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カテゴリー「ジャズ(2017年の記事)」の記事

2020年1月20日 (月)

Peter Brötzmannの咆哮。たまりまへん。

_20200118-2"Fifty Years After" Brötzmann / Schlippenbach / Bennink(Trost)

昨日,坂田明のアルバムを取り上げたところで,今日はPeter Brötzmannである。私はBrötzmannの咆哮を聞いているだけで,身体がむずむずしてくるところがあるのだが,その興奮をピークに持っていたのが,佐藤允彦,森山威男との"Yatagarasu"で,あれこそ興奮の極致と言った感じで,フリーの快感を徹底的に味合わせてくれたものであった。そして今回は楽器編成は同じであるが,Alexander von SchlippenbachとHan Benninkとのトリオという,これまた強烈なパワー・トリオである。

本作はアルバム"Machine Gun"のレコーディングから50年という節目で録音されたものらしいが,録音時Peter Brötzmannは77歳,Schlippenbachが80歳,そしてHan Benninkが76歳って一体どういうこと?とさえ言いたくなるような老人たちが繰り広げる音楽の激しさに身をよじってしまう。とにかく,こうした音楽を繰り広げる彼らの体力には脱帽としか言いようがないぐらいの激しさなのだ。

このアルバムも坂田明同様に,家人がいるところでのプレイバックは厳しいものであるが,Peter Brötzmannたちの生み出すフリーには精神を解放してくれる効果すら私は感じてしまうのだ。まぁ,このアルバム,決して音がいいとは言えないレベルだが,クリアな音質よりも,この人たちの音楽にはこれぐらいのくぐもった感じが丁度いいのかなぁなんてさえ思ってしまう。私としては"Yatagarasu"のより破壊的なパワーの方が上だと思うが,それでもこの3老人の激しい音楽に敬意を表し,星★★★★☆としよう。リリースされたのは昨年だが,まだ3か月ぐらいしか経っていないので,併せて新譜扱いとさせて頂く。

Recorded Live at the Lila Eule Bremen on May 26, 2018

Personnel: Peter Brötzmann(ts, cl, tarogato), Alexander von Schlippenbach(p), Han Bennink(ds)

2017年12月30日 (土)

2017年の回顧:音楽ージャズ編

今年の回顧も今日で最後である。いつも通り,ジャズ関係のディスクで今年も締めたい。いつも書いているが,Apple Musicで試聴してからディスクを購入することが多くなって,ディスク購入で失敗はあまりしなくなった。だから,新譜として紹介したディスクでも,駄盤というのはあまりなくなった。逆にアップするアルバムに対する評価はそこそこ高くなるというのが普通になってきて,昔ほどぼろくそにけなすっていう機会は減ったなぁ(爆)。

Far_from_overそんな中で,今年のナンバーワン・ディスクと思っていたのがVijay Iyerの"Far from Over"である。ジャズの持つスリルを見事に体現した音楽は興奮度満点。Vijay Iyerは基本的には理知的なピアニストだと思うが,それだけではないところを実証した傑作。これがECMレーベルから出たというところも意外とは言え,Manfred Eicherの目配りには感心せざるをえない素晴らしい作品である。とにかく,アンサンブルやユニゾンから生み出される強烈響きが何とも素晴らしい作品であった。

Passion_of_charlie_parker意外性という点では,私はLarry Kleinプロデュースによる"The Passion of Charlie Parker"を挙げておきたい。これは非常にユニークなかたちでCharlie Parkerの音楽を現代的にアダプテーションしたものであるが,ある意味奇をてらったと思われても仕方ないトリビュート作が実に楽しめてしまったというところを評価したい。こういうやり方もあるのかぁというのが正直なところであるが,ヴォーカリストを据えながら,現代にParkerの音楽を蘇らせるというのは実に面白い試みであった。

