”Jatroit“:大西順子はこういう感じでやって欲しいというアルバム。
"Jatroit" 大西順子(Somethin’ Cool)
正式には"Junko Onishi Presents Jatroit Featuring Robert Hurst & Karriem Riggins"と表記すべきだろうが,まぁよかろう。私にとって大西順子という人はおかしな言い方だが「愛憎半ばする」人である。私は本質的に大西順子の音楽については肯定的な見解を持っているのだが,くそのようなラップを伴ったとんでもない愚作"Tea Times"は到底評価できないとか,ライブでのPAの扱いや所作にどうも納得がいかなかったりとか,どうも気に入らないところもある人なのだ。だから,このライブ・アルバムの音源となったブルーノートの公演に足を運ぶこともなかったが,このメンツなら期待できるだろうとは思っていたのは事実である。でも2018年2月のブルーノートでの印象が悪く,彼女のライブにはもう行かないと決めたので,その意志を貫徹したに過ぎない。
だが,本作は24年ぶりのライブ音源らしいし,音だけなら聞くに値するということで,だいぶ遅れての入手となった。そして感じるのは,やはりというか,ここで演じられるCharles Mingus作の”Meditations for Pair of Wire Cutters"や,Jaki Byardに捧げた大西順子のオリジナル”The Threepenny Opera"なんかを聞いていると,大西順子のハード・ドライビングなピアノはリスナーを興奮させるに十分だということだ。私としてはやはりこういう路線の大西順子のピアノは最大限に評価してしまうってところだと思う。
それだけでなく,動と静をうまく組み合わせてたかたちで,全体のアルバムの構成もよく出来ていて,これはやはり期待通りのアルバムに仕上がったと言ってよい。そうは言っても,私にとっては"Baroque"あたりの強烈さへの郷愁があるが,これはこれで十分楽しめる。聞くなら極力ボリュームを上げたくなるような一枚と言っておこう。星★★★★☆。
まぁ,でもねぇ,どうなんだろう...。ステージの右側にピアノを置いて演奏していては,リズムとのアイ・コンタクトが取りにくいだろうと思ってしまうが,多分ライブを観に入ったら,その辺にきっと私は居心地の悪さを感じたのではないかと思う。アルバムを聞いている限りは別に問題なさそうなので余計なお世話か(苦笑)。
Recorded Live at Blue Note東京 in February, 2019
Personnel: 大西順子(p),Robert Hurst(b), Karriem Riggins(ds)
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