前作は一体何だったんだと言いたくなる大西順子の新作
"Glamorous Life" 大西順子トリオ(Somethin' Cool/Disk Union)
私は大西順子が前作"Tea Times"をリリースした時に酷評した(記事はこちら)。全く意味のないラップ,Robert Glasperをつまらなくしたような音楽を聞いて,もう大西順子を聞くのはやめるかとさえ思っていた。しかし,今回の新作,ブログのお知り合いの工藤さんが今年のベストの1作に選ばれている。本作と同時発売された"Very Special"はApple Musicで聞いて,まぁ悪くはないと思ったものの,大西順子はバラッドじゃないよなってことで購入には至らなかったが,こちらは全編ピアノ・トリオということもあり購入した私である。
冒頭の"Essential"は,静かなスタートながら,途中からパワフルな演奏に変化し,おぉっと思わせる。昔から言われるように,現在にジャングル・サウンドを生み出せるのは大西順子だけではないかとさえ感じさせ,これはなかなかいいと思わせる。そして,2曲目の"Golden Boys"を聞いて,大西順子は力感溢れなければ面白くないと思っている私のようなリスナーも満足させる出来だと思えた。"Tiger Rag"のような曲を入れてくることも大西順子らしい。そして,そこから"Almost Like Me"になだれ込む展開を聞いて更に興奮度が上がる。一方,大いに期待させた"Fast City"があまり面白くないのはご愛敬。Weather Reportのパワーは大西順子を以てしても超えようがないってことだ。
本作の演奏は,"Wow"でシーンに登場してきた頃の大西順子を想起させるものとなっているので,"Tea Time"で奈落の底に突き落とされる感覚をおぼえたリスナーにとっても,納得いく作品といってよい。まぁ,昔に比べると,打鍵のパワーという観点では若干落ちている(ほんのわずかではあるが...)ように感じるのは,"Wow"からほぼ四半世紀経過していることを考えれば,ミュージシャンとしての成熟度が勝っているのだということと考えればいいだろう。
でもなぁ,あの強烈な"Baroque"が出たのはまだ7年前なので,まだまだ大西順子はピアニストとしても,ミュージシャンとしてもパワーを発揮できるはずだと思う。本作が十分にパワフルな作品であることは認めながらも,更に上を期待をしたいということで,本作は満点とはせず,星★★★★☆としよう。でも,これは楽しめる一作である。
Recorded on September 4 & 5, 2017
Personnel: 大西順子(p),井上陽介(b),高橋信之介(ds)
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大西順子の同時発売のアルバムの2日目。こちらはピアノ・トリオだし、本命に思ってい [続きを読む]
けっこういいアルバムでしたよね。
前作は評価はいろいろだけど、個人的にはプロデューサーとの相性があまり良くなかったかなとも思います。まあ、そこは聴く側の勝手なので、あえてミュージシャンが意見をいう事ではないと思ってますけど。
今作は静と動を2枚のアルバムに分けていたので、それでインパクトがなおさら強かったのだと思います。
投稿: 910 | 2017年12月27日 (水) 17時37分
910さん,こんばんは。TBありがとうございます。
前作は噴飯ものでしたから,このアルバムについてはリスナーとしても好反応となるのは当然と思います。音楽的には満足のいくものという評価には変わりはありません。
しかし,Twitterの件で,私の心証は悪くなりましたが。多分,それが影響して,当ブログへのアクセスがいつもより多くなったという効果はありましたが(笑)。
投稿: 中年音楽狂 | 2017年12月27日 (水) 18時30分