Keith Jarrett: 病からの復活を記録したライブ盤。
"After The Fall" Keith Jarrett / Gary Peacock / Jack DeJohnette (ECM)
Keith Jarrettが慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome:CFS)によりシーンから姿を消していたのが96年~98年の約2年間のことであるが,病からの復活を遂げ,ライブの場への復帰を記録した音源が本作である。
本人がライナーに詳しく書いている通り,闘病中もこのトリオでのリハーサルは行っていたようだが,ライブを行うには体調も考慮し,Keithの自宅のそばがよかろうということで,選ばれたヴェニューがニューアークだったとのことである。更に,テクニックは必要でも,いつものKeithほど激しく演奏する必要のないビ・バップを選択したらしい。ここに収められているのはバップ・チューンばかりとは言えないが,有名なスタンダードやジャズ・オリジナルで占められているのはそういう理由である。その一方で,ここでの演奏はKeithも"Scary Experiment"だったと書いている。完全復活を遂げられるかへの不安があったことは疑いようもない。
しかし,ここでの演奏を聞けば,確かにいつもよりはちょっと軽い響きかなと思わせる部分がない訳ではない。ある意味,テンションが抑制されていて,聞き易いという感じもするが,いつもながらのこのトリオらしい非常に緊密かつ高レベルの演奏が収められていることがわかる。正規の録音を企図したものではなく,DATへの録音をマスタリングしたにしては,十分な音質で録られていることもあって,単なるドキュメントではなく,ちゃんとした音源になっていることがありがたい。そして,Keith本人も,ちゃんと演奏できるということを確信したライブになっているのは間違いない。
このトリオの演奏も,常に最高と言えるものばかりとは思っていないが,これは記録性という観点でも非常に貴重なものであり,復活以来,アクティブな演奏活動を継続するKeith Jarrettの凱旋を証明したものとして,そのリリースを大いに喜びたい。星★★★★☆。
Recorded Live at New Jersey Performing Arts Center on November 14, 1998
Personnel: Keith Jarrett(p), Gary Peacock(b), Jack DeJohnette(ds)
« ブートついでに,今度はChick Corea。 | トップページ | Francesco Cafiso~Mauro Schiavoneライブ@イタリア文化会館参戦記 »
「ECM」カテゴリの記事
- 追悼,Ralph Towner。(2026.01.20)
- 2025年の回顧:音楽編(その2::ジャズ)(2025.12.29)
- Dino Saluzziの新作は哀愁度高く心に沁みるアルバムであった。(2025.12.17)
- "The Köln Concert: 50th Anniversary Special Edition"を入手。無駄遣いと言われればその通りだが。(2025.12.14)
- 全然ECMっぽくないのだが,音に痺れるジョンスコ~Dave Hollandデュオ。(2025.11.29)
「新譜」カテゴリの記事
- Chick Coreaの旭川でのソロ・ライブ音源が公開された。(2026.02.06)
- Joel Rossの新作はその名も"Gospel Music"。だが,典型的ゴスペルではない。(2026.02.07)
- Julian Lageの新作はまたもJoe Henryプロデュース。(2026.01.25)
- 今年最初の新譜はEnrico Pieranunzi。あの"Live in Paris"と同じメンツで悪いはずなし。(2026.01.05)
- 2025年の回顧:音楽編(その1:ジャズ以外)(2025.12.28)
「ジャズ(2018年の記事)」カテゴリの記事
- 2018年の回顧:音楽編(その2:ジャズ)(2018.12.30)
- 買ってしまったDave BrubeckのColumbiaボックス。(2018.12.27)
- 年末になって届いたFred Herschの未発表ライブ音源がいいねぇ。(2018.12.25)
- 2018年の回顧:ライブ編(2018.12.24)
- 年末で記事の更新が滞ってしまった。ってことで,今日はECMのAndrew Cyrille作。(2018.12.23)
コメント
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: Keith Jarrett: 病からの復活を記録したライブ盤。:
» キース・ジャレットKeith Jarrett Gary Peacock Jack Dejohnette 「After The Fall」 [灰とダイアモンドと月の裏側の世界]
<My Photo Album 瞬光残像> (2018-No3) [続きを読む]
» After The Fall/Keith Jarrett/Gary Peacock/Jack DeJohnette [ジャズCDの個人ページBlog]
ECMレーベルの新譜が2種類きたので、また先に聴いていきます。このキース・ジャレ [続きを読む]
« ブートついでに,今度はChick Corea。 | トップページ | Francesco Cafiso~Mauro Schiavoneライブ@イタリア文化会館参戦記 »

































































あの感動をもう一度・・・と、20年ぶりに感慨深かったです。
私にとっては、このように少し優しいキースの方が良いんです(笑い)。TBさせて頂きます。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2018年3月12日 (月) 17時29分
ECMで正式盤として出すこのメンバーでのライヴは、やはりいいものを出すなあ、という印象です。それにしてももう20年近くお蔵入りになっていたとはもったいないですが。まだまだ今後も厳選して出してくれそうなので、楽しみでもあります。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2018年3月13日 (火) 17時37分
風呂井戸さん,TBありがとうございます。
このアルバムでのKeithは尖がったところがないと思いますが,こういう演奏を聞きたいと思うのもわかりますねぇ。
テンションが高いのもそれはそれでいいですが,私もこういうアルバムをたまに出して欲しいなぁと思いました。
投稿: 中年音楽狂 | 2018年3月13日 (火) 21時44分
910さん,こんばんは。TBありがとうございます。
確かに,これは記録としての重要性もあるものの,演奏としても十分楽しめるアルバムで,世に出す価値は間違いなくあると思います。こういう劇的タイミングの演奏はなかなかないと思いますが,まだまだECMにはえげつない音源が隠れていると思わされました。
ということで,追ってこちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2018年3月13日 (火) 21時46分