Jaco発掘音源としてはBill Evansの音源もあったが,それよりも全盛期のJaco Pastoriusの凄さを感じさせた"Truth, Liberty & Soul"を挙げておきたい。まぁ,"Twins"と同様と言ってしまえばその通りだし,ここにMichael Breckerでもいてくれたらと贅沢を言いだしたらきりがない(私はBob Mintzerが苦手なのだ)が,Jacoの全盛期のもの凄さを改めて感じさせてくれるアルバムであった。こうしてJacoの演奏を改めて聞くと,実働期間の短さが本当にもったいないと思わせる。

 

Yesterdays発掘音源としてもう一枚,Mads Vindingの"Yesterdays"も忘れ難い。Enrico Pieranunzi,そしてAlex Rielという名作"The Kingdom"と同じメンツによるライブであれば悪いはずがないが,この時代のEnrico Pieranunziは高い抒情性を感じさせて,この手のピアノ好きにはたまらない響きを生み出している。私もこうした演奏に強く惹かれる一人であるが,それにしてもライブでも全然音楽の質感が変わらないのがこの人たちらしいと思った。

Invariantそして,今年も私は多くのECMレーベルの作品の持つ強力な磁力に引き寄せられてしまった。トップに掲げたVijay Iyer盤はECMっぽくないところが笑えるが,それ以外でもクリポタ,Ralph Towner,Bill Frisell/Thomas Morgan,Gary Peacock,更にはBenedikt Jahnel等々,優れた作品の目白押しである。そのECMがストリーミングを開始したのは大きなニュースであったが,これによりECMの生み出す音楽に触れるリスナーが増えると思えば,それはそれでいいことだと思う。もちろん,彼らはLPもしくはCDで聞いて欲しいとも述べているわけで,気に入った作品を買っていけばいいと思う。今年のECMを代表して,ここでは一番マイナーと思えるBenedikt Jahnelのジャケをアップしておこう。

このほかにもCharles Lloyd盤やらFred Hersch盤やらChris Thile / Brad Mehldau盤やら挙げたいものは何枚もあるが,彼らのアルバムは常連のように高く評価しているので,今回は言及するにとどめよう。でもFred Herschの来年2月の来日は大いに楽しみにしていることは強く申し添えておきたい。

いずれにしても,今年もいろいろな音源を聞いたが,CDへの依存度は下がる一方であり,今後,CDという媒体は,何らかの付加価値を持たない限り,徐々に減っていくのではないかと思えてならない。ということで,私も年末の片づけに併せて,久々のCD売却を行うべく,ディスクの選定作業中である。まぁ200枚ぐらいは処分ってことになるだろうなぁ...。今年,MilesのColumibiaボックスを中古でゲットしてしまったので,Milesは紙ジャケ含めて大量放出となること必定である。

2017年12月27日 (水)

Marc Copland:今年最後の新譜はこれだろうなぁ。

"Nightfall" Marc Copland(Inner Voice Jazz)

_20171222_2ブログのお知り合いの工藤さんが記事にされていて知った瞬間,速攻で発注したのだが,デリバリーには多少時間が掛かって,私が海外出張から戻ったらデリバリーされていたものである。

私はMarc Coplandのピアノが相当好きで,特にソロやベースとのデュオ,あるいはピアノ・トリオにおいてはこの人の魅力が倍増すると思っている。この人の紡ぐアドリブのメロディ・ラインやタッチの美しさは本当に素晴らしい。そんなCoplandの新譜はピアノ・ソロだけにこれは注目度が一気に高まってしまったのである。

ここ暫くMarc CoplandはPirouetレーベルからのリリースが多かったが,今回のアルバムをリリースしたInner Voice JazzレーベルはMarc Copland本人のレーベルである。流通に若干問題があるようなのはそのせいだと思えばいいだろうが,手に入ったから文句はない。

聞いてみれば,いつも通りのMarc Coplandのソロ・ピアノであるが,最終盤の2曲はJohn Abercrombieのオリジナルが2曲並んでいるのは,ジョンアバへの追悼も込めたと思われる。そして収録曲として並んでいるのが,Marc Coplandのオリジナル,ジョンアバに加え,Scott LaFaro,Ralph Towner,そしてGary Peacockとなれば,大体の響きはそれで想像がつくというものである。そして,想定通りの音が出てくる。最後のジョンアバ作"Greenstreet"に"Nardis"のような感覚を感じさせるように,非常に詩的なアルバムと言ってよいだろう。

