話題沸騰。John Coltraneの未発表音源の発掘。
"Both Directions at Once: The Lost Album" John Coltrane(Impulse)
John ColtraneはPrestige,Atlantic,Impulseとレーベルを渡り歩いたが,巨人としての地位はやはりImpulseレーベルにおける諸作によって確立したと言っても過言ではないだろう。そんなImpulseレーベルにおける完全未発表音源が発見されたとすれば,それはまさに大きなニュースである。このアルバムのリリース情報が世の中に出回った時に,私はたまたまNHKの「ニュースウォッチ9」を見ていたのだが,まさかNHKのニュースでこのアルバムに関する情報が報じられるとは予想していなかった。裏を返せば,それだけのビッグ・ニュースということになるが,世間一般の人がそのニュースを聞いてどう思ったのかってのは極めて興味深い。
それはさておきである。6/29に全世界同時リリースというのが,このアルバムに対する世の中の期待値,あるいはその位置づけを裏付けているようにも思える。そしてこのアルバムを最初に聞いたのはテナーの聖地,新橋のBar D2においてであったが,家に帰って冷静に聞いた後の感触を書いてみたい。
ライナーにはJohn Coltraneの息子,Ravi Coltraneが"To my ears, it was a kicking-the-tires kind of session."と述べているという記述がある。それはそうなのかもしれないし,ちゃんとアルバムとしてのリリースを意図したものだったのかは,マスター・テープが失われているので,何とも言えない。だが,このレコーディングにプロデューサーであるBob Thieleがいたかどうかは全くの謎であり,このアルバムの位置づけは実はよくわからない。Raviが言うように,リハーサル的なものだった可能性も,リリースを意識した録音だった可能性の両方が存在する。
そして,音源を聞いてみると,誰がどう聞いてもColtraneのサウンドが聞こえてくるわけだが,"Nature Boy"はさておき,オペレッタ「メリー・ウィドウ」から"Vilia"のような曲をやっているのが,ほかの曲から浮いた感じがしたのは事実である。この辺りをどう評価するかは各々の聞き手に委ねられるということだろうが,この曲,”Live at Birdland"のCDのボートラとしても,本作と同日の録音が収録されているようだ。私個人としてはちょっとイメージが違うってところだろうか。
だが,全編を通して聞けば,Coltraneクァルテットは快調そのものである。本作はJohnny Hartmanとのアルバムの前日だが,以前はこの頃,あるいは"Ballads"吹き込みの頃のColtraneが,マウスピースの不調に悩まされていたというような情報があったが,それはガセネタだったのではないかと思いたくなるような吹きっぷりなのである。実際にColtraneがインタビューでそう語ったという話もあるのだが,演奏を聞いている限り,そんなことはないように思える。マウスピースの件が事実だとしても,この頃には既に復調していたということなのかもしれない。
いずれにしても,世に出ただけで感謝すべきアルバムであり,多少の瑕疵には目をつぶって,歴史的価値を重視して星★★★★★としてしまおう。久しぶりに,このクァルテットのスタジオ音源を集成したボックスが聞きたくなった。
Recorded on March 6, 1963
Personnel: John Coltrane(ts, ss), McCoy Tyner(p), Jimmy Garrison(b), Elvin Jones(ds)
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すごいものが発掘されてしまった。 ジョン・コルトレーンは、ご存知のように常に前へ [続きを読む]

































































閣下、お誕生日おめでとうございます!
って、ことで、、トレーンの命日ですので、トラバさせていただきます。笑
この時期の黄金カルテェットは、大好きなので、、
感情を抑えめに期待してたんですが、、
いやぁ、よかったです。すっごく、よかった。
今日は、地元のジャズ喫茶で「コルトレーンの夜」があるようなのですが、、
旅行疲れで、、ちょっと無理。非常に残念。
では、ますますのご活躍を!!
投稿: Suzuck | 2018年7月17日 (火) 18時10分
Suzuckさん,おはようございます。TB,お祝いのお言葉,ありがとうございます。
やはりこの発掘は感慨深いですよねぇ。演奏のクォリティも高いですし。もちろん,これより凄い演奏はありますが,それでもこの発掘は快挙でした。
これを聞いた後,このクァルテットのスタジオ・ボックスの一部を聞いてましたが,ハードな演奏と小唄みたいな曲を組み合わせるのが彼らのやり方だったのかなと思いました。
ってことで,追ってこちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2018年7月18日 (水) 08時35分
音楽狂さんこんにちはmonakaです。
この未発表2曲はこの暑さに対抗できる清々しさでした。
わたしこれ、次の録音のためのリハと感じました。発表ようであればもう少し詰まるように思います。
投稿: monaka | 2018年7月24日 (火) 08時31分
monakaさん,こんばんは。
いつでもVan Gelderスタジオが使えるって話もありますから,おっしゃる通りリハみたいなもんだったのかもしれませんね。それでもこのクォリティってのは素晴らしいことですが。2枚目もちゃんと聞かねば。
投稿: 中年音楽狂 | 2018年7月25日 (水) 19時53分