ようやくデリバリーされたJoshua Redman Quartetのリユニオン・アルバムなのだが...。
"RoundAgain" Redman Mehldau McBride Blade(Nonesuch)
本国でリリースされていながら,ちっともデリバリーされなかった本作がようやく到着である。コロナ禍の影響がないとは言わないが,それにしても時間が掛かり過ぎで,イライラさせられた。最近のAmazonは新譜がまともにデリバリーされたことがないのはどういう了見かと文句も言いたくなる。
それはさておき,このメンツが集結するのは94年に"MoodSwing"をリリースして以来なので,四半世紀以上ぶりということになるが,当時の若手が,今や現代のジャズ界を支える面々となってのリユニオンである。期待するなって方が無理である。そういう意味では,今年一番の話題作,注目作と言ってもいいぐらいの作品だろう。よって,私としてもCDがデリバリーされる前からストリーミングで期待しながら聞いていたことは言うまでもない。
既にストリーミングで聞いていた時から音の具合はわかっていたのだが,やはり媒体で聞いてみないとわからない部分もあるだろうということで,記事にすることは控えてきた私である。ようやくアルバムを我が家のオーディオで,家人がいないことをいいことに「相応の音量」で聞き直した訳だが,期待値が大き過ぎたかなとついつい思ってしまったというのが正直なところである。
聞いた感じで言えば,ストリーミングで聞いていた時よりは,音の粒立ちが違うこともあって印象はやや好転したのだが,聞き進むにつれて,ストリーミングで聞いていた時にも思っていた感覚が甦ってきたのである。はっきり言ってしまえば高揚感がないのだ。このメンツであれば,オーディエンスをワクワクさせるような演奏を展開できると思うが,最大の難点は曲があまり面白くないことではないか。アドリブ・パートはいいとして,どうも没入できない。贔屓の引き倒しと言われそうだが,私がいいと思えたのは結局Brad Mehldauの2曲なのだ。
演奏のレベルの高さはケチのつけようがないところなのだが,特にJoshua Redmanのオリジナルがイマイチだなぁという感覚に囚われ続けてしまう私である。更に言わせてもらえば,リズム・セクションに比べて,Joshua Redmanの吹奏も音色も魅力的に響かないのである。94年にはリーダーであったJoshua Redmanが今や一番つまらないと思わせるというのが象徴的な気もするが,私にとってはもう少しやれたのではなかったのかと思ってしまうのだ。今や,各々がリーダーとして活躍しているから,Joshua Redman Quartetではなく,4人の連名表記となっているのも仕方ないと思わせるというところか。こういう表記を見ると,私なんかはAnderson Bruford Wakeman Howeを思い出してしまうねぇ(笑)。
はっきり言ってしまえば,このメンツならこれぐらいできて当たり前。オーディエンスは我がままだから,更なる高みを求めるのだが,彼らに期待する高みに達していないのが残念なのだ。これではJames Farmの方がずっとよかったと思えてしまったのが残念である。今回に関しては,いくら私がBrad Mehldauの追っかけだからと言って,何でもかんでももろ手を挙げて最高と言うつもりはないってことだ。Brad Mehldauの演奏については特に文句はないとしても星★★★☆が精一杯。はぁ~。
Recorded on September 10-12, 2019
Personnel: Joshua Redman(ts, ss), Brad Mehldau(p), Christian McBride(b), Brian Blade(ds)
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コメント
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こんばんは。
実は昨日、この26年前の作品「Mood Swing」を聴いたのですが、彼らならではのことをやっていても、実に素直に頭の中に入ってきたんですね。当時の感性で聴けたからかどうなのか。やはり自分は現在進行形から遠ざかりつつあるなあ、というのが実感です。でも、音楽は感性で聴くものだし、そこに引け目を感じることはないなあ、と思いましたです。
当方のブログアドレスは以下の通りです。
https://jazz.txt-nifty.com/kudojazz/2020/08/post-3ed638.html
投稿: 910 | 2020年8月 6日 (木) 04時07分
閣下、、
お気持ちは、、わからないではないのですが、、
このメンバーで、最新最先端で先鋭的なアルバムを望むのは難しいとおもいます。
最先端の音楽をやってはいますが、、4人は自分のやりたいことに関しては、結構と違う方向を向いているんだと思うんです。
でも、4人が集まれば、各自ストレスなく思う存分ジャズを演奏することができるんだとおもいます。演奏レベルの高さが一緒なので。
それは、彼らの音楽のモチベーションにもつながるかとおもうのですよね。
ツアーでもできるくらい時間が取れれば、それぞれのアイディアを検討しあって、閣下のお望みの領域になるかもしれないですね。
で、閣下のへそ曲がりも、よく存じておりますので、ファンからの提言としてありがたく拝読させていただきました!
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2020/07/post-876b5c.html
投稿: Suzuck | 2020年8月 6日 (木) 11時37分
910さん,こんばんは。リンクありがとうございます。
同時代性って面白い観点だと思います。私も“MoodSwing”を聞いてみようと思います。まぁこのアルバムももう少し聞き込んだ方がいいのかとも思いますが,私も結構な回数聞いた結果ですし...。
投稿: 中年音楽狂 | 2020年8月 6日 (木) 19時22分
Suzuckさん,こんにちは。
コメントを拝見してなるほどなぁって思いました。確かに4人の音楽の方向性が違う中での演奏って確かにありますね。
まぁそれでも納得いっていない私はやはりへそ曲がりってことですが,私は本作よりPeter Bernsteinのリユニオンの方がよかったと思ってます。
投稿: 中年音楽狂 | 2020年8月 7日 (金) 12時41分