GWに見た2本目は「ムーンライト」。
「ムーンライト("Moonlight")」('16,米,A24/Plan B)
監督:Barry Jenkins
出演:Alex R. Hibbert, Ashton Sanders,Trevante Rhodes,Mahershala Ali, Naomie Harris,Janelle Monáe, André Holland
今年のオスカーでは,「ラ・ラ・ランド」が作品賞でも本命視されていて,作品賞の発表において,誤って「ラ・ラ・ランド」がコールされるという珍事が起きたのは記憶に新しい。実際に作品賞を受賞したのがこの映画だったわけだが,これは非常に重い映画であり,正直言って,オスカー受賞という要素がなければ,日本で公開されていたかどうかも微妙な映画である。
Chironという主人公の小学生,ハイスクール,およびその後という年代記というストーリーを見て,ようやくこの映画のポスターの意味を理解した私だったが,そこには麻薬の売人といういかにもマイアミらしい職業が出てくるとともに,いじめやLGBTという要素を絡めて,Chironの変遷が描かれる。それは決して単純な「成長」の物語ではないところが重苦しい。ある意味,救いのない映画とも言え,こうした映画はそれなりの覚悟がないと見られないというのが実感である。そういう意味では先日見た「ワイルド・スピード ICE BREAK」の対極にあるような映画だが,こうした映画の製作にかかわるBrad Pittの社会派的な部分炸裂である。
見終わって,正直言ってどっと疲れが出るタイプの映画であるが,この映画がオスカーのようなある意味権威主義的イベントで,作品賞を受賞したことは,大きな意義はある。白人偏重に抗議の声が上がったのが昨年で,舌の根も乾かぬうちに大きな転換を示すということで,禊ぎをしたのだというシニカルな見方も可能だろう。また,LGBTを真正面ではなく,側面から描いたとは言え,こうしたテーマの映画を評価するという感覚は,アカデミーにはこれまでは感じられなかったはずである。「ラ・ラ・ランド」の全面勝利に与するよりも,本作を作品賞に推すことで,バランスを取っただけだと言われても仕方がない部分を感じていた私である。
そう言った皮肉な見方もできるとしても,この映画のシナリオは脚色賞に値する優れた出来だし,出番は短いものの,助演男優賞に輝いたMahershala Aliは強く印象に残るのも事実である。映画としては確かによくできている。批評家の評価を合算したMetascoreが99という驚異的な数字になるのもまぁわかるのだが,それでもこの映画は厳しくも辛いものであり,そして重い。いい映画だと認めた上で,これをもう一度見る気になるかというと,そうではないというのが正直なところである。
尚,下の写真はほぼラスト・シーンに近いものであるが,これが原作である"In Moonlight Black Boys Look Blue"を意識した表現であることは一目瞭然であろう。
私としては星★★★★だが,これが批評家と一般的な人間の違いだろうな(苦笑)。
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