Norma Winstone:これぞ選曲の妙。素晴らしい映画音楽集。
"Descansado: Songs for Films" Norma Winstone (ECM)
Norma Winstoneによる映画音楽集である。ここはまず,その選曲のセンスが絶妙。よくぞこれだけばらけた映画の曲を集めながら,一貫性を保ったことが凄い。ここで選ばれている映画は次のような作品群である。
- 「華麗なる賭け」(1968)
- 「ロミオとジュリエット」(1968)
- 「昨日・今日・明日」(1963)
- 「女と男のいる舗道」(1962)
- 「リスボン物語」(1994)
- 「マレーナ」(2000)
- 「イル・ポスティーノ」(1994)
- 「アマルコルド」(1973)
- 「プライドと偏見」(2005)
- 「ヘンリー五世」(1944)
- 「タクシー・ドライバー」(1976)
このように比較的よく知られたものもあれば,そうでもないものも交えつつ,制作された年代も,国も違う映画の音楽を揃えながら,終わってみれば,完全にNorma Winstoneの世界に染め上げているのは,まさに驚異的である。極めて限定的なバックのサウンドの上に静謐に展開されているが,オリジナルの映画音楽の持つ美しさとNorma Winstoneの表現を見事なまでに融合し,表現したアルバムに私は文句をつける余地がない。
映画音楽のインタープリテーションとして,これほど優れたアルバムに出会うことはほとんどありえないと断言してしまおう。とにかく,この選曲,見事というしかない。興奮とは無縁な世界ではあるが,じっくりこの音楽に耳を傾けるべき最高の作品である。映画好きも唸ること必定の傑作。喜んで星★★★★★としよう。それにしても,1曲目に「華麗なる賭け」を置き,「タクシー・ドライバー」をほぼエンディングに持ってきて,欧州映画を間に挟むとは...。凄いセンスとしか言いようがない。
Recorded in March 2017
Personnel: Norma Winstone(vo), Glauco Venier(p), Klaus Gesing(ss, b-cl), Helge Andreas Norbakken(perc), Mario Brunello(cello)
« メンツを見れば,まぁ音も想像がつくPSPのライブ盤なのだが...。 | トップページ | 第1期Mahavishnuの未発表ライブは強烈だった »
「映画」カテゴリの記事
- 「トレイン・ドリームズ」:これほど地味な映画がオスカーにノミネートされることが素晴らしい。(2026.02.08)
- Netlflixで見たシュワちゃん版「トータル・リコール」。(2026.02.02)
- Fritz Langの"M":こんな映画が1931年に製作されていたこと自体が凄い!(2026.01.26)
- Stephen Bishopのベスト盤を久しぶりにプレイバック。(2026.01.22)
「ECM」カテゴリの記事
- 追悼,Ralph Towner。(2026.01.20)
- 2025年の回顧:音楽編(その2::ジャズ)(2025.12.29)
- Dino Saluzziの新作は哀愁度高く心に沁みるアルバムであった。(2025.12.17)
- "The Köln Concert: 50th Anniversary Special Edition"を入手。無駄遣いと言われればその通りだが。(2025.12.14)
- 全然ECMっぽくないのだが,音に痺れるジョンスコ~Dave Hollandデュオ。(2025.11.29)
「新譜」カテゴリの記事
- Chick Coreaの旭川でのソロ・ライブ音源が公開された。(2026.02.06)
- Joel Rossの新作はその名も"Gospel Music"。だが,典型的ゴスペルではない。(2026.02.07)
- Julian Lageの新作はまたもJoe Henryプロデュース。(2026.01.25)
- 今年最初の新譜はEnrico Pieranunzi。あの"Live in Paris"と同じメンツで悪いはずなし。(2026.01.05)
- 2025年の回顧:音楽編(その1:ジャズ以外)(2025.12.28)
「ジャズ(2018年の記事)」カテゴリの記事
- 2018年の回顧:音楽編(その2:ジャズ)(2018.12.30)
- 買ってしまったDave BrubeckのColumbiaボックス。(2018.12.27)
- 年末になって届いたFred Herschの未発表ライブ音源がいいねぇ。(2018.12.25)
- 2018年の回顧:ライブ編(2018.12.24)
- 年末で記事の更新が滞ってしまった。ってことで,今日はECMのAndrew Cyrille作。(2018.12.23)
