Robert Glasper Experimentの新作登場。ますますカテゴライズ不能に。
"ArtScience" Robert Glasper Experiment (Blue Note)
Robert Glasper Experimentの新作がリリースされた。Experiment名義では"Black Radio 2"以来であるから約3年ぶりとなるが,今回は"Black Radio"シリーズと異なり,ゲスト・ヴォーカルを迎えることなく,ほぼExperimentの面々による演奏となっているのが特徴である。そして,ジャケからしても,誰もこのジャケを見てジャズ・アルバムとは思うまいという感じになっていて,これまでの越境型の音楽性はここでも健在である。"Black Radio"シリーズもソウルと言えば通ってしまうような音楽であったが,本作では更にカテゴライズ不能度が増している。
冒頭の"This Is Not Fear"こそジャズ的な響きを持っていて,これは今までと違うのかと思わせるが,その後はジャズ,ファンク,ソウル,ロックが混在した響きを聞かせる。特にゲストのMike Seversonのギターが加わるとロック色が濃い感じになるのが面白い。
一方で,様々な要素が混在していて,やや捉えどころがない感じがするのも事実であるが,この人たちによる"Tell Me a Bedtime Story Now"を聞くとは思わなかったので,イントロが聞こえてきたときはびっくりしてしまった私である。まぁ,そうは言いながら,日頃からライブ・バンドとして演奏をしている人たちなので,バンドとしてのまとまりは問題ないので,結構楽しく聞ける。
私が全く評価できないMark Colenburgは相変わらずのオカズ過多のところもあるが,比較的抑制したプレイぶりなので,ライブで覚えた不快感がなかったのはよかった。私にとっては,彼らは"Black Radio"のイメージが強過ぎて,そちらが基準になってしまうのだが,結局本作もそれを越えるところまでは行っていない。まぁ,この程度はできるだろうという出来だが,そろそろ次なる一手を考えないと,この人たちもそろそろ厳しくなってくるのではないかと思える。決して悪くはないし,水準は保っているが,驚きがないというのが正直なところである。ということで,ちょいと甘めの星★★★★としておこう。私にとっては次作も買うかどうかは微妙って感じである。Apple Musicで聞けばいいか(苦笑)。
Personnel: Robert Glasper(p, el-p, key), Derrick Hodge(b, vo), Mark Colenburg(ds, perc, vo), Casey Benjamin(as, ss, key, vo, vocoder), Michael Severson(g), Jahi Sundance(whistle, turntable), Riley Glasper(speech)
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