今日は懐かしいCorea & Burtonの「抒情組曲」
"Lyric Suite for Sextet" Chick Corea & Gary Burton (ECM)
このアルバムが出たのは1983年のことなので,それからもう35年近くが経過している。Gary Burtonが音楽生活から引退した今,この名デュエットをもう聞くことはできないが,特に彼らがECMに残したアルバム群は不滅の輝きを持つものと言ってよい。しかし,このアルバムが出た時は,それまでのアルバムに比べると,若干違和感を以て迎えられたような気がする。それでも,アルバム・リリース後,セクステットで来日公演を行った時には,会場(中野サンプラザだったかなぁ)に武満徹の姿もあったのが懐かしい。
多少なりともクラシックを聞いている人であれば,「抒情組曲」と聞くと,アルバン・ベルクを思い出してしまう人が多いだろうが,そう聞くと身構えるのが当然である(笑)。しかし,当然のことながら,アルバン・ベルクの音楽とは全く違うものであることは言うまでもない。
ここにあるのは,いつものように美しいCorea & Burtonのデュオに弦楽四重奏が加わるということだけである。よって,よりクラシックとの融合を期待すると,もう少しバックのクァルテットとの連動性があってもいいように感じるわけだが,私としては,これはこれで十分にありだと感じる。
もちろん,このご両人のアルバムで,これを一番だという気は毛頭ない。彼らの最高傑作は誰がなんと言おうと,チューリッヒのライブ盤である(私がブログ開設直後に書いた記事はこちら)。ライブ盤に聞かれたテンションはここでは強くは感じられず,美的感覚に重きが置かれているように思える。結局このアルバムへの評価がわかれるのは,これの前作がそのチューリッヒのライブ盤だったということもあるだろう。基準をそちらに置かれては,分が悪いのは当然なのだ。
だが,久しぶりにこのアルバムを聞いてみて,その音楽の美しい響きを再認識できたことはよかった。その後,この二人はHarlem String Quartetとの共演盤も残しているが,私としては,徐々にこのデュエットへの関心が薄くなっていたこともあり,印象にあまり残っていないのに比べれば,このアルバムへの記憶は強く残っていると思っていたが,自分が思っていた以上に美的なアルバムだったと言っておこう。星★★★★。
Recorded in September 1982
Personnel: Chick Corea(p),Gary Burton(vib), Ikwhan Bae(vln), Carol Shive(vln), Karen Dreyfus(vla), Fred Sherry(cello)
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