こうしたサウンドは私の好物なので,今回のアルバムも気に入っているが,ソロとしてはこれを最初に聞かなくてもいいかなぁって感じである。もちろん悪くはないと思うが,例えばHat Hutレーベルでのソロ作"Time within Time"にどっぷり浸ると中毒性が高まるのではないかと思う。だが,やっぱりこの魅力には抗えない私である。ということで,星★★★★。

Recorded in July 2016

Personnel: Marc Copland

2017年12月26日 (火)

前作は一体何だったんだと言いたくなる大西順子の新作

"Glamorous Life" 大西順子トリオ(Somethin' Cool/Disk Union)

_20171223私は大西順子が前作"Tea Times"をリリースした時に酷評した(記事はこちら)。全く意味のないラップ,Robert Glasperをつまらなくしたような音楽を聞いて,もう大西順子を聞くのはやめるかとさえ思っていた。しかし,今回の新作,ブログのお知り合いの工藤さんが今年のベストの1作に選ばれている。本作と同時発売された"Very Special"はApple Musicで聞いて,まぁ悪くはないと思ったものの,大西順子はバラッドじゃないよなってことで購入には至らなかったが,こちらは全編ピアノ・トリオということもあり購入した私である。

冒頭の"Essential"は,静かなスタートながら,途中からパワフルな演奏に変化し,おぉっと思わせる。昔から言われるように,現在にジャングル・サウンドを生み出せるのは大西順子だけではないかとさえ感じさせ,これはなかなかいいと思わせる。そして,2曲目の"Golden Boys"を聞いて,大西順子は力感溢れなければ面白くないと思っている私のようなリスナーも満足させる出来だと思えた。"Tiger Rag"のような曲を入れてくることも大西順子らしい。そして,そこから"Almost Like Me"になだれ込む展開を聞いて更に興奮度が上がる。一方,大いに期待させた"Fast City"があまり面白くないのはご愛敬。Weather Reportのパワーは大西順子を以てしても超えようがないってことだ。

本作の演奏は,"Wow"でシーンに登場してきた頃の大西順子を想起させるものとなっているので,"Tea Time"で奈落の底に突き落とされる感覚をおぼえたリスナーにとっても,納得いく作品といってよい。まぁ,昔に比べると,打鍵のパワーという観点では若干落ちている(ほんのわずかではあるが...)ように感じるのは,"Wow"からほぼ四半世紀経過していることを考えれば,ミュージシャンとしての成熟度が勝っているのだということと考えればいいだろう。

でもなぁ,あの強烈な"Baroque"が出たのはまだ7年前なので,まだまだ大西順子はピアニストとしても,ミュージシャンとしてもパワーを発揮できるはずだと思う。本作が十分にパワフルな作品であることは認めながらも,更に上を期待をしたいということで,本作は満点とはせず,星★★★★☆としよう。でも,これは楽しめる一作である。

Recorded on September 4 & 5, 2017

Personnel: 大西順子(p),井上陽介(b),高橋信之介(ds)

2017年12月18日 (月)

中年音楽狂のNY夜遊び日記:その4(最終回)

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NYC出張もあっという間に終了ということで,最終日は更に夜遊びに力がはいってしまった私である。まず,最初に訪れたのが,ブルックリンにあるNational Sawdustなるヴェニュー。出演はFred Hersch's Pocket Orchestraである。私はFred Herschのかなりのファンであるが,このPocket Orchestraについては,Sunnysideからアルバムも出ているのだが,今回はレコーディング・メンバーとは異なるメンツでの出演であった。アルバムについては,ちょっと聞いた感じではピンと来ていなかったのだが,この編成での来日はまずありえないということで,FBで出演情報を仕入れて,日本で予約を済ませていたものである。

