"Complete Jazz at Massey Hall" Charlie Parker (Jazz Factory)
多くのジャズ・ファンにとってMassey Hallという場所は,行ったことはないとしても,名前は聞いたことがあるという場所ではないだろうか。Venueという意味では,ヴァンガードとか,カフェ・ボヘミアとか,ファイヴ・スポットというクラブ名称の方が響きとしてはいいのは間違いないが,なぜこのMassey Hall,しかもカナダはトロントという場所にあるこのコンサート・ホールがこれほど多くのジャズ・ファンに知られているかと言えば,この音源が録音されたからにほかなるまい。
ジャズに関する古い音源,特にバップを語る場合,本作とかCharlie ChristianのMinton's Playhouseでの音源が出てくるのが当然と思われていた。ただ,Charlie Christian盤なんてのは,現代人にとっては音がひど過ぎて,その価値を理解できるのかと言えば,実は疑問を感じている。なぜならば,40年近く前にその音源を聞いた私でさえ,音のひどさに辟易としてしまった方が勝ちなのだ。歴史的,音楽的な価値はあるかもしれないが,それを受け入れられるほど,約40年前ですら,現代人(私だけ?)は寛容ではなかった思うのだ。あるいはわかっていなかっただけかもしれんが...。
しかし,温故知新と言うのであれば,Charlie Parker入りのこのライブ盤は避けて通れないよなぁってことで,今日はこれである。"Jazz at Massey Hall"は言わずと知れたバップの巨人が集結したライブ盤であるが,Charles Mingusが訳のわからないオーバーダビングを施したことによって,雰囲気が変わってしまうという不思議な印象を残したことはその筋では知られた話である。
本作はそのオーバーダビングを排し,演奏当日の曲の並びを極力再現するという高い志で作られた「決定盤」と言ってよいと思うが,こういう音源を作る会社が長続きはしていなさそうなのは実に残念である。このアルバム,ライナーもしっかり作られていて,リリースしたスペインの会社のCharlie Parker愛が感じられるのだ。今でも入手は難しくないが,あくまでも売っているのは「在庫処分品」ということだろう。
ライナーによれば,この決定盤とは言っても,音源が残っていない演奏がまだあるそうである。しかし,ここで聞けるものがほぼその日の全貌ってことになるが,The Quintetによる演奏には新発見はない。しかし,Mingusのオーバーダビングを排しただけでなく,Parker,Gillespie抜きのBud Powellトリオ,それにMax Roachのドラム・ソロまで入っているのだから,芸が細かいのである。ラテン系は雑なイメージがある(爆)が,何ともしっかりした仕事ぶりってところだろう。
この演奏が行われたのは1953年なので,Charlie ParkerにとってもBud Powellにとっても全盛期は過ぎていると言ってよい時期だが,それでもここまでくると名人芸の領域である。音は決していいとは言えないが,聞くには問題ないレベルだし,ライブの熱気が伝わるという点では,実に貴重なアルバムだと言える。
私はこのアルバムをLP時代から保有していたが,現在保有しているCDは今日ご紹介の「決定盤」と,国内盤で出たそちらもオーバーダビングなし版である。しかし,この2枚,曲の並びが違うのだ。私としては情熱具合からして,「決定盤」の方の並びが正しいと思うが,真相は?である。しかし,そんなことは無視しても,この演奏は強烈。バップの巨人の最後の輝きと言ってはいかんが,ここでの強烈なアドリブを聞いて燃えない人間がいるのか?と言いたくなってしまう。
Charlie Parkerを聞くなら,SavoyやDialを聞くのが正しいとは思うが,音がねぇって思った時に,本作はまだまともに聞けるレベルだと思っていたのが私の若い頃。今となってはこういう演奏が聞けることに感謝したくなるのが,老境に達しつつある私。もちろんこれもしょっちゅう聞こうとは思わないが,歴史的な観点からすればやっぱり星★★★★★だよなぁ。
甚だ余談ではあるが,初めてトロントに行った時,Massey Hallの前を通って,おぉ,これがあのMassey Hallかと思ったのも懐かしい。
Recorded Live at Massey Hall, Toronto on May 15, 1953
Personnel: Charlie Parker(as), Dizzy Gillespie(tp), Bud Powell(p), Charles Mingus(b), Max Roach(ds)
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