これは強烈。Keith Jarrettの未発表ライブ音源ボックス。
"A Multitude of Angels" Keith Jarrett(ECM)
Keith Jarrettが慢性疲労症候群により,長期の沈黙に入る直前の音源がリリースされた。まさにこれらのライブにおいて,Keithは激しい疲労感に襲われていたらしいのだが,そんなことは全く感じさせない演奏となっている。
現在のKeithは,この当時のように長大なソロを演奏することはなくなり,比較的短い即興を聞かせるスタイルに変わっているが,おそらくは病気がこうした演奏をさせることをやめさせたと考えればいいのではないかと思う。現在は現在で素晴らしい演奏を聞かせるKeithではあるが,こうしたスタイルを懐かしむオーディエンスがいることも事実であろう。私がKeithのソロをライブで聞くようになったのは,今のスタイルになってからのことなので,こういうスタイルの演奏も聞いておきたかったなぁというのも正直なところである。
それはさておき,激しい疲労感を覚えていたということが信じられないぐらい,演奏は充実したものであり,ECMにはこうした蔵出し音源がいくらでもあるのではないかと思える。"Hamburg '72"の例もあることだし,こういう蔵出しはこちらとして大歓迎である。まぁ,この音源はKeith本人がDATで録音していたものをリリースしたものであるから,正確に言えばECMの蔵出しではないとも言えるが...。いずれにしても,ECMの歴史上,Performed, Produced and Engineered by Keith Jarrettというクレジット表記はなかなかないのではないかと思える。
ここには現代音楽的な響きもあれば,クラシカルな響きもある一方で,Keithらしいフォーク・タッチも顔を出し,そうそう,Keith Jarrettのピアノはこんな感じだよねぇと思わせるに十分な演奏である。その一方でこうした長大な演奏は集中力を要することは当然であり,それがKeithの病因となったのだとすれば,皮肉なことと言わざるをえないが,それを音楽として楽しんでしまう私も勝手なものである。
だが,ECMの総帥,Manfred Eicherがこの音源に対し,ECM2500~2503というきりのいい番号を与えたことには,この音源に対する自信があるものと考えられるし,Keithも納得の音源だったのであろうということは想像に難くない。そう考えて然るべき音源であり,これを聞いたらまいりましたと言わざるをえないというのが正直な感想である。喜んで星★★★★★としよう。
Recorded in Modena, Ferrara, Torino and Genova on October 23, 25, 28 and 30, 1996
Personnel: Keith Jarrett(p)
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素晴らしい演奏でした。聴く時間もそれなりにかかりましたけど、失礼ながら、仕事しながらのながら聴きになってしまいました。20年前の録音という事で、残念ながら今年のベスト3にはしないと思いますけど、今これが出た価値はあると思います。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2016年11月24日 (木) 20時03分
910さん,こんばんは。TBありがとうございます。
本当に素晴らしい演奏ですよねぇ。もう20年も前の演奏とは思えない瑞々しさです。まぁ,Keithの音楽ってのは古びる要素がないと言えばその通りですが,これは本当に凄い音源だと思いました。発掘音源としてこれかOtis Reddingのどちらをトップに据えるか,悩む私です(笑)。
ということで,こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2016年11月24日 (木) 22時03分
慢性疲労症候群で長期休養に入る直前であること。
ECMレーベルでのキリ番(2500-2503)なのに正規録音でないこと。
もう、金欠だからとかそんな理由で聴かないわけにはいかない盤であると認識しました。
で、その期待に違わぬ演奏をたっぷりと堪能させていただきました。
TBありがとうございます。逆TB。。。ができなくなってるようなので、
URL貼らせていただきます。
http://blogs.yahoo.co.jp/pabljxan/64053255.html
投稿: oza。 | 2017年3月 9日 (木) 20時06分
oza。さん,こんばんは。リンクありがとうございます。
これはまぁよくぞ録音しておいてくれたと言いたくなるような作品でした。この後,演奏から遠ざかるKeithですが,そんなことは微塵も感じさせないのが凄いと思います。リリースも自信を持ってのものと確信しています。
ところで,私のTBは入るのに,oza。さんのTBが入らないというのは不思議ですね。TBというのは,Yahoo!のサイトに流入を呼ぶチャンスだと思うんですが。訳がわかりませんわ。大体,TBの画面の文言を読んだら,こちらからはTBできないと思わせますよね。Yahoo!は何を考えているんでしょうか。
投稿: 中年音楽狂 | 2017年3月 9日 (木) 23時46分