ECMからリリースされたDominic Millerのアルバム。
"Silent Light" Dominic Miller (ECM)
このアルバムのリリースが告知された時,「へぇ~,Dominic MillerがECMなんだ」と思ったのが正直なところである。私の中では,Dominic Millerと言えば,長年,Stingのバックを務めてきたイメージが強いが,そんな彼がECMからアルバムをリリースするというのは正直意外であった。だが,ECMは最近はそうでもないが,初期のアルバムにはギタリストのアルバムが多数あったし,Manfred EicherがDominic Millerの演奏に,レーベルとのフィット感を見出だしたということであろう。
そして,このアルバムであるが,難しいところはなく,極めて聞き易く,その一方で美的な感覚もあるアルバムとなっている。こういう音楽は昼間に聞くよりも,夜が更けてから,タイトル通り,"Silent Light"に照らされながら,静かに聞くのがぴったりという感じの曲が並んでいる。曲はStingの"Fields of Gold"を除いて,Dominic Millerのオリジナルであるが,"Baden"なんて曲からして,Baden Powellに因んだものと思わせるボサノバ・タッチを聞かせるところもあり,,これはECMファンならずとも,訴求力の高いアルバムだと思わせる。
このアルバムがECMレーベルにとって,珍しいなぁと思わせるのが,StingとPaul Simonがライナーにコメントを寄せていることだろう。それがDominic Millerのこれまでのキャリアを示していることにもなるが,その一方で面白いのが,Dominic Millerが最初はEgberto Gismontiの"Solo"とPat Metheny Groupの"Off Ramp"の中間を行くような音楽を最初は作りたいと思っていたらしいことである。ライナーによれば,EicherとMillerでいろいろなメンバー構成を考えていたらしいのだが,スケジュールが折り合わないとかの理由により,結局,ソロ+αのような構成に行きついたということだが,静謐な中に,オーバーダビングも含めて,トリオ編成で演奏される"Chaos Theory"を聞くと,現在,トリオ編成で来日している演奏も気になってくるところだが,私はスケジュールが合わず,見に行けないのが残念である。
いずれにしても,しびれるような美学という感じではないが,多くの人に抵抗なく受け入れられることが可能であろうと思わせる佳作。星★★★★。
Recorded in March 2016
Personnel: Dominic Miller(g, el-b), Miles Bould(perc, ds)
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ドミニク・ミラー、調べれば調べるほどロックやポップスの世界では有名なんですよねえ。そういう人をECMでアルバムを出させてしまうというのも意外でしたが、結果オーライの、まさにECM的世界でした。けっこう広く売れるんじゃないかな、という内容です。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2017年4月24日 (月) 08時34分
910さん,おはようございます。TBありがとうございます。
そうですね。知ってる人は知ってる名前ですね。そんなDominic MillerとECMは簡単には結びつきませんが,レーベル・カラーにはばっちりフィットしてますね。思うに,この人,人のバックと自分のアルバムで,かなりタイプが違うようにも思いますが,本当にに聞きゃすいアルバムでした。
投稿: 中年音楽狂 | 2017年4月25日 (火) 09時23分
私はかれこれ10年ぐらいドミニク・ミラーに惚れ込んでいますが、彼のFirst AlbumであるFirst Touch(Zsofia BorosがECM1枚目で演奏しているEclipseはドミニクの曲でFirst Touchの1曲目に収められています)やfourth albumのFourth Windは、今回と余り雰囲気は変わらない静謐でシンプルですよ。その意味では、いつECMにやってくるのかと心待ちにしていました。Badenなどは以前のアルバムに収められています。このシンプル且つ誰でも出せそうな感じの音なのですが、何度聞いても飽きない音は、若い頃にフィル・コリンズにアドバイスを貰ったのだとか。私が生で聞いた中でも本当に上手いギタリストでした。
投稿: カビゴン | 2017年4月25日 (火) 10時34分
カビゴンさん,こんにちは。
確かにDominic Millerのソロ・アルバムとの近似性はありますよね。私の場合は,基本的にStingのバックのイメージになりますが,今度ストリーミングでソロ作を改めて聞いてみます。
投稿: 中年音楽狂 | 2017年4月26日 (水) 12時16分
トラバをありがとうございました。
ドミニク・ミラーの名前は、スティングとラーシュ・ダニエルソンのアルバムで知ってます。
でも、初めは同じ人物だとは思わなかったんです。w
購入時は、ブログにあげ損なってしまったのですが、、
スティングさまの来日が、ちょうどいいきっかけになりました。
スティングのステージからは想像できないけど、繊細っていうか、、神経質そうなところは一緒か??
素敵ですよね。熱帯夜の必需品♪
投稿: Suzuck | 2017年6月13日 (火) 17時24分
Suzuckさん,こんにちは。TBありがとうございます。返信が遅くなってしまい申し訳ありません。
Dominic Millerって明らかにStingのバックの時と,リーダー作でテイストが違うんですよねぇ。どっちもちゃんとこなしてしまうのが凄いですが。これはいつもリーダー作の感じでしょうか。それにしても,ECMのアルバムで,StingとPaul Simonのメッセージを見るとは思いませんでした。
それにしても,Sting見に行けばよかったですかねぇ。でも最新作のイマイチ感があったんで見送ってしまいました。
投稿: 中年音楽狂 | 2017年6月17日 (土) 12時43分
いいアルバムですね。スティングのライナーノートも気になっているのですが、レコードのシールドを破ることができなくて(なんか痛みそうで)、ちょっと残念。レコードで聴くと、柔らかな音質でかなりイケますよ。お試しあれ。
http://kanazawajazzdays.hatenablog.com/entry/2017/07/01/101521
投稿: ken | 2017年7月 3日 (月) 00時50分
kenさん,こんばんは。リンクありがとうございます。
Stingのコメントをここに書こうと思いましたが,結構長いのでやめます(爆)。まぁ,こうした音源はLPで聞くといいかもしれませんが,これ以上,LPを置く場所がないんですよ,私の部屋には。なので,基本CDで我慢せざるをえません。
とか言いながら,かさばるKraftwerkのBlu-Rayのボックスとか買ってるんですけど。
投稿: 中年音楽狂 | 2017年7月 3日 (月) 00時57分