller~Michel Petruccianiらの"Dreyfus Night”の発掘ライブ盤 。

_20210320-3 "Dreyfus Night in Paris" Marcus Miller~Michel Petrucciani(Dreyfus)

これもクロゼットから引っ張り出してきたものである。このアルバムはリリースは2003年だが,レコーディングされたのは1994年に遡る。Michel Petruccianiが99年に亡くなっているので,その過去音源をリリースするという企画と考えていいだろう。90年代はMarcus MillerもDreyfus所属となっていたので,レーベルの人気者を共演させるというのはわかりやすい企画である。そこに加わるBiréli LagrèneもDreyfusからアルバムを出していたから,"Dreyfus Night"ってのはまぁその通りである。

その一方で,こういう企画は,一発セッションということになるので,そこでシナジーを生み出せるかはやってみないとわからないってところである。本作は"Tutu"で幕を開けるが,いきなりKenny Garrettがしくじっていてまず笑ってしまう。この辺にはリハーサルぐらいもうちょっとしろよと言いたくなってしまう。各人のソロはさておき,この演奏はアンサンブルにもかなり破綻が感じられて,出鼻をくじかれる。急造バンドの悲しさってところか。

2曲目は懐かしや"The King Is Gone"である。私はこの曲が収められた”The Sun Don’t Lie"も保有していたはずだが,どこに行ったか全く不明。もしかしたら売ったか?って感じである。"The King Is Gone"はMarcus Millerは最初バスクラを吹き,その後,ベース・ソロに移行するのだが,このベース・ソロはいい感じだし,その後に出てくるMichel Petruccianiのピアノ・ソロも魅力的。そうは言っても,5人のメンバーのソロ回しだけに終始するという言い方も可能で,この曲にはアンサンブルもへったくれもない。

そうした中では最後に収められたPetruccianiのオリジナル,”Looking Up"が一番まともとも言えるが,この曲にしても,このメンツが集まってやっているという意義が見出しにくいのは同様である。こういう感覚が重なるがゆえに,私はこのアルバムを評価することができず,クロゼットにしまい込んだって感じがする。繰り返しになるが,各人のソロはそれなりに聞きどころもあるが,演奏としてはお祭り感以外感じられない安直なつくりの凡作。ついでに言っておくと,Marcus Millerのスラッピングに合わせるかのような,高音が強調され過ぎな感じのミキシングも聞いていて疲れる。星★★★で十分だろう。ってことで,このアルバムはクロゼットへお戻り頂くこととしよう(笑)。

Recorded Live at Palais de Sportd Paris on July 7, 1994

Personnel: Michel Petrucciani(p), Marcus Miller(b, b-cl), kenny Garrett(as, ss), Biréli Lagrène(g), Lenny White(ds)

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