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カテゴリー「ジャズ(2019年の記事)」の記事

2019年12月30日 (月)

年の瀬はStan Getzでくつろぐ。

_20191229-2 "Anniversary!" Stan Getz(EmArcy)

年末も押し迫ってきて,ちょっとした時間に何を聞こうかと考えていて,刺激的なのもちょっと嫌だということで,私が選んだのがこのアルバムである。もともと放送音源として録音されていたものをアルバムとしてリリースしたものだが,同じくEmArcyレーベルから出た"Serenity"と対をなす作品。還暦を迎えた頃のStan Getzの好調な演奏を聞くことができるが,オリジナルのLP音源にボートラ3曲を加えているのがポイントが高い。そして,オリジナル・フォーマットに収録されていた4曲は全て10分越えの演奏となっており,ライブならではものと言えるが,実にいい演奏である。

Stan Getzに何を求めるかと言えば,それは「歌心」である。Stan Getzは決してオリジネイターとか革新者とかいうミュージシャンではないが,「歌心」という観点で,この人ほどサックスを歌わせる人は,私の中ではPaul Desmondぐらいしか思い浮かばない。ここでも,ほぼよく知られたスタンダードに魅力を付け加えるという技術において,Stan Getzは極めてポイントが高いのだ。こういう演奏にスリルとかを求めるのは筋が違う訳で,だからこそ,私がStan Getzの魅力に本当に気づいたのは,若干年を取ってからということなのだ。熱く燃えるとかそういう世界とは違う魅力があるのだということは,多少なりとも大人にならないと響かないと思ってしまう。少なくとも私にとってはそうだった。

そうした中で,後年の活動の中で,Kenny Barronをパートナーに迎えたアルバムは実にバランスがよく,Stan Getzも安心して吹ける環境だったに違いないと感じさせる演奏がここには収められている。師走のせわしない時期にこそこういう音楽はぴったりだ。星★★★★☆。

Recorded Live at the Montmartre Club, Copenhagen on July 6, 1987

Personnel: Stan Getz(ts), Kenny Barron(p), Rufus Reid(b), Victor Lewis(ds)

 

2019年12月29日 (日)

2019年の回顧:最後はジャズ編。

今年も押し迫ってきた。ということで,本日は今年を回顧するシリーズも最終回のジャズ編である。ほかのジャンル同様,CDを購入する枚数は減っているが,それでも一番購入したのはジャズのアルバムだろう。

_20191123_20191229080001 そうした中で今年,実は一番優れていると思ったのはDave Holland / Zakir Hussain / Chris Potterによる"Good Hope"である。コンベンショナルなジャズからは一歩離れているとも言えるし,クリポタに本当に求めているのは"Circuits"で聞かせる音楽だったというのも本音なのだが,この三者が一体感を持って展開される音楽の素晴らしさは,一聴するだけでは掴みにくいところもあったのは事実なのだが,聞けば聞くほど感銘度が増すというアルバムであった。

_20190413-2_20191229080001

次もコンベンショナルな世界からは大きくはずれるが,実によいと思ったのがVijay IyerとCraig Tabornによる"The Transitory Poems"である。この現代音楽的とも,フリー・ジャズ的ともいえる音楽における彼らの協調度と創造力は"Good Hope"にも相通ずる部分がある。このアルバムを取り上げた時には,一期一会的な演奏とも書いているが,特殊なセッティングの中で示すこの集中力は実に素晴らしく,感動的な響きだと思った。

_20191008_20191229080601 一方,コンベンショナルなタイプのジャズにおいては, George Garzone,Peter Erskine,Alan Pasqua,Darek Olesのクァルテットによる”3 Nights in L.A." が実によかった。3日間のライブ演奏からいいとこ取りをした感じのこのアルバム,曲のダブり等があるところは改善の余地もあると言えるかもしれないが,実にレベルの高い演奏を聞かせてもらって,こういうのは生で聞いてみたいと思わされた傑作。日本の市場においてはほとんど目立っていないかもしれないが,もっと幅広いリスナーに知られて然るべき作品と思う。

