Aaron ParksのECM第2作は何とも美的。
"Find the Way" Aaron Parks (ECM)
Aaron ParksがECMでソロ作"Arborescence"をリリースしてからやく3年半,ついにその第2作がデリバリーされたので,早速聞いてみた。今回はピアノ・トリオ編成であるが,ベースのBen Streetはさておき,ドラムスがBilly Hartというのがやや異色に思える。と同時に,私にとってはちょっとそれが不安要因でもあった。
私がAaron Parksのソロ・アルバムに期待するのは,繊細でリリカルで美的なピアノである。そうした観点では,全編を通じて,期待通りの音が聞こえてくる。ただ,冒頭の"Adrift"に顕著なのだが,Billy Hartがちょっと叩き過ぎという感じがしないわけではない。これがミキシングのせいというわけではないと思うが,繊細なピアノには,もう少し繊細な叩き方があってもよいと思わせる。正直言って,Aaron Parksに合うと思えるのは,パワーもありながら,繊細さも打ち出せるEric HarlandやKendrick Scottあたりでないかと思う。全体を通じて聞けば,Billy Hartも楚々としたドラミングを聞かせているとは思うが,どうしても1曲目の印象が残ってしまうのである。5曲目,"The Storyteller"でも同じような感覚を覚えるのも事実。
しかし,そうした点を除けば,Aaron Parksの書くオリジナルの美しさ,紡ぎだされるソロ・フレーズのリリカルさを含めて大いに楽しめる作品となっている。欧州的なピアノとは違うリリカルさ(明らかに違うのだ)をECMで聞かせるところに,この人の力量を感じるとともに,本当に美的なピアノを弾く人だと改めて感心させられた。前回来日時には,ホーン入りのアルバムを吹き込みたいなんて言っていたが,総帥Manfred Eicherとしても,トリオとしての美学を優先したってところだろう。いずれにしても,この演奏,私の好物と言ってよいサウンドである。星★★★★☆。半星引いたのは上述のBilly Hartに対するちょっとした違和感ゆえ。
尚,本作は,フランス南部にあるPernes-les-Fontainesという都市の,Studios Ls Buissonneなるスタジオで録音され,エンジニアもGerald de HaroとNicolas Baillardという人が務めている。これって私が知る限りでは,ECMでは初めて,あるいは珍しいパターンなのではないかと思うが,それでも完全なECMサウンドになっているのがEicherマジックか(笑)。
このアルバムを聞いて,Aaron Parks Trioでの来日を期待するリスナーは多いはずである。私ももちろんその一人ってことで...。
Recorded in October 2015
Personnel: Aaron Parks(p), Ben Street(b), Billy Hart(ds)
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前作がソロ・ピアノだったので、ピアノ・トリオ(最近ECMのピアノ・トリオ比率が上がっているような気がします)として、興味深く聴けました。彼らしい魅力がけっこうつまっているようで、もっと早めに聴けたら、と思いました。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2017年5月10日 (水) 20時48分
910さん,続けてこんばんは。こちらもTBありがとうございます。
私がこのアルバムを評価したいと思うのは,Aaron Parksの作曲能力があることも事実だと思います。ピアノはもちろん魅力的でしたが,曲もなかなかのもんですね。私は全面的に支持しちゃう音だなってことですね。
投稿: 中年音楽狂 | 2017年5月11日 (木) 21時22分
閣下、トラバをありがとうございます。
でも、ちょっと複雑な気持ち。笑
閣下、トラバありがとうございます。m(_ _)m
もともと、、ビリー・ハートがあまり好きなタイプでないんですよ。
なので、、「ぎょぎょぎょ」って感じでした。笑
でも、このアルバムを聴いてパークスは、やっぱり普通にピアノ上手いんだな。。って、思いましたよ。
買ってよかったとはおもうんですが。。でも、年間ベストには残らないとおもいます。。
悩ましいけど、トラバいたしますね。
投稿: Suzuck | 2017年5月17日 (水) 18時22分
Suzuckさん,こんばんは。TBありがとうございます。
おっしゃる通り,Billy Hartが今回の鬼門です。しかし,それを除けば,このアルバムはいいと思います。Billy Hartも全面的にダメってわけではないですし。私は多少の瑕疵はあったとしても,それよりもAaron Parksの才能を評価すればいいと思います。それでもミスキャストは痛いですが(苦笑)。
投稿: 中年音楽狂 | 2017年5月17日 (水) 22時46分
中年音楽狂さんの感想の焦点がAaron Parksの世界に、Billy Hartの意味づけにあるお話しがよく理解出来ます。
ある意味で、面白いとも思ったのですが・・・、ちょっと違うなぁ~~と言う意味もよく解ります。Aaron Parksはどう思っているのでしょうかね?。>むしろこれからの作品がどうなって行くかという興味も湧かせて頂きました。
投稿: 風呂井戸(photofloyd) | 2017年7月 2日 (日) 22時25分
風呂井戸さん,こんばんは。TBありがとうございます。
聞き手の感触とプレイヤーの感触は多分違うと思いますし,噂によれば,Aaron ParksはBilly Hartを尊敬しているらしいって話もありますから,意図的に彼を招いたのかもしれません。
ただ,それがAaron Parksにリリシズムを期待する私のようなリスナーにとっては,必ずしもベストなチョイスではないと思えるのはやっぱり残念です。でもアルバムとしてはよくできていますが。
投稿: 中年音楽狂 | 2017年7月 3日 (月) 00時08分