今回のヴェニューの最寄り駅はユニオン・スクェアから地下鉄L線に乗って,イースト・リヴァーを渡ってすぐの,Bedford Avenueである。降りた瞬間から,マンハッタンとは異なる街の風情を感じさせるのがブルックリンだと思ったが,昨今のブルックリンは以前に比べると,明らかに小洒落た感じがする街に変貌を遂げている。今回のNational Sawdustも入った瞬間から,おぉっと思わせる内装のホールであった。だが,キャパとしては80〜100人ぐらいというこじんまりとした場所で,Fred Herschのピアノを聞けることを至福と言わず何と言うという感じであった。しかも,ピアノはベーゼンドルファー。く〜っ。

そして,今回の演奏を聞いて,私が思い起こしていたのがAzimuthである。今回のレパートリーにおいても,Norma Winstonが作詞で協力していたこともあるが,パーカッションが加わっているとは言え,編成もAzimuthに近いこともあり,これはFred Hersch版のAzimuthではないかと思えるような演奏であった。私にとって嬉しかったのは,私が抱いていたPocket Orchestraのアルバムのイメージと異なって,非常にリリカルな演奏が展開されたことである。Fred Herschのピアノは美しいが,そこに切り込むIngrid Jensenのトランペットが素晴らしいアクセントになるという感じだったのだ。そして,ヴォーカルのAubrey Johnsonはスキャットを中心とした歌唱で,インプロヴィゼーションも交え,ジャズ的なフレイヴァーを加えていた。それがまた,Azimuth的に感じさせるのである。

とにかく,Herschのピアノの美しさにまいっていた私だが,面白かったと言うか興味深かったのが,聴衆に黒人が一人もいなかったことである。Herschの音楽を聞く層は,やはり白人中心ということなのかもしれない。だが,そんなことは関係なく大いに音楽を堪能した私であった。終演後,Herschの本を購入し,サインもしてもらったが,2月のCotton Clubでのライブを楽しみにしていると伝えて,会場を後にした。

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そこから2軒目として向かったのが,またもSmallsである。私が到着した時に演奏していたのはDuane Eubanksをリーダーとするクインテット。Robin Eubanksがゲストで加わったこのバンドは,オーセンティックなジャズの良さを感じさせるバンドで,聴衆の受けもよかった。ピアノのJames Hurtは肘打ちも交えて,大受けしていたが,技はしっかり持っている上でのライブならではのパフォーマンスという気がした。Robin Eubanksを生で聞くのは初めてだったが,さすがのテクニシャンぶりを感じさせてくれた。

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そして,NYC最後のパフォーマンスとして聞いたのが,Smallsにステイ・オーバーしての懐かしやOTBのRalph Bowenのクァルテットである。平日なら考えられないが、Smallsが入れ替え制を取っており,$20の余計な出費が必要だったのは予想外であったが,まぁいいや。

Ralph Bowenは大学教授みたいな風貌でテナーをメカニカルに吹いていたが,バンドのメンバーにも恵まれて,なかなか楽しめる演奏だったと思う。私が特に感心したのがベースのKenny Davisである。テクニック十分でありながら,歌心溢れるソロを聞かせるKenny Davisには思わず終演後声を掛けてしまった。それぐらい彼のベースはよかった。また,ピアノのJim Ridlは堅実ながら,いいソロを聞かせたし,ドラムスのCliff Almondはなんでも叩けるねぇって感じで,比較的コンベンショナルなセットでも十分にうまいところを聞かせてくれた。

ということで,ホテルに帰り着いたのは午前0時を過ぎていたが,十分にNYC最後の夜を堪能させてもらった。出張とは言え,これほど時間を有効に活用したのも珍しいということにしておこう。だからNYC出張はやめられないのである。

Fred Hersch‘s Pocket Orchestra Live at National Sawdust on December 16, 2017@7PM

Personnel: Fred Hersch(p),  Ingrid Jensen(tp), Aubrey Johnson(vo), Rogerio Bocatto(perc)