_20190630_20191229081201ヴォーカルについてはほとんど聞いていない私だが,ライブでの演奏も込みにしてCamila Mezaの"Ambar"に尽きる。この人はヴォーカルのみならず,ギターの腕も実に見事なものであり,前作"Traces"も素晴らしかったが,本作ではストリングスも交えて,更に広い音楽性を聞かせるという点で,実に感心させられたし,ライブにおける演奏も素晴らしかったこともあり,ここに挙げておきたい。Camila Mezaはまだまだ一般的認知度は高いとは言えないが,間違いなく今後のシーンの中で輝きを放ち続ける人だと確信している。

_20191124_20191229082701 発掘盤では,順当ならばJohn Coltraneの"Blue World"となるところであるが,私にとっては今年後半にリリースされたLookoout Farmの”Lookout Farm at Onkel Pö's Carnegie Hall" があまりに強烈過ぎて,こちらを取らざるを得ない。この興奮度,なかなか味わえるものではないと思うが,今でも現役でバリバリのDave Liebmanではあるが,往時の激しさ,キレっぷりは半端ではないところを聞けたのは嬉しかった。Richie Beirachなんて,後に聞かせるリリカルな響きとは真逆のような演奏であり,これが時代を映したものという考え方も可能なのかもしれない。とにかく興奮した!としか言えないアルバムである。

_20191229

そして,最後に忘れてはいけないBrad Mehldauの"Finding Gabriel"である。Brad Mehldauという人は多様な音楽性を打ち出しているのは皆さんご承知の通りである。今年なんてテノール歌手,Ian Bostridgeとのツアーもやってしまうのだから,ジャンルなんてとうに超越している。しかし,原理主義的ジャズ・ファンにはそうした越境に対して反発を示す人がいることも事実である。しかし,本作に聞かれるような演奏を聞いていると,ジャンルにこだわること自体に私は意味を見出せなくなってしまう。聖書をコンセプトの中心に据えたこのアルバムから得られるスリリングな感覚は,私にとって実に刺激的なものであった。

そのほかにもナベサダのライブ・アルバムやEthan IversonがTom Harrellを迎えたライブ・アルバム等,ほかにも記憶に残るものは多々あったし,小田切一巳盤の再発なんていう驚きもあった。私としては,来年も極力ジャンルにこだわらず,いい音楽に接していきたいと思う年の瀬である。

2019年12月28日 (土)

今更ではあるが,"Joe Henderson in Japan"がいいねぇ。

_20191227"Joe Henderson in Japan" Joe Henderson (Milestone)

過日,ストリーミングでこれを聞いて痺れてしまったアルバムである。これはJoe Hendersonが単身来日し,日本のリズム・セクションと共演したアルバムであるが,これが実によい。

私はJoe Hendersonに関してはより後年のアルバムから聞き始めたようなものなので,正直言ってJoe Hendersonに対する理解が足りていない。しかし"Inner Urge"等を聞いていると,明らかに後年のアルバムと違った雰囲気を感じていた。そしてここでの演奏を聞いていると,まさにフレージングの宝庫みたいな演奏ではないか。そしてそのJoe Hendersonを煽るリズム隊も素晴らしい。特に日野元彦のドラムスが反応からして特筆ものである。

このアルバムの特徴として,市川秀男が全編でエレピを弾いているところに時代を感じるが,逆にそれがいいって話もある。まぁ,私がRhodes好きってのもあるが,このアルバムでは演奏の感じからして,アコースティックより,エレピでよかったとさえ思ってしまう。そうした点も含めて私にとっては実に魅力的に響く訳だが,全編スリリングな演奏が展開される中,最後の"Junk Blues"なんて実に燃える。

まぁ,ジャケのジョー・ヘンダーソンというカタカナ表記には苦笑してしまうが,このアルバムはもっと聞かれて然るべき作品だと思う。今まで聞いてこなかった反省も込めて星★★★★★としてしまおう。いや,ほんまに燃えますわ。

