年の瀬はStan Getzでくつろぐ。
"Anniversary!" Stan Getz(EmArcy)
年末も押し迫ってきて,ちょっとした時間に何を聞こうかと考えていて,刺激的なのもちょっと嫌だということで,私が選んだのがこのアルバムである。もともと放送音源として録音されていたものをアルバムとしてリリースしたものだが,同じくEmArcyレーベルから出た"Serenity"と対をなす作品。還暦を迎えた頃のStan Getzの好調な演奏を聞くことができるが,オリジナルのLP音源にボートラ3曲を加えているのがポイントが高い。そして,オリジナル・フォーマットに収録されていた4曲は全て10分越えの演奏となっており,ライブならではものと言えるが,実にいい演奏である。
Stan Getzに何を求めるかと言えば,それは「歌心」である。Stan Getzは決してオリジネイターとか革新者とかいうミュージシャンではないが,「歌心」という観点で,この人ほどサックスを歌わせる人は,私の中ではPaul Desmondぐらいしか思い浮かばない。ここでも,ほぼよく知られたスタンダードに魅力を付け加えるという技術において,Stan Getzは極めてポイントが高いのだ。こういう演奏にスリルとかを求めるのは筋が違う訳で,だからこそ,私がStan Getzの魅力に本当に気づいたのは,若干年を取ってからということなのだ。熱く燃えるとかそういう世界とは違う魅力があるのだということは,多少なりとも大人にならないと響かないと思ってしまう。少なくとも私にとってはそうだった。
そうした中で,後年の活動の中で,Kenny Barronをパートナーに迎えたアルバムは実にバランスがよく,Stan Getzも安心して吹ける環境だったに違いないと感じさせる演奏がここには収められている。師走のせわしない時期にこそこういう音楽はぴったりだ。星★★★★☆。
Recorded Live at the Montmartre Club, Copenhagen on July 6, 1987
Personnel: Stan Getz(ts), Kenny Barron(p), Rufus Reid(b), Victor Lewis(ds)
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