ある意味,これがVanguardでのライブというのが信じがたい"Small Town"
"Small Town" Bill Frisell & Thomas Morgan(ECM)
今年になってから,私はBill FrisellはCharles Lloydとのライブで,そしてThomas MorganはJokob Broとのライブで,その生演奏に接している。ビルフリについては長年の経験則からして,だいたいどういう音だろうというのは想像がつくし,Thomas Morganのあの超内省的な感じ(本当に内気な青年って感じなのである)からすれば,インティメートな音場になることはわかっていた。
しかし,本作が録音されたのは,モダン・ジャズの聖地と言ってよい,あのVillage Vanguardである。あまりこうした演奏には接するチャンスがある場所だとは思えないのだが,そういう場所でこういう演奏が行われたということがまず驚きである。
だが,このアルバムを聞いていると,彼らの演奏にはマジカルな部分があって,聴衆を誘因する特殊なケミストリーを発生させているようにさえ思える。ギターとベースというデュオというセッティングにおいて,非常に特異な個性に満ちた演奏と言うことができるアルバムだと思える。だって,Jim Hall~Red MitchellやJim Hall~Ron Carterとは違うし,Charlie Haden~Christian Escoudeとも違う。ではBebo Ferra~Paulino Dalla Portaとはどうかというと,内省的な響きは類似していても,やっぱり違うのである。彼らにしか出せない音。まさにそんな感じだろう。"Subconscious Lee"なんて,まさにツボに入る演奏である。
ビルフリの音は想定通りであるが,ここでのThomas Morganのベースの音がなんと魅力的に録音されていることよ。レコーディング・エンジニアの記載がないが,これをミキシングだけでこの音に仕上げたとすれば,それはそれで凄いことである。
前半はJakob Broにも通じる幽玄な世界が展開されるが,中盤から後半にはやや最近のビルフリに感じられるアメリカーナな感覚もあり,全体としてはバランスの取れたアルバムと言ってよいだろう。だって,やっているのがCarter FamilyやらFats DominoではいくらビルフリとThomas Morganでも多少はそうなるわねぇ(苦笑)。そして最後はなんと"Goldfinger"である。Shirley Basseyのオリジナルとは全く違う世界が展開する。万人には勧めにくいが,この世界,はまるとなかなか抜けられない。そういう世界である。星★★★★☆。
いかにThomas Morganが内気っぽいかを見て頂くため,Jakob Broとのライブ時の写真を再掲しておこう。いつも通り,私の顔はモザイク付きである。
Recorded Live at the Village Vanguard in March 2016
Personnel: Bill Frisell(g), Thomas Morgan(b)
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今年上半期で、たぶん自分でもベスト3に入れるんじゃないかな、というアルバムが登場しました。この2人のコラボレーションはただものではないですね。あえてビル・フリゼールを他レーベルから引っ張ってきて録音しただけのことはありました。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2017年6月14日 (水) 17時11分
トラバをありがとうございました。
すっごく、素敵なアルバムでした。もう、好み好み!
気があってますよね。
ビルフリの夢の世界をかろうじて現実世界と結びつけてるのは彼のベースですかね。目が醒めるような、、って、言うのとはまた違うんですが、昨日も渾身の素晴らしい演奏でした♪
投稿: Suzuck | 2017年6月16日 (金) 17時20分
910さん,こんにちは。TBありがとうございます。返信が遅くなり申し訳ありません。
確かにこれはいいアルバムですよね。Thomas Morganの役割が非常に大きいと思いましたが,アルバム全体として一本筋が通っていて私も気に入りました。
投稿: 中年音楽狂 | 2017年6月17日 (土) 12時46分
Suzuckさん,続けてこんにちは。こちらもTBありがとうございました。
ビルフリのライブは気になっていたんですが,今回は見送ってしまいました。いいなぁ。
いずれにしても,このアルバムが醸し出す雰囲気が素晴らしいと思います。いいアルバムですよねぇ。
投稿: 中年音楽狂 | 2017年6月17日 (土) 12時48分