Paul Bleyの”Fragments":ECMの本領発揮って感じの音。
正直言ってしまうと,私はPaul Bleyと相性があまりよくない。この人のアルバムを聞いて,これは凄いって思ったことが実はないのだ。そういうこともあって,実はこのブログでもPaul Bleyはあまり取り上げていないのも仕方がないのである。ECMでのアルバムは全部ではないとしてもそこそこ保有しているが,この人のアルバムを聞く頻度は決して高くない。結局苦手なのである。
そんな私が久々に取り出したのが本作なのだが,基本は幽玄な響きを聞かせながら,"Line Down"などではアブストラクトな路線も聞かせるという一方,Carla Bley作の"Seven"等では美的に迫ってくるこのアルバムは,普通の人にとっては結構ハードルが高いと思わせるに十分である。だが,ここでのメンツの組み合わせなんて,まさにECMの妙とでも言うべきものであり,こんな編成はECM以外では絶対にありえないものなのが,ECMのECMたる所以だろう。
本作のライナーには珍しくもSteve Lakeによる長文が寄せられている。私が不勉強なだけかもしれないが,ECMではNew Series以外ではあまりライナーへの寄稿は見たことがないような気がする。しかも書いているのが,Manfred Eicherがプロデュースしないようなフリー系ミュージシャン(?)のアルバムの制作担当をしているSteve Lakeである。アルバムを聞いていて,なんだかECMにしては雰囲気が違うと思うと,Steve Lakeがプロデューサーだったって経験は何度かしたことがあると思う。だが,このアルバムはSteve Lakeはあくまでもライナー担当で,音楽に関してはEicherの美学炸裂って感じというのが率直な思いである。
決して難解ではないのだが,ハードルが高い。しかも普通の一般的なジャズとは全然違う。そういう音楽であり,このアルバムは特定のリスナー(かつ結構限定的だろう...)には訴求しても,大多数の人にとっては「何のこっちゃ」にしかならないと思えるのだ。だが,ECMというレーベルの音楽をかなり聞いていれば,こういうのが苦にならなくなるのである。苦にならないどころか,むしろ快感になってくるのではないかという感覚と言ってもよい。世の中は猛暑に襲われているが,これを聞けば,8割方の曲で冷気が漂ってくる感じがするってところか。気まぐれで聞いたのだが,部屋の温度が数℃は下がった気がした私であった。星★★★★。
Recorded in January 1986
Personnel: Paul Bley(p), John Surman(ss, bs, b-cl), Bill Frisell(g), Paul Motian(ds)
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