Alexei Lubimovの”Der Bote”:この曲の組合せはECM以外にできないだろう。
"Der Bote" Alexei Lubimov(ECM New Series)
このアルバム,タイトルは"Der Bote"(英語にすると"The Messenger"らしい)であるが,これは最後に収められたシルベストロフの曲のタイトルから取られたものだろう。しかし,バック・インレイには"Elegies for Piano"とあり,そっちの方がずっとわかりやすいのではないかと思えるアルバムとなっている。
このアルバムが特異だと思えるのは,様々な時代の音楽,それこそバロックから現代音楽までの曲を並べておきながら,そこに全くの違和感をもたらさないことである。普通の人間であればC.P.E.バッハとジョン・ケージの音楽が続けて演奏されることなど夢想だにしないが,自然に耳に入ってきてしまうって実は凄いことではないのか。
ここでピアノを弾いているAlexei Lubimovは,様々な現代音楽の初演をしていることからしても,現代音楽には造詣が深いはずだが,ソ連時代に活動の制約を受けて,古典も演奏していたことを踏まえると,ここでの曲の並びは彼にとっては全然不思議はないのかもしれない。しかし,このようにいろいろな時代に作られた曲が演奏されながら,響きは極めて一貫性があって,私は一発でまいってしまった。響きにはもの悲しさをたたえているが,実に美しい音楽。Manfred Eicherの美学ってのをこういうところにも強く感じてしまった。星★★★★★。たまらん。
Recorded in December, 2000
Personnel: Alexei Lubimov(p)
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