猫ジャケが可愛いアルバムだが,ちょいと微妙な"Bella"。
"Bella" Rava / Pieranunzi / Pietropaoli / Gatto(Philology)
いろいろな音楽を聞いていて,自分の記憶におけるイメージと違いを感じることはよくあることだ。昨日記事にした"Mirror Ball"はイメージ好転の事例だが,このアルバムは正直イマイチ感が強くなったアルバムだと思える。こんなんだったっけ?ってところだ。
その原因は2曲目の"My Funny Valentine(Take 2)"にある。このアルバムでは”My Funny Valentine"が2回演奏されているが,2曲目のTake 2の演奏はフリーなアプローチから始まって,徐々にあの"My Funny Valentine"に転じていくってところなのだが,このフリーのアプローチがあまりいけていない。デフォルメするなら徹底的にデフォルメすればいいと思うが,結局はスタンダードな演奏パターンに入っていくところに必然性を感じないのだ。策に溺れたという印象が実に強い。私がいくらラッパのワンホーン・アルバムが好きでも,これはいかん。このブログの読者はご存じだろうが,私はフリー・ジャズにも全く抵抗がないのだが,このテイクには中途半端な感じしかしない。
だからこそ,それに続くEnrico Pieranuziのオリジナル,"So Near"のリリカルさが魅力的に響くってのはあったとしても,やはり2曲目に聞かれたフリーのアプローチは好かん。続くEnrico Ravaのオリジナル,"Secrets"はリリカルなイントロから,ややダークなイメージで演じられるが,ここで聞かれるPieranunziのピアノは,リスナーが彼に期待するトーンってところだろう。
それに続くのが”My Funny Valentine(Take 1)”だが,ややテンポを上げてスウィンギーに演奏されるこっちのテイクの方がはるかに上出来であり,アルバムに2テイク入れる必要は全くなかったと言いたくなる。Enrico Ravaのラッパもいい感じである。そして,また最後が集団即興のその名も"Free Tune"なのだが,典型的なフリーになっておらず,リリカルな部分を残しながら,徐々に熱量を上げていきつつ,4ビート的な展開も示すこの演奏は悪くないと思う。
結局のところ,私にとっては2曲目の蛇足感ばかりが強く,そこで印象が悪くなったっていうアルバム。トータルで言えば星★★★☆ってところ。
尚,ライナーを読んでいると,このジャケに写る猫はPillaという名前で,早くに死んでしまったらしいのだが,おそらくはプロデューサーのPaolo Piangiarrelliの飼い猫だったってことだろうか。まぁ印象には残るジャケットであることは間違いないが,それがいいのか悪いのかは敢えて触れずにおこう。でもこのフォント使いはないな(苦笑)。
Recorded on May 29 &30, 1990
Personnel: Enrico Rava(tp), Enrico Pieranunzi(p), Enzo Pietropaoli(b), Roberto Gatto(ds)
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