ECMからクリポタの新作がリリース。これが実によい。
"The Dreamer Is the Dream" Chris Potter(ECM)
ECMレーベルからクリポタの新作がリリースされた。"The Sirens","Imaginery Cities"に続く第3作はクァルテット編成である。振り返ってみれば,ECMからクリポタがアルバムを出すと聞いた時に,Undergroundで聞かせるようなイケイケ感と,ECMのレーベル・カラーが合わないのではないかと思わせたのは,"The Sirens"の記事をアップした時にも書いた(記事はこちら)。しかし,ECMの総帥,Manfred Eicherが評価したのは,激しくブロウするクリポタというよりも,トータルなミュージシャンとしてのクリポタだと思わせた。
今回の新作においても,冒頭の"Heart in Hand"から,非常にメランコリックな響きに満ちている。しかし,James Farberの見事なエンジニアリングもあって,クリポタの本質と言うべき,サックスの音色が捉えられていると思える。2曲目の"Ilimba"においては,こちらが期待するようなクリポタ的なフレージングを聞かせて嬉しくなってしまうし,随所にクリポタらしさも表れている。その一方で"Memory And Desire"のような曲では,室内楽的な響きすら感じさせ,クリポタの音楽性の広さが聞いて取れる。
一聴して,クリポタ的イケイケ感は,それほど強くないとしても,アルバム全体を通して聞いてみると,これは実によくできていると思ってしまうようなアルバムである。この感覚,ここにも参加しているJoe Martinの2009年作"Not by Chance"を思い出させる(記事はこちら)。本作のメンツは"Not by Chance"のピアノをBrad MehldauからDavid Virallesに代えたものだが,一聴しただけでは地味に聞こえるのだが,"Not by Chance"のじわじわ来るよさと同じような感じを思い出させる。
いずれにしても,クリポタのミュージシャンとしての質の高さを十二分に捉えたアルバムとして,私は本作を高く評価したい。ECMのアルバム前2作もよくできていたと思うが,静的な部分とダイナミズムを兼ね備えた作品として,私はこれが一番いいように思う。ということで,クリポタにはついつい甘くなり,星★★★★★。
尚,クリポタのクレジットにあるilimbaというのは,カリンバに似たタンザニアの民族楽器らしい。へぇ~(笑)。
Recorded in June 2016
Personnel: Chris Potter(ts, ss, b-cl, cl, fl, ilimba, samples), David Viralles(p, celeste), Joe Martin(b), Marcus Gilmore(ds, perc)
ついでながら,この演奏よりもっと激しいクリポタをご所望の皆さんのために,Snarky Puppyのライブに乱入したクリポタの映像を貼り付けておこう。画像が揺れるのがちょいと気持ち悪いが,これは激しいでっせ(笑)。
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クリスポッターは他レーベルなら、音圧をもっと上げて、賑やかなミキシングにしてたでしょうね。内容的には良かったでしたが。でも逆に言うと、こういう曲はECMじゃないと出てこないような気もするので、やっぱりこれがいい、という結論です。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2017年5月11日 (木) 20時28分
910さん,更にこんばんは(笑)。こちらもTBありがとうございます。
このアルバム,明らかに"Lift"やUndergroundとは異なるものでしたが,アルバムとしての出来は非常にいいと思いました。これも偏にEicherの美学って気もしますが,それにしてもいいアルバムを作るもんです。
ということで,追ってこちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2017年5月11日 (木) 21時25分
閣下、トラバありがとうございました。
お褒めいただけて光栄です。笑
私もジョー・マーティンのリーダー作がとても気に入っているので、、
楽しみにしていたあるばむです。
そして、ECMにしたらかなり熱い部分もあるわけですが、その辺は総裁の采配にまかせていていいのかな、って、おもいます。
クリポタは相変わらず、密度の高い音で幸せでした♪
投稿: Suzuck | 2017年5月15日 (月) 17時49分
Suzuckさん,こんばんは。TBありがとうございます。
おっしゃる通り,ECMとしては熱い展開もあるとは言え,Snarky Puppyとの演奏を見た後だと,地味に思えます(爆)。しかし,これは作品としては非常によくできていて,私としては高く評価したいと思っています。いずれにしても,Eicherはクリポタの本質を理解しているってことが証明されていますね。
投稿: 中年音楽狂 | 2017年5月16日 (火) 23時19分