Duane Eubanks Quintet Live at Smalls on December 16, 2017@9PM

Personnel: Duane Eubanks(tp), Robin Eubanks(tb), James Hurst(p), Gerald Cannon(b), Chris Beck(ds)

Ralph Bowen Quartet: Live at Smalls on December 16, 2017@10:30PM

Personnel: Ralph Bowen(ts), Jim Ridl(p), Kenny Davis(b), Cliff Almond(ds)

2017年12月17日 (日)

中年音楽狂のNY夜遊び日記:その3

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NYCでの仕事をほぼ終えて,3日目の夜に訪れたのが,アッパー・ウエストサイドのSmokeである。私はこのクラブには縁がなく,今回,初の訪問となった。NYCでの仕事はミッドタウンか,ダウンタウン,それもWall Street寄りの南のエリアが多いので,そもそもアッパーサイドに行くことが少ないのだから仕方がない。しかし,今回は仕事を終えて,地下鉄で103丁目の駅に向かったのであった。

そしてこのSmokeだが,チャージが妙に高い。1セットで$38,ミニマム・チャージが$20というのは,55 Barなどと比べると明らかに高い。まぁ,メンツがメンツだから仕方ないって気もするが,客層もダウンタウンとは明らかに異なるのが面白かった。

それで今回の出演はGary Bartzのクァルテットで“Coltrane Rules”と名乗るのだから,モーダルに決めてくれると思うのが筋である。しかし,演奏が始まって,最初の“Secret Love”はBartzがカーブド・ソプラノを使って,トレーン・ライクに吹いたのはよかったのが,その後はどう考えてもコンベンショナルな演奏が続き,これで“Coltrane Rules”は看板倒れだろうと思わせたのは残念であった。Lenny Whiteは破綻なく叩いていたし,Paul Bollennbackのギターはなかなか魅力的であったが,いかんせんBartzが中途半端なのである。輪を掛けて魅力がないのが,ベースのJames Kingであった。音もダメ,ソロもダメでは私としてはどんどん冷めていってしまった。

Smokeはレーベルも保有していて,相応数のアルバムもリリースしているのだから,もう少しプログラムの質は上げられると思うが,今回は完全に期待外れに終わったと言ってよい。まぁ,ライブには当たり外れがあるのは当然だが,ここでの演奏で疲れてしまって,3日目は梯子をせずに終わってしまった。まぁ,これも勉強だな。

Live at Smoke on December 15, 2017, 2ndセット

Personnel: Gary Bartz(as, ss), Paul Bollenback(g), James King(b), Lenny White(ds)

2017年12月16日 (土)

中年音楽狂のNY夜遊び日記:その2

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NYCに来て2日目から、昼は仕事になったものの,それで夜遊びが止まるわけではない。2日目は昨年に続いて55 BarでのWayne Krantzである。今回もドラマーはKeith Carlockのはずだったのだが,インフルエンザでダウンということで,ジャズ界のウラジミール・プーチンことNate Woodがトラで入り,ベースはアトランタを拠点とするKevin Scottが加わるという布陣であった。

昨年は大人気で2ndセットしか見られなかった反省も込めて,早めに55 Barに到着し,今回は1stセットからの参戦となった。1stセットはフルハウスという感じだったが,2ndは去年と違ってそのままステイ・オーバーできたので,得した気分になった私である。

Wayne Krantzの場合,メンツが変わろうが,音楽そのものには大きな変化はないので,今回もぶちかましモード炸裂という感じであった。今回はかぶりつきで見ていたので,バンド内のアイ・コンタクトやチェンジのタイミングが間近で見られたのはよかった。やはりKrantzを見るならば,55 Barこそが最適と思わされたが,今回も十分に燃えさせてくれたことに感謝しよう。

やっぱりKrantzは最高である。今回の戦利品についてはまた改めて。あ〜,楽しかった。

2017年12月15日 (金)

中年音楽狂のNY夜遊び日記:その1

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NYCに出張となれば,夜行性が高まる私としては,今回も初日から飛ばしてしまった。1軒目はSmallsでJochen Ruckertのクァルテットを見た。リーダーのRuckertはMarc Coplandとのトリオや自身のアルバムでも知られるが,今回はMark Turner(ts),Mike Moreno(g),Joe Martin(b)という魅力的なメンツであった。

