雨降りには武満のピアノ曲よ。
私は現代音楽のピアノ曲が結構好きなのだが,そんな私の嗜好を決定づけたのが今は亡きPeter Serkinであったと言ってもよい。Serkinが武満を弾いたアルバムは私のフェイバリットの一枚と言ってもよく,このブログでも記事にした(記事はこちら)。そこにも書いているのだが,武満徹のピアノ音楽を聞いていると「石庭で雨音を聞いているような感覚」を覚えてしまうのだ。もちろん,「雨の樹素描」という曲が含まれていることもそう感じさせる一因かもしれないが,武満のピアノ曲は気分を落ち着かせたい時に実にフィットする音楽なのだ。それでもって,先日の雨が降る日に聞いた一枚がこれ。
決してわかりやすい音楽だとは思わないし,世の中に存在する武満徹のピアノ曲集のアルバムは限定的なものに留まると言ってよい。そんな中で,Peter Serkinとともに私が保有しているのがこの高橋アキ盤である。このアルバムも極めて世評の高いものであるから,武満のピアノ曲を聞くならば,この2枚を保有していれば,まぁよかろうということになると思う。小川典子はどうした?藤井一興はどうした?と言われるかもしれないが,私にとってはそこまで追いかけていられない。
現代音楽に対する造詣の深い高橋アキが武満を弾くのだから,これはまぁ間違いのない世界と言ってもよいのだが,Peter Serkin盤と同様の感覚を与えてくれて,実によい。武満のピアノ曲を聞いていて,私は絶妙な「間」を感じてしまうのだが,この感覚が精神衛生上効果的だと思っている。最後に「こどものためのピアノ小品」と「ゴールデン・スランバー」を並べて,エピローグ的にアブストラクトな感覚からの抜け出す道筋を示す構成もよく出来ていると思ってしまうのだ。やっぱりこれは好きだなぁ。星★★★★★。
もちろん,万人向けの音楽だとは思わないが,好きになってしまうと,こういう音楽からは離れられないのだ。
Recorded in May, 2000
Personnel: 高橋アキ(p)
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