Recorded Live at the Junk on August 4, 1971

Personnel: Joe Henderson(ts), 市川秀男(p),稲葉国光(b),日野元彦(ds)

2019年12月24日 (火)

ようやく到着。Chick Coreaの限定ホリデイ・アルバム。

_20191223 "Flying on the Wings of Creativity" Chick Corea & Gayle Moran Corea(自主制作盤)

このアルバムはChick Coreaのメルマガで知って,発注していたものだが,ホリデイ・シーズンのギリギリのタイミングでデリバリーされた。本作は本当に限定生産だったらしく,現在ではフィジカルな媒体での入手はできない状態で,MP3ダウンロードのみで入手可能となっている。Chick Coreaのサイトには"Hear arrangements of Christmas songs never heard on Earth or other parts of the galaxy."なんて記述があって,その大袈裟さには笑ってしまうが,まぁ,事実と言えば事実である。

私はクリスチャンではないので,ホリデイ・シーズンにどうこうということはない訳だが,やはりそういう季節感というのは大事にすべきだと思うし,公共交通機関さえ止まってしまうロンドンのような街もあって,静かに家族と過ごしながら,こういう音楽を聞けばいいのである。そういう時期に届けられたアルバムに収められた音楽は,純粋に音楽として楽しめばいいと思う。

パッケージを開いてみると,この音源に収められている演奏は,最新のものではなく,2006年に録音されたものである。なぜそれをChick Coreaが今になってリリースする気になったのかは全く不明であるが,普通の音楽ではちょっとなぁと思わせるGayle Moran Coreaの声が,こういう音楽にはフィットしているように思えるから私も勝手なものだ。収録されているのはわずか4曲であるが,スイング感溢れる冒頭の"Pennies from Heaven"から,しっとりした"A Child Is Born",そして"Greensleeves"を経て,Mel Tormeが1945年に書いた"The Christmas Song"で締めるという構成はなかなかよく出来ていると感じさせる。そして,Chick Coreaのピアノがどの曲においても実にいい感じなのである。やっぱり何を弾いてもうまいねぇと改めて感心してしまった。

媒体での入手は難しくなってしまったが,一聴に値する音源だと思う。

Recorded on November 26, 2006

Personnel: Chick Corea(p), Gayle Moran Corea(vo), Hans Glawischnig(b), Tom Brechtlein(ds)

2019年12月22日 (日)

来日目前。予習を兼ねてJon Cowherdアルバムを聞く。

_20191219 "Gateway" Jon Cowherd(Agate)

私がNYC出張中にJon Cowherdの演奏を見たのがおよそ2年前のことになるが,その時の演奏が非常によかったので,彼らの第1作"Mercy"を購入し,このブログにも記事をアップしている(記事はこちら)。そんな彼らが来年の年明け早々に来日をすることになっているのだが,それに合わせるようにリリースされたのがこのアルバムである。

このアルバムの存在は,全然知らなかったわけだが,それも当然である。もともとはNewvelle Recordというレーベルから6枚組LPシリーズの1枚としてリリースされたものらしく,おそらくレーベルからの直販以外での入手は困難ということだろう。しかもセットの価格は$400ということで,なかなかハードルは高いのだが,コレクター心をくすぐるレーベルではある。例えば,Season Fourとしてリリースされたセットには,Kenny Wernerの”Church on Mars"というアルバムが含まれているが,Dave Liebman,James Genus,そしてTerri Lynn Carringtonという魅力的なメンツなのだ。この作品は,Season Twoのシリーズに含まれていたものであり,入手のハードルは高かったはずだが,今回,日本限定でCDとしてリリースされたのは実にありがたい。なので,本質的には新譜でもなんでもないのだが,日本ではリリースされたばかりということで,新譜扱いとさせてもらおう。