このライブ,メンツもよければ演奏もよかったというのが実感だが,中でもMike Morenoのフレージングには感心させられた。コンベンショナルなリズムであろうが,変拍子であろうが,この人のフレージングは非常にコンテンポラリーな感覚が強く,しかも魅力的に感じられた。その他のメンバーも総じて好演であったが,Mark Turnerは指の怪我の影響を全く感じさせることなく,テナーを吹いていて安心した。また,演奏後,ベースのJoe Martinと話すチャンスがあったのだが,非常に紳士的な対応に好感度急上昇した私である。1stセットの最後に聞かせたベース・ソロも見事だったと付け加えておこう。

そこから2軒目として向かったのが,Avenue Cの9丁目と10丁目の間にあるNubluというヴェニューである。私がNYCに在住していた頃は行ってAvenue Aまでと言われて,必ずしも安全な場所とは言えなかった1st Avenueより更に東側のエリアである。正直言って,どこが入口なのか悩むような場所だったのだが,入ってみると内装は小洒落た感じである。オール・スタンディングのクラブって感じで,ジャズっぽさ皆無って感じなのだ。私が到着した時にはGraham HaynesがSynethtesiaというグループで超アンビエントな演奏をしていたのだが,聴衆が10人ぐらいしかいない。おい、おいとなってしまったが,私が聞きに行ったのはその次に出るJon CowherdのMercy Projectである。なんでと言われれば,そこにはドラムスにNate Smithが参加しているにほかならない。

結局,Jon Cowherdのグループが演奏を始めても,聴衆はせいぜい30人って感じだったが,ここでは実にいい演奏を聞かせてもらった。Nate Smithのドラムスはタイトこの上なく,ゾクゾクさせられるものだったが,リーダーのエレピから生まれるグルーブがカッコよかった。Brian BladeのFellowship Bandでの演奏とは随分違うと思わせたが,これも彼の音楽性の一つだろう。Steve CardenusはJohn PatitucciのElectric Guitar Quartetで聞いた時もよかったが,今回もいいフレーズ連発であった。これは本当に拾い物と言ってよいライブで,情報への目配りの大事さを感じさせる演奏だった。

ちなみに今回の演奏はNublu Jazz Festivalと銘打ったイベントの一つだった訳だが,この集客で大丈夫なのかと心配になりつつ,いい演奏が聞けたので文句はない。ということで,到着初日の夜も更けていったのであった。帰りには雪も降り出し,NYCの冬の厳しさを改めて体感。

尚,写真は上がSmalls,下がNubluでのものである。

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2017年12月12日 (火)

Antonio Sanchez@Cotton Club参戦記

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Antonio Sanchezが自身のバンド,Migrationを率いて来日するということで,Cotton Clubに行ってきた。前回,Sanchezが自身のバンドで来日したのは約2年半前であるが,その時はBen WendelがSeamus Blakeのトラで入り,ヴォーカルのThana Alexaは来なかった。だが,今回はMigration Bandが勢揃いということで,結構激しくやるだろうなぁと思ったのだが,なんと今回はこのバンドで吹き込んだ"Meridian Suite"をライブで再演してしまうという試みだったのである。

そもそも"Meridian Suite"に関しては,アルバムが出た当時,私は次のように書いている。

「とにかく,冒頭から熱い演奏が繰り広げられていて,何もここまで熱い演奏をしなくてもいいではないかとさえ思ってしまうぐらいの,火傷しそうな作品である。」(記事全文はこちら

それをライブでやったら,強烈になること甚だしいと想定されるが,まさしく激しい演奏であった。この組曲をライブで再現するということ自体相当チャレンジングであるが,多分それを2セット連続でやってしまうこの人たちって...という感じである。各々のメンバーにもソロ・スペースを与えながら,各人が強烈にプレイするこのバンドは,粗削りな部分もあったが,とにかく熱い。リーダーのSanchezはもちろんだが,Seamus Blake然り,そして更に強烈だったのがJohn Escreetである。時にRhodesを歪ませた音で取るソロは,聴衆を興奮させるに十分であった。

