Karrin AllysonがJohn Coltraneの”Ballads”にトリビュートしたアルバム。
"Ballads: Remembering John Coltrane" Karrin Allyson(Concord)
これは実にユニークな企画アルバムである。このアルバムが出たのは2001年のことなので,これももう20年近くが経過しているのだが,この企画性にはびっくりさせられたのも懐かしい。なぜならば,このアルバムの最初の8曲はJohn Coltraneの"Ballads"通りの順番で歌われ,そこにもう3曲,Coltrane関連の曲が加わるというタイトルに偽りなきトリビュート・アルバムなのだ。
そういうアルバムであるから,11曲中8曲にサックス奏者が加わる。それがBob Berg,James Carter,そしてSteve Wilsonなのだからこれまたユニークなメンツと言ってもよいかもしれない。それを支えるリズム・セクションがJames Williams,John Patitucci,そしてLewis Nashという布陣はかなり魅力的である。
歌手にとってはバラッドばかりを歌うというのはかなりチャレンジングなことだと思うのだが,ここでのKarrin Allysonは健闘している。クセのない声は私でもOKって感じだが,ここでやっぱり気になるのはサックス・プレイヤーの吹きっぷりってことになってしまうのは仕方ないところ。Bob Bergは”You Don't Know What Love Is"と"What's New"でソロを取るが,いかにもBob Berg的なプレイで,抑え気味の演奏を聞かせて実にいい感じである。James Carterは実力者ではあるのだが,ここでのプレイぶりには,個性が出過ぎて,私にはやり過ぎのように思えたのは残念。先の二人がテナーを吹くのに対し,Steve Wilsonはソプラノでの参加である。Steve Wilsonは実に控えめに,ヴォーカルのバックにはこれぐらいがいいのかもと思わせる吹きっぷりである。
正直言って,これは企画アルバムであるがゆえの難しさもあり,まぁこれを聞くならColtraneの"Ballads"聞いてりゃいいじゃんと思うのも筋である。だが,こうした企画に敢えて取り組んだことを評価すべきものだと思う。面白い取り組みであることも評価して星★★★☆。もう少し,Bob Bergのテナーの活躍の余地を増やしてくれたら,私個人としてはもっとよかったかもしれない。
Recorded on November 6, 7, 8 & 12, 2000
Personnel: Karrin Allyson(vo, p), James Willissams(p), John Patitucci(b), Lewis Nash(ds), Bob Berg(ts), James Carter(ts), Steve Wilson(ss)
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いやはや偶然と言うことがあるんですね、私もこのKarrin Allyson
『BALLADS』を聴いているんです。ブログにも書こうともう一枚彼女のアルバム(『'ROUND MIDNIGHT』)を仕入れて聴いていますが・・・それなりの評価をしています。そのうち、ブログに登場すると思います(笑い)。
このきっかけは、評判が良いというか、結構高値で取引されている『BEST AUDIOPHILE VOICES』の2003年Vol.1を引っ張り出してきて、最近彼女に興味を持ったからです。
女性ヴォーカルは、止めども無く世界からジャズ界ではニュー・フェースが出てきますが、20年前に戻って、聴いてなかったものを聴くのも楽しいです。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年11月27日 (金) 18時31分
photofloyd(風呂井戸)さん,続けてこんばんは。
>いやはや偶然と言うことがあるんですね、私もこのKarrin Allyson
>『BALLADS』を聴いているんです。ブログにも書こうともう一枚彼女のアルバム(『'ROUND MIDNIGHT』)を仕入れて聴いていますが・・・それなりの評価をしています。そのうち、ブログに登場すると思います(笑い)。
私は在宅勤務の増加ゆえ,手持ちのCDを聞く時間が増えていて,日ごろ聞いていないものを聞く機会が増えたのが,彼女を取り上げた理由なんですが,面白い企画でしたね。でも結局私はBob Bergが好きなのねぇって改めて感じたっての正直なところです。貴ブログへの登場をお待ちしております。
投稿: 中年音楽狂 | 2020年11月27日 (金) 19時01分