ここに収められた音楽は,どちらかと言えば穏やかな音場の中に,美的な響きを持たせたかたちのものであり,エレピのみでやっていたNYCでのライブの時の様子とは若干異なるように思える。しかし,アルバムに収められた"Piano Improvisation"3曲を聞けばわかる通り,Jon Cowherdという人のピアノ・タッチの美しさを感じることができる。しかし,Brian Bladeを含む才人を集めたグループなので,演奏のレベルの高さは保証できる。

Jon_cowherd2nd_season ライブの告知ではMercy Projectとなっているが,このアルバム自体はNewvelle RecordのWebではJon Cowherd Quartetとなっているので,実態もしくはコンセプトに違いがあるのかは不明な部分もあるが,それでもJon CowherdとBrian Bladeが一緒になれば,まぁこういう感じになるかってところであろう。ユニークな出自によるユニークなアルバムであるが,これをライブの場でどのように演奏するかは実に興味深い。本作ではJon Cowherdは基本的にアコースティック・ピアノに徹しているが,ライブではエレピも弾くのかどうかによって,サウンドにも変化は生じるはずだ。

尚,もともとのLPシリーズに収められていた音源のジャケットは下のようなもの(これはこれでしゃれている)であるが,音的には今回リリースされた日本版のいかにも「冬」って感じの方がフィットしているようにも思うが,さすがに日本盤のジャケは地味に過ぎないかって気もするなぁ(笑)。

ということで,このアルバムを聞きながら,来年1月の彼らのライブを待ちたいと思う。星★★★★。

Recorded on May 31 and June 1, 2016

Personnel: Jon Cowherd(p), Steve Cardenas(g), Tony Scherr(b), Brian Blade(ds)

2019年12月17日 (火)

2019年の回顧(その1):ライブ編

Marcin-wasilewski

年内はもうライブに行く予定がないので,ちょっと早めだが今年1年を回顧するその第1回目はライブにしよう。

今年行ったライブの本数は20本(22セット)だと思う。昨年が24本だったからちょっと減ってはいるが,ほぼ同じペースだったと言ってよいだろう。9月以降3か月ほど仕事の関係でライブに行けなかったのが,本数減少の原因と言ってもよいが,Scott Hendersonが見られなかったのは返す返すも残念だった。ほとんどがライブ・ハウスでの演奏であったが,それぞれに記憶に残るものである中で,今年何と言っても早い時期に聞いたMarcin Wasilewski Trio(1/25@Cotton Club)の美的な感覚に本当に痺れさせられたと言ってよい。その時の記事に私は「深遠にして繊細,かつダイナミズムも持つ美学」とまで書いているが,あのライブを聞いた段階で,私は今年はこれが最高のライブになると確信していた。それほどの素晴らしいライブであった。彼らが前回来日した時は白寿ホールというヴェニューではあったが,オノセイゲンのしょうもないPAに台無しにされた記憶しかなかったが,その悪しき記憶を完全に払拭した完璧な演奏であった。

Marcin Wasilewski同様に私を感動させてくれたのがCharles Lloydである(9/4@Blue Note東京)。ライブで落涙したのは久しぶりのことであったが,Charles Lloydの衰えることのない創造力,そしてバンド・メンバー選定の審美眼には恐れ入ったと言わざるをえない。Gerald Claytonなんて見事なフィット感であった。

そして,我がアイドル,Brad Mehldauのトリオ(6/1@東京国際フォーラム・ホールC),そしてソロ(6/3@大手町よみうりホール)での2回のライブは,どちらも彼の魅力を十分に感じさせるものであって,本当にいいものを見せてもらったと思えるライブであった。

そのほかにもCamila Meza(9/9@Blue Note東京)やBryan Ferry(3/11@なんばハッチ),Chick Corea Trilogy(4/4@Blue Note東京)等も強く印象に残っているし,そのほかのライブも概ね満足の行くものであった。久しぶりに見た渡辺貞夫(8/7@Blue Note東京)の元気さは先日取り上げたライブ・アルバムの通りである。