そしてヴォーカルのThana Alexaであるが,楽器としてのヴォイスという感じで,パーカッシブにもメロディアスにも対応できることをライブの場で楽々実証していた。

いずれにしても,ここまでやってしまうと,体力的にアンコールなんて絶対無理(それでもカーテン・コールには応えた)。ましてやサイン会なんてありえないって感じだろう。まぁ,Antonio Sanchezはアンコールを演奏する時間はないと言っていたが,多分時間の問題ではなく,"Meridian Suite"をライブで演奏すれば,疲弊するのが当たり前なのである。よって,サイン会もなしということで今回も写真は取り損ねたので,彼らのライブの模様の写真をネットより拝借して貼り付けておこう。

見てもらうとわかるが,Seamus Blakeが明らかにダイエットしたのがわかる。前はむちっとした感じだったが,今回,テナーやEWIをブローする姿は精悍な感じがしてカッコよかったし,フレージングも切れていた。とにかく,キレキレという表現しか思い当たらない強烈なバンドであった。

Live at Cotton Club on December 11, 2017,2ndセット

Personnel: Antonio Sanchez(ds), Seamus Blake(ts, EWI),John Escreet(p, rhodes), Matt Brewer(b), Thana Alexa(vo, effects)

2017年12月10日 (日)

なかなか面白いオランダ人ヴォーカリストによるJoni Mitchell集。

"Both Sides Now: A Tribute to Joni Mitchell" Lydia van Dam Group(VIA Records)

_20171209常々書いているが,私はJoni Mitchellのファンである。彼女の公式アルバムは全て保有しているし,ブートもどきも何枚か持っているし,参加アルバムもかなりの数を保有しているぐらいだから,かなり気合が入っているのである(笑)。長年,彼女の音楽に魅了されている立場としては,彼女の曲を演奏した作品にも食指が動く。代表的なところで言えば,Herbie HancockやMarc Coplandになるだろうが,スウェーデン発の素晴らしいカヴァー・アルバムもかなり前にこのブログで取り上げたことがある(記事はこちら)。そんな私も全然知らなかったアルバムがこれだが,某通販サイトで情報を仕入れて入手したものである。

結論から言ってしまえば,Joni Mitchellの歌は,Joni Mitchellによって歌われるのが一番いいのは当然なのだが,ジャズ的なフレイヴァーを持たせながらJoni Mitchellの曲を歌ったこのアルバムは,なかなか面白い。ジャズ的なフレイヴァーと言っても,典型的な4ビートではなく,コンテンポラリーな感覚を持っているので,ジャズ・ヴォーカルにカテゴライズされるとしても,カクテル・ラウンジで歌われるようなヴォーカルとは異なる。

そして,このアルバムを聞いていて思うのは,Joni Mitchellの音楽というのは全然古びないなぁということである。このアルバムも録音されてから20年近い時間が経過していても,曲そのものの魅力は全然変わらないことは,よくよく考えると凄いことだと思える。まぁ,主役のLydia Van Damの声は,Joniの歌を歌うにはちょっと素直過ぎるような気もするが,それでも聞きどころは十分にある。選曲は新旧取り混ぜたものだが,バランスとしても悪くないと思う。

ということで,これは結構楽しめるカヴァー・アルバムとして,Joni Mitchellファンは聞いておいても損はあるまい。バックではYuri Honingのソプラノが結構効いているとともに,Sven Schusterのエレクトリック・ベースがコンテンポラリー感を強めていると言ってよいだろう。星★★★★。それにしても,"Shadows And Light"はいい曲だ。

Recorded in November 1998

Personnel: Lydia van Dam(vo), Yuri Honing(sax), Sebastian Altekamp(p), Sven Schuster(b), Joost Lijbaart(ds), Bart Fremie(perc)

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