クソのようなラップによって台無しにされた大西順子の新作。
"Tea Times" 大西順子(Sony Music)
大西順子の新作がリリースされると聞いて,期待値を以てこの新作を聞いたリスナーは少なくないと思う。だが,私は菊地成孔がプロデュースをするという情報を得た段階で若干の不安を抱いていたのだが,今回はその心配が的中してしまったというところである。
私は大西順子のアルバムはほぼ保有しているはずだし,問題作だと言われた"Fragile"もこれはありだと思っていた。復帰後にリリースしたアルバムも高く評価してきたつもりである。だからこそ今回のアルバムには不安もありながら,期待してゲットしたのだが,そんな私の気持ちは8曲目の"Malcom Vibraphone X"で木っ端微塵に打ち砕かれたと言ってよい。
冒頭から,「今風」のRobert Glasper的な音なのはまだ許せる。しかし,"Malcom Vibraphone X"のラップは一体何なのか。リズムには乗れない。更には韻もまともに踏めないのでは,ラップとしての存在意義は全くない。これをポエトリー・リーディングとして開き直るのであれば,それはそれでありかもしれないが,こんな低劣なレベルの歌詞を見て,「詩」だと感じる人間がどれだけいるというのか。
ラップは9曲目の"U Know"にも入ってくるが,これなんて完全にRobert Glasperの焼き直し,あるいはレベルの低いコピーではないかとさえ言いたくなる。私の音楽的な嗜好は,一般の人より間口が広いと思っているので,ラップがダメとかいうことは一切ない(はずだ)。そんな私でもダメなのだから,このアルバムは相当罪作りだと言わざるをえない。とにかく,聞いていてのあまりに不愉快な感覚は,私の記憶にもないレベルのものであり,こんなクソのようなラッパーに参加させた菊地成孔の責任は重いし,それを許した大西順子の責任も否定できない。
正直言って,8曲目を聞いて,この曲をリピートしたいと思う人間がこの世の中にいるのかとさえ言いたくなる。あるいはそんな奇特な人がいるのであれば,会いたいもんだ。
7曲目までは相応に聞けると思ったが,8曲目を聞いただけで,私の不快感は限界を越えたと言ってもよい。正直,二度とプレイバックしたいと思わないだろうとさえ思えたのである。こんなクソ・ラッパーを呼んできたのは菊地成孔のはずであり,だからこそ彼の責任は追及しなければならない。 本当に8曲目があるだけで,このアルバムは完全にその存在意義を失ったと思える。
繰り返すが,Robert Glasper風味の大西順子ということであれば,相応に評価の余地もあるかもしれないが,今回ばかりはそんな気持ちにすら一切なれない。プロデューサーである菊地成孔,そして演奏者としての大西順子に猛省を促すためには,本作は無星とせざるをえない。それぐらい,私にとっては腹立たしい。本当に8曲目を聞いていて吐き気を催したのである。そういう事実を菊地も大西も理解すべきである。正直言って日本語はラップに乗りにくいかもしれない。だが,それが問題なのではなく,レベルの低いラップを共存させようとしたところで,そもそも発想が下品である。
こんなアルバム(と言うより"Malcom Vibraphone X")を聞いて,「これはいいや」と思うリスナーが本当にいるのか。つくづくそう思ってしまったが,まじでくだらない。本作は私がいくら大西順子を評価しているとしても,今後,プレイバックのためにCDプレイヤーに乗せることは,間違いなく少数だと思う。あ~あ。
駄盤は駄盤として放っておけばいいはずなのだが...。それすら認められないのは私の加齢による寛容度の欠如が理由かもしれないが,それはそれで仕方あるまい。
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こんばんは。お疲れ様です。
もともと日本語とラップは合いません
個人的には、英語発音風の日本語がダサくて気持ち悪いです
ギャグでライトな詩の感じならまだ救いはあると思いますが?