但し,一部のライブにおいて明らかなPAの不調が感じられたのは残念だった。特にBlue Note東京はPat Metheny,Donny McCaslin,そしてLee Ritenourの演奏は,PAがよければ,評価も更に上がっていたと思えて仕方がない。今年の後半になってからは改善したのはよかったが,チャージが高いのだから,ちゃんとサウンド・チェックはやるべきだと思えた。

ということで,今年最高のライブの思い出を振り返るべく,ECMでアップしている映像を貼り付けておこう。

2019年12月16日 (月)

実におだやかなナベサダのBlue Note東京ライブ。

_20191215 ”Sadao 2019: Live at Blue Note Tokyo" 渡辺貞夫(JVC)

今年の7月に渡辺貞夫がRussell Ferrante,John Patitucci,そしてSteve Gaddという豪華なバックを従えて出演した時の様子を捉えたライブ・アルバムがリリースされた。なぜか私のところにデリバリーされるのは発売日から10日以上遅れてとなったが,その間はストリーミングで聞いていた私である。

私が行ったのは8/7(その時の記事はこちら)なので,ライブ・レコーディングされた8/8,9の両日の演奏は聞いていないが,受ける印象は大きく変わらない。そして改めてアルバムとして聞いてみると,主題のように実に穏やかな演奏である。決して燃え上がるような感覚ではないのだが,86歳という現在のナベサダの年齢を考えれば,多少なりとも枯れた感じが出てくるのは当然だろうが,それでも演奏にはそんな年齢を一切感じさせないところは実に立派と言わざるをえない。そして,アドリブのフレーズは非常にメロディアス。ライナーはなんと村上春樹が書いているが,そこに村上春樹が書いているように,「同時代の音楽」として十分に楽しめてしまう,「現役の音楽」であって,決して「昔の名前で出ています」でないことは実に素晴らしい。

私がナベサダの新作を買うのはいつ以来かもわからないが,彼のソニー時代の音楽の激しさを廉価盤で知らされて,へぇ~,そうだったのかと改めて思っていたりしたのももう5年以上も前のことになる。とにかく純粋新譜はいつ以来なのか全くわからないぐらいご無沙汰だったのである。もしかするとWarner時代の"Front Seat"辺りが最後だったのかもしれない。それって30年ぐらい前ではないかと時の流れにびっくりするが,それでもここでの渡辺貞夫はまだまだいけていると思う。今後も元気に演奏を続けて欲しいということも含めて星★★★★☆としよう。改めて本当に大したものだと思った私であった。

Recorded Live at Blue Note東京 on August 8 & 9, 2019

Personnel: 渡辺貞夫(as),Russell Ferrante(p),John Patitucci(b),Steve Gadd(ds)

2019年12月12日 (木)

久々のライブはOz Noyのトリオだったが,私の眼はKeith Carlockにくぎ付けであった...。

Oz-noy-trio-at-cotton-club 更新がまたも滞ってしまった。師走だけに公私ともに何かと忙しいのだ(とまずは言い訳)。それにも増して,なんとライブに行ったのは9月のCamila Meza以来ということで本当に久しぶりの参戦となった。その間には仕事でScott Hendersonに行きそこなったというアクシデントもあったとは言え,3か月以上空いたというのは私にとっては実に久しぶりな気がする。

それでもって今回行ったのがOz Noy Trio@Cotton Clubである。正直言ってしまえば,私はOz Noyだけだったらライブには行っていない。今回は何と言ってもそのメンツゆえというところである。だって,ベースはJohn Patitucci,そしてドラムスはKeith Carlockなのだ。このメンツであれば,パワフルな演奏を期待しない方がもぐりだ(きっぱり)。

