今年最初のECMレーベルはJohn Abercrombieの新作。
"Up and Coming" John Abercrombie Quartet (ECM)
昨年も素晴らしい作品を連発して,音楽好きを唸らせたECMレーベルであるが,私の今年の最初のECMのディスクはJohn Abercrombieの新作である。前作"39 Steps"発表後,今回も参加のMarc Coplandを連れて来日したのも,もう2年前以上の話になるのかと思うと,時の経つのは早いと思わざるをえない。ということはアルバムも約2年半ぶりのリリースということになるが,久しぶりって感じはしない。メンツは今回もMarc Copland入りの前作から不動のクァルテット(特にGress~Baronとの付き合いは更に長いが...)だが,これが何とも穏やかなアルバムとなっている。
まぁ,ジョンアバは録音当時71歳だし,一番若いJoey Baronだって還暦を過ぎているクァルテットなので,音楽が落ち着いたものとなることは当然と言えば当然なのかもしれないが,それにしても,静謐で美しい音楽となっているのが,いかにもECMらしい。ある意味枯れた味わいとでも言うべきものだが,いかにもジャズ的に響く瞬間もあり,なかなかいいアルバムだと思える。
基本的にはジョンアバとCoplandのオリジナルで占められた本作において,唯一の例外として彼らが"Nardis"をやっているところに私としては耳が行ってしまう。CoplandはRalph Townerとのデュオ作"Songs without End"で"Nardis"をやっているが,当然,このクァルテットにとってもフィットするチョイスとなるだろうと思えたからである。結果としては予想通りと言ってもよいかもしれないが,今まで聞いたどの"Nardis"よりも穏やかであっさりとした印象を与えるのが,やはりこのアルバムのイメージを物語っているように思える。まぁ,ある意味,カヴァー・アートのSheila Rechtshafferのパステル画は,実にこの音楽をよく表しているようにも思える。この人のパステル画ってのは,結構後期ターナーもしくは印象派の絵画をややダークにした感じもする(換言すれば,いわゆるパステルっぽくない)のだが,そういう観点で聞くとまた面白いねぇ。
いずれにしても,全編に渡ってそんな感じなので,刺激には乏しいとも言えるのだが,こういう音楽を必要とする場合もあると思えるし,穏やかに新年を過ごすには適したアルバムだったということで,甘いとは思いつつ,星★★★★☆としてしまおう。いずれにしても,リーダーのジョンアバには甚だ失礼ながら,特筆すべきはMarc Coplandのピアノのタッチの美しさとフレージングだと思ってしまうのが,ファンの弱みである(苦笑)。
Recorded in April & May, 2016
Personnel: John Abercrombie(g), Marc Copland(p), Drew Gress(b), Joey Baron(ds)
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このメンバーだからこそいい、と思うECMのアルバムでした。結果として、ジャケ写に言及していることとか、こういうのが好みだとか、書いていることが似てしまいましたが、偶然なので、お許しください。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2017年1月11日 (水) 12時11分
910さん,おはようございます。TBありがとうございます。
ECMにしてはコンベンショナルな部分も感じさせる音楽ですが,Eicherがジョンアバには自由にやらせてるってことかもしれませんね。
表現が似通ってしまった例は私にもありましたので,どうぞご心配なく。そうなっても仕方ない音楽って話も...(笑)。
ということで,追ってこちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2017年1月12日 (木) 08時46分
閣下、トラバありがとうございました。
メンバー観ただけで、個人的には涎が出るわけですが、、
やっぱり、うなってしまいました。良い!!
ジョンアバの浮遊感、コープランドの耽美プレイ、、ぴったりですね。
で、ジョーイ・バロンが、やっぱり、凄い。
と、いうことで、、トラバいたします♪
投稿: Suzuck | 2017年1月20日 (金) 17時29分
Suzuckさん,こんにちは。TBありがとうございます。
このメンツですから間違いはないとは思ってましたが,やっぱり間違いありませんでした(笑)。Joey Baronのプレイぶりって,本当に合わせるのがお上手って感じで,本当に万能ドラマーと思いました。
投稿: 中年音楽狂 | 2017年1月21日 (土) 13時35分
ジャズらしい演奏で、変化球がない、それが良かったですね。
その意味で最近のECM的ではないのですが、いつものあっさりとしたニューヨーク録音の音、これも好きなんです。いいアルバムでした。
http://kanazawajazzdays.hatenablog.com/entry/2017/02/19/083111
投稿: ken | 2017年2月19日 (日) 08時41分
kenさん,こんにちは。リンクありがとうございます。
昨今のECMにしては,おっしゃる通り,真っ当なジャズ路線ですよね。メンツがメンツなのと,彼らの年齢による枯れ具合ってのもあるとは思いますが,いいアルバムだと思います。
特にMarc Coplandは相変わらずいい仕事ぶりなので,彼のECMでのリーダー作をますます期待したくなりますね。
投稿: 中年音楽狂 | 2017年2月19日 (日) 15時28分