菊地成孔は
ジャズとヒップホップの融合をやったのはオレが先
みたいな事をぬかしてましたが
まともなジャズに戻った方がいいかもしれません
大西順子さんも新しいことをしたかったんでしょうが
ラップ自体が賞味期限切れだと私は思っています。
投稿: K | 2016年6月25日 (土) 02時46分
Kさん,おはようございます。
日本語のラップでも,私はもう少しましなものがあると思いますが,確かに合わないって言えば,その通りですね。
それにしても,1曲だけで聞く気が失せるというのも珍しいですが,いずれにしても,私はこのアルバムを評価できないですし,評価したくもないというのが正直なところです。
投稿: 中年音楽狂 | 2016年6月25日 (土) 09時38分
こんにちは、私は菊地成孔がプロデュースと言う時点で買う気が半分なくなり、ジャケットを見た瞬間、コレは間違いなく駄目だろうなと想像できたので買う事すらやめました。先ほどAmazonで試聴しましたが、これはやはり買わなくてよかったなと、、、おっしゃる通り8曲目、9曲目はぽかーんと言う感じでした。
何でこんなアルバムを出したのか不思議で仕方がありません、、、物凄く楽しみだったのに残念です。
投稿: tempo | 2016年6月26日 (日) 07時50分
tempoさん,こんにちは。はじめましてですよね。コメントありがとうございます。
私は某ショップのポイントが多少あったので,値引き価格での購入ではありましたが,これはやはりないと思います。特にラップが入る8~9曲目に関しては,同じように感じる方がいらっしゃって心強いですが,まぁ誰が聞いてもそうなりますよね。
A級戦犯は菊地成孔だとしても,本作は大西順子のアルバムとしては誠に残念なものと言わざるをえません。
ともあれ,引き続きよろしくお願いします。
投稿: 中年音楽狂 | 2016年6月26日 (日) 16時03分
未聴なのでこのコメントを読むと萎えますがあとでアップルミュージックで聴いてみます。確かBNTで復活ライブやった時に菊地が書いていたと思うのですが、満足のいくものを客に聞かせるだけ練習を確保出来ないとして引退宣言して辞めたのに、東京ジャズで楽しかったので復帰すると菊地にプロデュースを依頼。菊地はBNTのライブには間に合わないが何か変わったとこ見せないと引退撤回してすぐ復帰は関係者に失礼でしょうと悩んだ様子。大西順子って天然なんですかね。
投稿: カビゴン | 2016年6月27日 (月) 01時04分
カビゴンさん,こんばんは。
是非試聴されてから今一度コメントを頂ければと思います。私の言っていることが間違っているかどうかは,皆さんの判断に委ねますが,私にとっては駄目なものは駄目ってところです。
一度引退宣言をした大西順子を小澤征爾と村上春樹が引っ張り出したのは美談かもしれませんが,菊地成孔と組んだことで,間違いなく禍根を残したと思います。菊地雅章は信頼に値しても,同じ菊地でも菊地成孔は大違いだと言ってやりたいです。
投稿: 中年音楽狂 | 2016年6月27日 (月) 18時27分
やっぱり8-9曲目の日本語ラップに引っ掛かって、ちょっと評価が、、、というクチでした。他の曲は総じてけっこういい感じだったので、少々残念です。まあ、CDなら8-9曲目を除いて再生ということもやってくれるからいいのですが。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2016年6月30日 (木) 05時46分
910さん,続けてこんばんは。TBありがとうございます。
聞いていて不愉快になるっていうのはあまりないことですが,このアルバムの後半は許せません。スキップすればいいというよりも存在そのものが許せないと思っている頭の固い私です。
でもこんなものを許した大西順子も大西順子です。本当にがっかりさせられました。この罪は重いですよ。
投稿: 中年音楽狂 | 2016年6月30日 (木) 22時42分
8曲目、9曲目は確かに聴いている方が赤面して鳥肌立ちそうですが、全体的にも何でしょうね、もう大西順子ってobsoleteを感じてしまいます。まあ個人の主観的感想ですが。
投稿: カビゴン | 2016年7月 1日 (金) 10時46分
カビゴンさん,こんにちは。
彼女が「完全に」Obsoleteだとは言い切れないですが,ただこれは完全に何かを読み違えているという感じです。私は基本的に菊地成孔の責任だと思いますが,そのリリースを許してしまう大西順子のセンスはやはりずれているとしか言いようがありません。