それはそうなのだが,私の注目を一身に浴びたのはKeith Carlockだと言っても過言ではない。私はかつて,Wayne Krantzと来た時にも書いたが,彼のドラムスは「歌っている」のである。もはや単なるリズムの領域を越えている。Oz Noyはエフェクターを使って,いろいろなパターンの音と演奏を聞かせていたが,基本はハードになる。そのバックで,まさに変幻自在のドラミングを聞かせたのがKeith Carlockであったと言ってよいだろう。変な例えだが,今回のような演奏は演奏における振幅が激しく,ほとんどプログレみたいな展開すら聞かせた訳だが,そうした演奏を聴きながら,Keith CarlockならKing Crimsonでもやっていけるなんて演奏中独り言ちた私である(笑)。

逆に言うと,このバンドではJohn Patitucciの実力を十分に発揮させられたかというところには若干の疑問がある。John Patitucciはエレクトリックでもアコースティックでも素晴らしいテクニックを披露する人だが,今回のようにずっと6弦エレクトリックで通すなら,こっちとしてはギターとの高速ユニゾン・フレーズを期待したくもなるところである。しかし,Oz Noyの曲,あるいはアレンジにおいてはそういう感じにはなっておらず,ソロはちゃんと聞かせるフレーズを展開していたとしても,John Patitucciならではの高揚感をもたらさないところには,もったいないって感じ,更に極端に言えば,宝の持ち腐れって感じが強かった。だからこそ,私の注目はKeith Carlockに向いてしまったのだが,それにしてもである。

パワフルでありながら,微妙さも見事な兼ね備えたKeith Carlockのドラミングには,誰しもが興奮させられたことは間違いないところだろう。それゆえ,私の中では今夜のライブはKeith Carlock Bandかっ!?と言いたくなりそうになるほど,Keith Carlockに惹きつけられた夜であった。

もちろん,演奏に破綻はなかったし,ライブとしてのクォリティは保っていたので文句はないのだが,本当に誰を見に行ったのかわからないというのが正直なところであった。Keith Carlockは,来月にはWayne Krantz,Tim Lefebvre との最凶トリオでの来日を控えており,ますますそれが楽しみになってきた。4月にはBill EvansやRobben Fordとまた来るらしいし,私にとってはKeith Carlockのドラミングを拝めるチャンスはそこそこあるということになりそうだ。

最後にひとつOz Noyに苦言を呈しておくと,CDを買えばサインをするとステージでアナウンスしておきながら,サイン会はやらず,CDは一旦店で預かるってのはどういう了見か?私は別にCDを購入していないからいいようなものの,そういう対応はないだろう。その辺りに聴衆を大事にするかどうかのミュージシャンとしての姿勢が見て取れる。こういうファンを大事にする姿勢を示せない人は絶対好きになれないな。ほかのミュージシャンの名誉のために言っておけば,Oz Noyのようなのが例外であり,大概のミュージシャンはずっとフレンドリーだし,ファンを大切にしている。反省させろよ,Cotton Club!

Live at Cotton Club東京 on December 11, 2019

Personnel: Oz Noy(g), John Patitucci(b), Keith Carlock(ds)

2019年12月 6日 (金)

超懐かしい!Quincy Jonesの「愛のコリーダ」。

_20191204-2"The Dude" Quincy Jones(A&M)

実に懐かしい。冒頭の「愛のコリーダ」という曲名だけで日本では売れてしまったような気もするが,このアルバム,実にいい曲が揃っている。中でも私としては"Just Once","Razzamatazz",そして"Velas"の3曲が飛び抜けて好きである。

James Ingramが歌う"Just Once"はBarry MannとSynthia Weillの名コンビが書いた本当の名曲である。私は大胆にもカラオケでこれを歌うことがあるが,そう簡単にはいかない(当たり前だ!)。曲よし,歌よし,演奏よしの三拍子とはこれのことだ。"Razzamatazz"はPatti Austinがすばらしいノリで歌い,身体が勝手に動いてしまうこと必定。そして"Velas"である。Ivan Linsのこの曲をToots Thielemansのギター,口笛,ハーモニカでまるで歌うかのように演じている。このアルバムにおける唯一のインスト曲であるが,ここには歌はいらんと思わせるに十分。イントロからメイン・メロの流れはいつ聞いても感動してしまう。