コメント
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: Norma Winstone:これぞ選曲の妙。素晴らしい映画音楽集。:
» Descansado - Songs For Films/Norma Winstone [ジャズCDの個人ページBlog]
ECMレーベル新譜機器の2日目。ラッキーなことに2日続けて新譜を聴けました。この [続きを読む]
» ノーマ・ウィンストンNorma Winstone 「Songs for Films」 [灰とダイアモンドと月の裏側の世界]
<My Photo Album (瞬光残像)> (2018-No1) 「いよ [続きを読む]
» ノーマの銀幕への幻想 『Descansado - Songs for Films / Norma Winstone』 [My Secret Room]
イギリスの至宝ノーマ・ウィンストン。4年ぶりの新譜は映画音楽集。 前作『Danc [続きを読む]
« メンツを見れば,まぁ音も想像がつくPSPのライブ盤なのだが...。 | トップページ | 第1期Mahavishnuの未発表ライブは強烈だった »

































































私は映画のことはあまり良く知る方ではないのですが、それでも知っているメロディが何曲がありましたし、中年音楽狂さんが書かれているように、選曲の良さと、それがノーマ色に染め上げられて行っているのは、なかなか面白いことになっているなあ、と思います。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2018年3月24日 (土) 15時05分
910さん,こんにちは。TBありがとうございます。
これほどまでにNorma Winstone色に染め上げるってこと自体が凄いことだと思います。本当にびっくりするぐらい秀逸な選曲と歌唱でした。本当に大したものです。
投稿: 中年音楽狂 | 2018年3月24日 (土) 15時49分
中年音楽狂さん、私のほうに出向いて頂いて有り難うございます。
ジャズのこうしたアルバムに遭遇できるのも、今や我々って幸せなのかもしれません。何十年前の昔だったら、こう簡単にはゆかなかったと思います。LP以前から洋楽(昔はこう言ってました)関わってきた人間としては、ちょっと感傷ものです。
この世界は、まさに「芸術」といってよいのではないでしょうか。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2018年3月24日 (土) 20時56分
風呂井戸さん,こんにんちは。TBありがとうございます。
「芸術」。まさにそういうレベルだと言っても過言ではないと思います。音楽における個性の表出という意味で,これほど換骨奪胎を実現してしまうということには感動すらおぼえます。ともあれ素晴らしい作品でした。
投稿: 中年音楽狂 | 2018年3月25日 (日) 11時39分
閣下、トラバをありがとうございました。
映画好きな閣下が五つ星なのですから、問題はないでしょう。笑
どこを切ってもノーマ・ウィンストンって感じですよね。
インストの人たちもとても良くて、、やっぱり、ECMが出すヴォーカルものは一味ちがいますよね。
こちらからも、トラバいたします。
投稿: Suzuck | 2018年3月27日 (火) 20時29分
Suzuckさん,おはようございます。TBありがとうございます。
ECMのヴォーカル作は数が多くない中,コンスタントにリリースするNorma Winstoneですが,これが一番好きな作品と言ってもいいかもしれません。映画音楽を自分の世界に昇華させる技量は本当に素晴らしいと思いました。
投稿: 中年音楽狂 | 2018年3月28日 (水) 08時29分
Norma Winstoneのボーカルは基本、自分の場合、歌として捉えていません。Poetryとして捉えています。小さなChamberというかSalonの暗がりの中で静かにお茶でも飲みながら聴いていたいですね。こういう映画音楽の試みも良いですね。しかし何故かイタリア映画が多いですね。
投稿: カビゴン | 2018年4月 3日 (火) 01時05分
カビゴンさん,更に更に続けてこんばんは。
Poetryですか...。でもちゃんとメロディ・ラインは歌っているから私にとっては歌ですね。米国~欧州~米国と並べる場合,確かにもう少しフランス映画を入れてもよかったかもしれません。しかし,これはこれで私にとっては傑作と思えましたので,選曲は正しいんだろうなぁと思います。
投稿: 中年音楽狂 | 2018年4月 3日 (火) 18時26分