投稿: 中年音楽狂 | 2016年7月 2日 (土) 14時36分
私もラップの箇所、残念感ありあり、でした。が、全般的には過去アルバムより、印象はいいです。
TB代わりに:
http://kanazawajazzdays.hatenablog.com/entry/2016/07/04/200531
記事でtoshiya氏の記事を引用。よろしくお願いします。
投稿: ken | 2016年7月 4日 (月) 20時12分
kenさん,おはようございます。リンクありがとうございます。
このアルバム,Glasperもどきなのは失笑ものでしたが,演奏は悪いとは思いません。しかし,このラップはいけません。こういうのを噴飯物と言いますね。本当にがっかりです。
投稿: 中年音楽狂 | 2016年7月 6日 (水) 07時43分
あなたさまのコメントを拝読して、納得できました。
WOW以来彼女の虜になり、今日にいたるも、あのラッパー以来、大西は、わたしにとって、大西でなくなりました。あの時のライブ、1st、2n
dと期待して行って、見事に打ち砕かれた。もう、元の彼女には戻らないでしょう。自分の行く方向も見失ってる感さえかんじます。狭間ミホのプロデュースも不要、大西が大西でいる理由は、彼女にしかない感性、才能のため、余計なものはいらない。
遅い、コメント恐縮です。ただ、あなたのブログを見つけて書きたくなりました。
投稿: ミケ | 2022年4月 5日 (火) 14時24分
ミケさん,はじめまして。
>あなたさまのコメントを拝読して、納得できました。
恐縮です。
>あのラッパー以来、大西は、わたしにとって、大西でなくなりました。
確かにあれはショッキングでした。ライブは行ってませんが,私はCDが許せず,もはや売却済みです。
>もう、元の彼女には戻らないでしょう。自分の行く方向も見失ってる感さえかんじます。
まぁその後のアルバムは許せるんですが,私は彼女のライブでのPAのセンスのなさや立ち振る舞いが好きになれず,もうライブに行くことはないと思います。
>大西が大西でいる理由は、彼女にしかない感性、才能のため、余計なものはいらない。
その通りですが,最近の彼女は意識過剰にも見えます。
>遅い、コメント恐縮です。ただ、あなたのブログを見つけて書きたくなりました。
滅相もありません。こんなブログでよろしければまたお越し下さい。
投稿: 中年音楽狂 | 2022年4月 5日 (火) 23時32分
私の駄文に対するレスをありがとうございます。とてもパワーをいただきました。 あのライブから、ショックが強く、一人悶々とする日々でした。、今頃になって、あなたの勇気ある痛烈な文章に出会い、ただただ救われました。実際、ライブ会場では、菊地成孔は、まえに一人出て、ノグソスタイルで妙な動きをしていたんです❗️これで、順子は終わった‼️でした。1995年から、ほとんどのライブを見てきている私には、その後の狭間さんとのコラボも噴飯もので、引退宣言後の松本記念から、メンタル的には、別世界の人、つまり有名人好きになってしまった、その根底は?とか思ったりもしますが、そんなことはどうでもよく、また、音楽は順子だけではないので、そこまでは追求しないことにしていました。残念極まりないですが。
本当に、中年音学狂様の表現は素晴らしかったです。心からお礼申し上げます。
投稿: ミケ | 2022年4月 6日 (水) 22時29分
ミケさん,こんにちは。
>私の駄文に対するレスをありがとうございます。とてもパワーをいただきました。
そう言って頂けると大変嬉しいです。
>あなたの勇気ある痛烈な文章
って言うか,まじで頭に来てましたね。
>その後の狭間さんとのコラボも噴飯もので、引退宣言後の松本記念から、メンタル的には、別世界の人、つまり有名人好きになってしまった、その根底は?とか思ったりもしますが、そんなことはどうでもよく、また、音楽は順子だけではないので、そこまでは追求しないことにしていました。
狭間美帆と共演したBlue Noteでのライブも私は見ましたが,その時も「狭間美帆まで呼んで,室内楽的なサウンドをライブの場で聞かせる意味は本当にあったのか?」なんて書いてますね。おそらくミケさんがお感じになったのと同様の感覚だったと思います。
>本当に、中年音学狂様の表現は素晴らしかったです。心からお礼申し上げます。
いえいえ,実にありがたいお言葉,こちらこそ御礼申し上げます。引き続きよろしくお願い致します。
投稿: 中年音楽狂 | 2022年4月 8日 (金) 17時37分