と,ちょっと熱くなってしまったが,それ以外の曲も捨て曲はないと言ってもよい。もう1曲と言われれば"One Hundred Ways"を挙げるが,これに限らず,ナイスな曲揃いである。ただ,「愛のコリーダ」というアルバムの邦題がこのアルバムから私を若いころは遠ざけていたが,もっと早く聞いていれば,もっといい大人になっていたかもなぁ(爆)。結局,Quincy Jonesのアルバムにはやられてしまうということで,星★★★★☆。

それにしても,物凄いメンツが揃っている。パーソネルを眺めているだけで目がくらくらしてくる。あぁ,それって老眼のせい?ほっといてくれ!(爆)

Personnel:Quincy Jones(prod, arr, vo), Charles May(vo), James Ingram(vo), Patti Austin(vo), Jean "Toots" Thielemans(g, hca, whistle), Steve Lukather(g), Louis Johnson(b, clap), Abraham Laboriel(b), John Robinson(ds, clap), Paulinho DaCosta(perc), Herbie Hancock(el-p), Stevie Wonder(synth), David Foster(p, el-p), David 'Hawk' Wolinski(clavinet, synth, prog), Ian Underwood(synth, prog), Greg Phillinganes(synth, el-p, clap), Robbie Buchanan(synth), Lenny Castro(clap), Tom Bahler(vo), Jim Gilstrap(vo), Michael Jackson(vo), Syretta Wright(vo), LaLomie Washburn(vo), Yvonne Lewis(vo), Casey Cysick(vo), Jerry Hey(tp), Chuck Findley(tp), Bill Reichenbach(tb), Kim Hutchcroft(sax, fl), Ernie Watts(sax, fl), Larry Williams(sax, fl)

2019年12月 5日 (木)

実に久しぶりに聞いた「熱狂のコロシアム」

_20191204 "Tempest in the Colosseum" V.S.O.P The Quintet(Columbia)

「ライブ・アンダー・ザ・スカイ」がまだ田園コロシアムで開催されている頃は,私は現場で演奏を聞いたことはないのだが,まぁあそこでやれば騒音問題は発生するよなぁって場所ではあった。その田園コロシアム時代にV.S.O.P.は2回出ている訳だが,2回ともライブ音源として残ったのは,今にして思えば実に素晴らしいことであった。本作を聞くのも実に久しぶりだが,やっぱりジャズ的な興奮は味合わせてくれる。

このメンツであるから,悪くなりようがないだろうと思ってしまうが,これは現場にいたら絶対燃えてしまうだろう。60年代Miles Davisクインテットから親分を抜いてFreddie Hubbardに代わるという布陣だが,HerbieとしてはMilesを復活させたいと思っていたと言われているものの,Milesがこういう音楽をやったか?あるいはFreddie Hubbardのように吹けたかと考えるとやっぱりそれは難しい。この当時はこのメンツだからよかったのである。

メンバー全員のオリジナルをやっているというところも結構好感度が上がる要因だとは思うが,冒頭の”The Eye of the Hurricane"からしてキレている。特にFreddie Hubbardの吹きっぷりが熱い。このバンドが熱狂を生む一番の要因はやっぱりFreddie Hubbardだったなぁなんてついつい思ってしまう。

このアルバムが,Herbie HancockのColumbiaボックスに含まれていたのが海外では初出だったっていうのも信じがたい事実だが,こういう演奏が東京で残されていてよかったねぇと改めて思う私である。まぁライブだけに相応の粗っぽさはあるものの,40年以上経過した今日でも楽しめてしまうところは,やはり評価しないといかんということで星★★★★☆。

Recorded Live at 田園コロシアム on July 23, 1977

Personnel: Herbie Hancock(p), Freddie Hubbard(tp, fl-h), Wayne Shorter(ts, ss), Ron Carter(b), Tony Williams(ds)

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