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2021年3月15日 (月)

児玉桃のECM第3作は2006年録音の持ち込み音源だが,これが実に素晴らしい。

_20210313-2 ”Hosokawa/Mozart” 児玉桃,小澤征爾,水戸室内管弦楽団(ECM New Series)

児玉桃のECMにおける2作は大変素晴らしい作品であった。本作は前作"Point and Line"でも取り上げた細川俊夫とモーツァルトというまたECMらしい異色の組み合わせってところなのだが,ここで冒頭に演じられる細川俊夫の「月夜の蓮(”Lotus under the Moonlight”)」は,モーツァルトの生誕250周年を記念して書かれたものであり,「モーツァルトへのオマージュ」という副題まで付いているから,プログラムとしては一貫性があるものなのだ。児玉桃はその初演者であった。

そして,この音源は2006年に録音されたものであり,プロデュースにはManfred Eicherの名前もないので,明らかに持ち込み音源である。そもそもECMで小澤征爾の名前を見つけるとは全く想像していなかったが,そうした音源をリリースするという判断を下したのはManfred Eicherであるはずなので,その審美眼にかなった演奏であることは言うまでもない。

このアルバムにおけるポイントがその細川の「月夜の蓮」であることには疑う余地がない。もちろん,モーツァルトのP協23番なんてのは誰もが知る名曲であり,児玉桃と小澤征爾の組合せによる演奏が悪いはずはない。しかしである。このアルバムがリリースされた要因はやはり「月夜の蓮」ゆえであろう。この細川とモーツァルトの曲間のギャップこそがこの音楽を楽しむためのコアとなるからである。おそらくManfred Eicherもそれを評価したはずだと思う。「月夜の蓮」がクールかつ静謐な感覚を与えるのに対し,モーツァルトの暖かさが「月夜の蓮」で生まれた緊張感を弛緩させてくれることこそがこのアルバムのキモだろう(少なくとも私にとってはそうだ)。

こういう演奏/プログラムには本当に美学を感じるが,水戸の聴衆も生で聞いていた時には同じような感覚を覚えていたと思う。録音から時間が経過した音源であることを全く感じさせない傑作。星★★★★★。

甚だ余談ではあるが,私の亡くなった父はモーツァルトを偏愛していたが,父が最も好きだったP協はこの23番である。本当にしょっちゅうこの曲を聞いていたのを思い出してしまった。父がこのアルバムを聞いたらどういう感想を言うか聞いてみたい気がした私である。

Recorded Live at 水戸芸術館 in December, 2006 

Personnel: 児玉桃(p),小澤征爾(指揮),水戸室内管弦楽団

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コメント

おはようございます。

数百枚のクラシック・現代音楽を聴いてきて、やっと分かるようになってきたとはいえ、私はまだまだだなあと、中年音楽狂さんのアルバム評を読んで思いましたです。ただ、現代音楽とモーツァルトを織り交ぜ、テーマもモーツァルトで一貫しているので、インパクトは強く、いい演奏を聴きました。日本の交響楽団をECMで聴けるとは思いませんでしたし。

当方のブログアドレスは以下の通りです。

https://jazz.txt-nifty.com/kudojazz/2021/03/post-9ad415.html

910さん,こんにちは。リンクありがとうございます。

>数百枚のクラシック・現代音楽を聴いてきて、やっと分かるようになってきたとはいえ、私はまだまだだなあと、中年音楽狂さんのアルバム評を読んで思いましたです。

いえいえ,お聞きになっている数は910さんの方が圧倒的に多いですから,私なんか大したことないです。

>ただ、現代音楽とモーツァルトを織り交ぜ、テーマもモーツァルトで一貫しているので、インパクトは強く、いい演奏を聴きました。日本の交響楽団をECMで聴けるとは思いませんでしたし。

はい。正直びっくりしましたが,この演奏がEicherの審美眼にかなったというのが嬉しいですよね。実に素晴らしい作品でした。

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