バブル期でなければ作れなかったであろうHelen Merrill~Gil Evansの"Collaboration"
"Collaboration" Helen Merrill / Gil Evans(Emercy)
これは父の遺品である。私はジャズ・ヴォーカルはあまり聞かないと常々書いているが,例外もある。Helen MerrillもClifford Brownとやったアルバムや,トランぺッターと共演した"Brownie",更にはStan Getzとやった"Just Friends"ぐらいは保有している。私はGil Evansも好きだが,70年代以降の自由度の高いGil Evansに痺れていただけなので,父がこれを買っていなければ,多分自分では買わないって感じではなかったかと思う。
しかし,久しぶりにこれを聞いてみて,何と金の掛かったアルバムかと思わせるに十分である。本作が吹き込まれたのは1987年夏である。まさにバブルが膨張を始め,コントロールが不能な世界に入りつつある頃である。87年と言えば,NTT株が公開された年なのだ。今ならBitcoinの訳のわからない高騰と同じような感じだが,そんな環境でなければ,こんなアルバムの制作は考えられないというところである。
企画としては,本作の30年前に吹き込まれた"Dream of You"を新しいアレンジでリメイクするというのが主眼である。だが,私は"Dream of You"を聞いたことがないので比較はできないが,独立して聞いても,これは結構よく出来たアルバムだと思う。スイングするっていう感じよりも,Gil Evansのアレンジメントに乗って,Helen Merrillがしっとりと歌い上げるが,非常に落ち着いた雰囲気で演奏が進むので,刺激を求めるリスナーには向かない。
その一方で,Gil Evansがこの頃,自分のオーケストラでやっていたのは,ソロイストのスポンテイニアスな演奏を重視し,そのバックで,Lew Soloffがリフを施していくエネルギッシュなものだったので,ここでの演奏はそれとも全く異なるものなのが驚きである。Helen Merrillという歌手のバッキングのアレンジメントに徹するとこうなるってところなのだろうが,30年前のスコアとどれぐらいの違いがあるのかは残念ながらわからない。しかし,この半年後に亡くなってしまうとは思えない,きっちりした仕事ぶりと思える。そして,それに乗るHelen Merrillの歌もいい。
繰り返しになるが,音楽にどういう要素を求めるかによって,このアルバムのリスナーへの訴求度は大きく異なってくると思うが,バブル期とは言え,こういうアルバムを残せたことは,バブル期の恩恵ってところかもしれない。星★★★★。
Recorded on August 18, 25 & 26, 1987
Personnel: Helen Merrill(vo), Gil Evans(cond, arr), Steve Lacy(ss), Danny Bank(fl, b-cl, bs), Phil Bodner(fl, a-fl, b-cl), Jerry Dodgion(fl, ss), Chris Hunter(fl, cl, as), Willy Kane(b-cl, bassoon), Roger Rosenberg(b-cl), Lew Soloff(tp), 大野俊三(tp, fl-h), Jimmy Knepper(tb), Dave Taylor(b-tb), Gil Goldtein(p, key), Joe Beck(g), Buster Williams(b), Mel Lewis(ds), Harry Lookofsky(vln, t-vln), Lamer Alsop(vln, vla), Theodore Israel(vla), Harold Colletta(vla), Jesse Levy(cello)
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