John ScofieldのSteve Swallow集:これがECMから出ることが実に意外。
"Swallow Tales" John Scofield(ECM)
昨日,Steve SwallowとJohn Taylorのデュオを取り上げたからという訳ではないが,このアルバムの記事をアップしていなかったってことで,遅くなったが本作を取り上げよう。
正直言って,ジョンスコとECMってイメージ的にはあまり結びつかない。私の記憶ではJack DeJohnetteとやったTrio Beyondと,Marc JohnsonのBass Desiresぐらいって感じだが,どっちもECMっぽくないと言えばその通りだと思う。しかし,Bass Desiresのカッコよさは永久に不滅だと思うし,結局は「結びつかない」と言ったって,私のイメージだけの問題である。
それでもって,本作のメンツはジョンスコにSteve Swallow,そしてビルスチュなので,Verveの"EnRoute"と同じである。この3人はこの編成に加えて,別の組み合わせでもことあるごとに共演しているから,勝手知ったるトリオってことになるが,今回のキモはSteve Swallow曲集ってことになる。だが,このアルバム,録音されたのがニューヨーク大学のSteinhardt School of Culture, Education and Human Developmentにあるスタジオでの録音,かつエンジニアリングもECMとは縁のないであろうTyler McDiarmidということで,これは明らかに(そしておそらくはSteve Swallowによる)持ち込み音源ってことだろう。そういうことなので,ECMからでなくても出て不思議はないアルバムであり,ECM的な感覚は実は薄い。なので,これはECMレーベルのアルバムとして聞くことにはあまり意味はないように思う。
なので,このアルバムを評価するためには,企画としてのSteve Swallow集をどう捉えるかというところになる。Steve Swallowが優れたメロディ・メイカーであることは,John Taylorとのデュオ作のところでも書いた通りだが,ここでは素材としてSwallowの曲を使いつつ,ジョンスコが気持ちよさそうにソロを展開しているのが聞きものって気がする。ジョンスコも来年は古希を迎えるってことを考えると,ガンガン引き倒すって感じではなくなっているが,むしろ枯れた味わいを感じさせるというところか。もちろん,ジョンスコのことであるから,「枯れた」と言っても,デニチェンとやっているのとかと比べると随分おとなしくなったということだが,フレージングのアウト具合は不変である。
そして,付き合いの長いSteve Swallowの曲を,きっちりプレイしているところにジョンスコのSteve Swallowに対するリスペクトなり,友情なりが感じられる。正直言って,刺激には乏しいと思えなくもないが,優れたミュージシャン同士によるレベルの高い対話であり,かつ丁寧な演奏っぷりが実にいいと思う。そうした取り組み姿勢も評価し,ちょいと甘いと思いつつも星★★★★☆としよう。
それにしても,大学の中にレコーディング・スタジオを持っていることがまさにNYUらしい。
Recorded in March 2019
Personnel: John Scofield(g), Steve Swallow(b), Bill Stewart(ds)
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コメント
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これは、何度も繰り返して聴けちゃいますよね。
ジョンスコもスワロウも、、若頭!のスチュワートも、、
めちゃ、楽しそうです。で、何気にかっこいい!
確かに、ECMぽくないですよね。みんなして、丸くなった?ってことなんでしょうか。。
こちらからも、トラバいたしますね。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2020/07/post-d0fb0d.html
投稿: Suzuck | 2020年8月 1日 (土) 13時00分
Suzuckさん,こんにちは。リンクありがとうございます。
若頭のビルスチュってのが笑えますが,演奏としては「楽しそう」ってのが一番ではないかと思います。
ECMっぽくないってことでは,丸くなったのはミュージシャンではなく,Manfred Eicherかもしれませんね。徹頭徹尾自分の哲学で音楽を制作してきた人ですから,こういう持ち込み音源をよしとするのは昔だったら考えられなかったと思います。それだけSteve Swallowと通じ合っているってことかもしれませんが。
投稿: 中年音楽狂 | 2020年8月 1日 (土) 17時16分
続けて失礼します。
ジョン・スコがECMからリーダー作を出すのが意外なんですけど、クレジットをよく見ると、もう書かれているように持ち込み音源っぽいですね。それがアイヒャーの審美眼と一致したというか。でも、演奏は、多少ECMっぽくミキシングされているにしても、マイペースなのがいいです。この路線でまだ出してくれないかなあ、と思ったのでした。
当方のブログアドレスは以下の通りです。
https://jazz.txt-nifty.com/kudojazz/2020/06/post-372e58.html
投稿: 910 | 2020年8月 1日 (土) 17時50分
910さん,続けてこんにちは。こちらもリンクありがとうございます。
まぁ,これは持ち込み音源で間違いないでしょうが,おっしゃる通りManfred Eicherでも受け入れる出来ってところでしょうか。ちょっと聞いた感じではそんなに刺激的でもないのですが,続けて聞いても苦にならない塩梅のよさがこのアルバムにはあったと思いました。
投稿: 中年音楽狂 | 2020年8月 2日 (日) 11時24分