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2018年12月 1日 (土)

Antonio Sanchezの怒りとスリリングな音楽への昇華。

"Lines in the Sand" Antonio Sanchez & Migration(CamJazz)

_20181201最近,ショップに行くことも滅多にない私だが,ちょっと空いた時間があったので,久しぶりにDUのJazzTOKYOに行った。中古は収穫なしに終わったが,新譜として本作がリリースされていたので,珍しくもショップで購入である。

Antonio Sanchezはメキシコから米国への移民として,日頃からTwitterなどでDonald Trumpへの批判を行っている。米国の国の成り立ちを考えれば,私のような「トランプ嫌い」のリベラルな人間は,彼が怒りを発露するのも当然だと思える。

それを音楽的なメッセージとして出してきたのが彼のソロ・プロジェクト作"Bad Hombre"だったと思うが,本作は更にそのメッセージを強固に打ち出したものとなっていることは,ライナーからも明らかである。裏ジャケにはライナーの最後の文章である"I'm a proud immigrant. A proud Mexican and a proud American that feels torn by the injustices that are being perpetrated against so many innocent people in search of a better life. This album is dedicated to them and their journey."が掲げられている。これこそがこのアルバムの意味を如実に表している。

そうしたメッセージをどう受け止めるかも重要だが,純粋に音楽だけを聴いていても,これは極めて高いテンションを以て制作されており,まさにAntonio Sanchezらしいスリリングな演奏を聞くことができる。Migrationとしての前作である"Meridian Suite"ではSeamus Blakeがサックスを吹いていたが,今回はサックスがChase Bairdに代わっている。

このChase Bairdという人,Sanchezに加えて,Brad Mehldau,Nir Felderなどとアルバムを吹き込んでいることは間違いないのだが,一向にリリースされる気配がない。おクラ入りの憂き目に遭わないことを期待したいが,本作ではAntonio Sanchezの強烈な音楽に十分貢献していて,このメンバー・チェンジは大きな影響を与えていないと感じられる。また,前作ではゲスト扱いだったヴォーカルのThana Alexaがバンド・メンバーとして名を連ねている。

70分に渡って発露されるAntonio Sanchezの怒りは,このスリリングな音楽へと昇華しているが,この音楽が現在のアメリカの状況の変化にどの程度貢献しうるかについては定かではない。しかし,Antonio Sanchezとは言わずにおれぬ,やらずにおれぬという切迫感からこうした音楽を生み出したと思え,私としてはその意気を評価するとともに,Antonio Sanchezの音楽のクォリティの高さに今回も圧倒されたと言わざるをえない。

今日から師走であるが,年末に現れた強烈な作品として高く評価したい。星★★★★★。

Recorded in August, 2018

Personnel: Antonio Sanchez(ds, vo, key), John Escreet(p, rhodes, synth), Matt Brewer(b), Thana Alexa(vo, effects),Chase Baird(ts, EWI),Nathan Shram(vla), Elad Kabilio(cello)

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コメント

閣下、トラバをありがとうございました。m(_ _)m

これは、、凄かったですね。
ドラマーとしてだけでなく、コンポーザー、プロデューサーとして、その創造力のハイレベルなこと脱帽っす。クリポタ並みに無敵になってきてるな。笑

公私のパートナー、アレクサもとても素晴らしいとおもいました!!しかも、美人すぎるし。。

早く、喜びを題材にしたアルバムがつくれるといいけどな。
トラバしますね!

Suzuckさん,こんばんは。TBありがとうございます。

「クリポタ並みに無敵」ってなるほどって思ってしまいます。本当にこの人のやることはレベルが高いし,ハイブラウですよねぇ。全然やわなところがない,硬派っぷりがたまりません。

パートナーのThana Alexaもよく付き合えるなぁって感心してしまいますが,認め合っているがゆえのコラボなんでしょうね。麗しいです。

 落胆と憤り・怒りと哀しみの感ずるところ、それが現米国の姿、日本人の多くの憧れがこれだったのかと・・・・・?
ロック畑での過去の世界大戦から来るロジャー・ウォーターズの怒り、ラテン系Jazz畑からの民族的サンチェスの怒り・・・そこには寄って至る流れは違っていても、ミュージシャンとして訴えるところは共感できる。
 私は、今年はこのアルバムを持ってして〆としました。そうせざるを得なかったというところです。

風呂井戸さん,こんにちは。TBありがとうございます。

おっしゃる通り,Antonio Sanchezの怒りへの共感は私も強いです。変質しつつある世界を憂うのは当然として,アメリカの現状は保守とリベラルの対立という軸を越えてしまいました。そうした現状に対する音楽界からの回答として,この音楽の力強さには感服しています。

ということで,こちらからもTBさせて頂きます。

本年もお世話になりました。よいお年をお迎え下さい。

かなり遅れての入手になりました。

素地としては長いパット・メセニー・グループの加入がありますが、既に彼の表現方法として、成立してしまっているところがコワいですね。これが昨年11月中に聴けたら、昨年のベスト3に影響があったかもしれません。いいアルバムに出会えました。

TBさせていただきます。

910さん,こんにちは。TBありがとうございます。

音楽で表出される怒りって昔からありましたが,Sanchezの場合,半端ではありません。そしてそれを見事に表現したここでの音楽は素晴らしく刺激的でした。

ということで,追ってこちらからもTBさせて頂きます。

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