加納美佐子はどうしているのだろうか?
"3 Purple Circles" Misako Kano(Jazz Focus)
私がこの音源を聞かせてもらったのは,毎度お馴染み新橋のテナーの聖地,Bar D2でのことであったはずである。Bar D2でこれがプレイバックされるのは,偏にDave Liebmanの参加によるところではあるが,私はLiebmanのプレイも気に入ったのだが,このアルバムのハイブラウな雰囲気にまいってしまったのであった。まぁ,Liebmanが参加しているぐらいだから,音が軟弱な訳はないのだが,この加納美佐子という人,フリー的なアプローチも交えて,正直言って硬派である。
加納美佐子という人が活躍したのは90年代後半,せいぜい21世紀の初頭ぐらいまでって感じで,今やネットでさえほとんど情報も得ることができないのはなぜなんだろうか?このアルバムを聞いていると,非常に実力のあるピアニストに思えるのだが,やっている音楽があまりにハイブラウなので,ポピュラリティを確保するってのは難しかったとは思うが,それでも見逃すには惜しい才能の持ち主だと思える。
ここではリーダーのオリジナルに加え,Ornette Colemanが2曲,更には"You Don't Know What Is Love","Prelude to a Kiss"というスタンダードが加わるが,"You Don't Know What Is Love"でのLiebmanのテナーが変態的である(笑)。Liebmanのみならず,バンド全体がバラッドとしてのムードとは対極にあるような演奏をしているではないか。
私が面白いと思ったのはOrnetteの"Ramblin'"であるが,フリーから8ビートに移行しながら,全編に渡って女性とは思えないようなタッチを聞かせる10分を越える長尺の演奏である。Ornetteへのシンパシーを示すところに,加納美佐子という人の本質が表れると言っては言い過ぎかもしれないが,もう1曲の"Broken Shadows"といい,加納美佐子によるOrnetteのインタープリテーションは誠に興味深い。Ornetteの音楽の魅力をうまく切り取っていると感じさせるに十分である。
更にタイトル・トラックのスリリングな響きを聞けば,これって反応する人が多いだろうと思ってしまうが,こんな演奏を聞かせていた加納美佐子がシーンから消えてしまったのは,本当にもったいないと思わせるに十分な佳作だと思う。星★★★★。
Recorded on May 28 & 29, 1999
Personnel: 加納美佐子(p), Dave Liebman(ts,ss), Mark Helias(b), 武石聡(ds)
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