久しぶりに本の話:「マチネの終わりに」
「マチネの終わりに」 平野啓一郎(毎日新聞出版)
このブログに本の話を書くのはほぼ一年ぶりのことである。通勤環境が変わってからというものの,私の読書量は激減してしまったわけだが,小説は買っていないわけではないとしても,なかなか集中して読む時間がないというのが正直なところである。
そんな私が出張の道すがらに読むために手に取ったのが,この平野啓一郎の新作である。彼の小説を読むのは「決壊」以来だと思うが,これは全然「決壊」と異なる大人の恋愛小説である。主人公二人の恋愛模様はよく書けているし,非常に感情移入のしやすい小説である。しかし,彼らが破局するシチュエーションはなんだかTVドラマを見ているみたいだなぁと思って,若干疑問に感じたものの,その後の展開で持ち直し,途中で投げ出さなくてよかったと思ってしまった。
いずれにしても,この小説のラストは非常に爽やかな読後感を与えるものであり,大げさに言えば,恋愛→破局→再生という道筋を描いている。私がこの小説に猛烈に感情移入してしまうのは,自分の過去の恋愛体験をこの小説に投影してしまうからかもしれない。事情は全然違うが,私も同じような経験をしたことがあるということが,フィクションと思えなくなってしまった原因だと思う。
そのため,読んでいる途中で,あの時自分はどう思っていたのだろうか?あるいは当時のガールフレンドはどういう風に感じていたのだろうか?という思いが何度も去来したということは告白しておかねばならない。私が過去の経験をいまだに引きずっているのは事実であり,それは一生消えることはないが,そうした感情を改めて呼び覚まされてしまったと言うべき作品である。そんな思いを抱えながら読んでいた作品ではあるが,上述の通り,この作品のラストにはほっとさせられる。自分だったらどうなってしまうかと,またも自身に再投影してしまうのだが,ここでは爽やかな余韻を楽しみながら,本を閉じることができたと思う。ストーリーに若干の瑕疵はあろうとも,この作品,私は好きである。
ということで,ついつい点も甘くなり,星★★★★★を謹呈してしまおう。
我ながら何だか赤面ものの記事を書いてしまったが,私をそうした行動に至らしめたのはまぎれもなく本作である。この記事を読んで,私の知人たちは「人は見かけによらない」と改めて思うかもしれないなぁ(苦笑)。
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