Allen Toussaintの遺作が渋い。
"American Tunes" Allen Toussaint(Nonesuch)
昨年惜しくも亡くなったAllen Toussaintの遺作アルバムである。デリバリーの関係で,リリースからちょっと間を置いて我が家に届いたのだが,これが非常に渋い。Joe Henryのプロデュースよろしく,タイトルに偽りなく,アメリカ的な響きが濃厚な音楽である。クラシック・ジャズ的趣も持ちながら,アメリカ音楽の懐の深さを改めて感じさせてくれる音楽となっている。Allen ToussaintとJoe Henryのコンビには"The Bright Mississippi"という傑作があった(記事はこちら)が,まぁ同一の路線と言ってもよい。但し,Joe Henryは"Where Mississippi was elegantand almost classical in its approach , American Tunes is visceral and earthy."と書いている。Visceralとは「本能的な,直観的な」という意味になろうが,若干解釈には苦しむところもある。いずれにしても,私としては,前作の続編という感覚で聞いた。
この音楽をどのようにカテゴライズするかは難しいのだが,ジャズ的なフレイヴァーが中心なので,一応ジャズのカテゴリーに入れてあるが,Duke Ellingtonの"Come Sunday"などは,Rhiannon Giddensの歌唱も素晴らしいが,完全にゴスペルの世界である。その一方で,最後に収められたPaul Simon作のタイトル・トラック(オリジナルは「ひとりごと」に収録)はSSWの世界と言ってもよい。Allen Toussaintの歌は,小唄と言ってもよいような,軽妙洒脱な歌唱ぶりで,非常に魅力的に響き,曲のよさを再認識させるに十分である。ワルツではない"Watlz for Debbie"なんてのも収録されている。
このアルバムの録音から約1か月後に亡くなってしまうとは,プロデューサーのJoe Henryにとっても予想外のことであったと思う。Joe Henryがライナーに書いているように,"So in the end I choose to feel, as I think Allen would insist, more greteful than sorry."ということで,Allen Toussaintという「知る人ぞ知る」の偉人に対し,感謝の念を捧げたい。星★★★★☆。
尚,Charles Lloydの客演は意外だが,彼の最新作"I Long to See You"ではルーツ・ミュージック的なアプローチを取っていたところから,ここでの演奏にも違和感は全くない。いかにもLloyd的な吹奏ぶりである。"I Long to See You"で共演したBill Frisell,Greg Leitz人脈での参加だったのかもしれないが,そんなに目立っているわけではないとしても,これも一つの聞きものと言ってよいだろう。
Recorded on May 20-21, 2013, October 1-3 & 5, 2015
Personnel: Allen Toussaint(p, vo), Jay Bellerose(ds, perc), Bill Frisell(g), Greg Leitz(weissenborn), Charles Lloyd(ts), David Piltch(b), Rhiannon Giddens(vo), Van Dyle Parks(p, arr), Adam Levy(g), Cameron Stone(cello), Amy Schulman(harp)
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