Vijay IyerとCraig Tabornという才人2人によるフリー・ジャズと現代音楽のハイブリッドって感じの素晴らしい作品。
"The Transitory Poems" Vijay Iyer / Craig Taborn(ECM)
どちらもECMにおいてリーダー・アルバムを持つVijay IyerとCraig Tabornがピアノ・デュオでのライブを行った際の音源である。私なんかの世代でピアノ・デュオと言えば,Herbie HancockとChick Coreaのそれを思い出してしまうが,あっちとは随分と雰囲気が違う。まぁ,HerbieとChickのデュオにおいても,バルトークの「オスティナート」とかをやっていたが,Vijay IyerとCraig Tabornによる演奏は,より現代音楽的なアプローチを感じさせる。主題ではフリー・ジャズと現代音楽のハイブリッドと書いたが,基本的には調性の枠内なので,フリー感はそんなに強いわけではない。しかし,6曲目の"Clear Monolith"と7曲目の"Luminous Brew"はそれぞれフリー・ジャズ界の巨人,Muhal Richard AbramsとCecil Taylorに捧げられているので,やはりフリー的な感覚と言ってもよいかもしれない。
そして2曲目"Sensorium"とラストのメドレーも,2018年に亡くなったJack Whitten(芸術家)とGeri Allenに捧げられており,このライブ全体を彼らへのオマージュとして捉えているとライナーにも書いている。アルバム収録時にはCecil Taylorはまだ存命だったので,オマージュというのは後から生まれてきた感覚だろうが,このアルバムを聞いていると,少なくともこのライブ以前に亡くなった3名に対してはそうした彼らの思いが打ち出されている感覚が強く,決して聞き易い音楽とは言えないこの演奏が,実に心に響いてくる。そして,彼らにとってみれば,よくよく考えてみると,演奏中にCecil Taylorが降りてきたような気が後になってしたのかもしれない。確かに7曲目の冒頭の低音部には私もTaylor的なところを感じた。
Roscoe Mitchellのバンドで共演歴があった彼らにとっても,このライブは特殊な機会,あるいは一期一会的なものだったのかもしれないが,ここで聞かれる集中力は大したもので,私はこの響きに大いに感動したのであった。星★★★★★。やはり才人たちのやることはレベルが違う。
Recorded Live at Frantz Liszt Academy of Music, Budapest on March 12, 2018
Personnel: Vijay Iyer(p),Craig Taborn(p)
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コメント
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閣下、コメントをありがとうございます。m(_ _)m
どちらも大好きなピアニストで、2人が仲が良かったなんて、、びっくり。
でも、こんな世界を創り出せるって、すごいことだとおもいます!
難しいことは、わからないので音楽に身を任せてしまいました。
ヴィジェイ・アイヤーが、久しぶりに来日しますよねぇ。。
行きたいですね。。
URLをありがとうございます。こちらも貼っておきますね!
http://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2019/04/post-eb15af.html
投稿: Suzuck | 2019年4月25日 (木) 16時51分
Suzuckさん,おはようございます。リンクありがとうございます。
このコンビ,ハイブラウでありながら,知性炸裂ですよねぇ。インプロビゼーションでこのレベルは凄いですね。
Vijayのライブは楽しみに待ちたいと思います。
投稿: 中年音楽狂 | 2019年4月26日 (金) 08時17分
緻密なピアノの音が美しく、素晴らしいデュオですね。メルドー、ヘイズのデュオを思い出しましたが、よりジャズ度も現代音楽度も高いような不思議な印象があります。
https://dailymusiclog.hatenablog.com/entry/2020/01/04/101139?_ga=2.16733374.943473591.1579435627-1924975458.1578462860
投稿: K's Jazz days | 2020年1月21日 (火) 18時36分
K’s Jazz Daysさん,こんばんは。リンクありがとうございます。
確かにかなり現代音楽的な響きですが,おっしゃる通り,ピアノの響きが鮮烈ですよね。とっつきにくさはありますが,こういうの好きですねぇ。
投稿: 中年音楽狂 | 2020年1月21日 (火) 22時08分