ECMらしい響きのDominique Pifarélyの新作アルバムはクァルテット編成。
"Tracé Provisoire" Dominique Pifarély Quartet (ECM)
Dominique Pifarélyと言えば,ECMレーベルにおける前作はソロ・ヴァイオリンであった(記事はこちら)。それから1年も経っていない短いインターバルで,新譜が出るということは,よほどManfred EicherはDominique Pifarélyという人を評価していることになるのだろうか?
音を聞けば,確かにECM的である。前作と異なり,今回はピアノ・トリオを従えたクァルテット編成であるが,そこはECM,コンベンショナルなジャズ的な響きを持つわけもなく,まさにジャズと現代音楽の間を行くような音楽と言ってもよい。これまたECM的と言うか,ビートの明確な曲もあれば,フリーなアプローチの曲も混在しており,やっぱりECMなのである(笑)。
Dominique Pifarélyのサイト情報によれば,彼らは2014年春から,この編成で演奏をしているようなので,ここで聞かれる音楽は一回性のものではなく,通常からやっているってことになるが,美的な感覚というよりも,スリリングな音楽性の方が強調されているように思える。特筆すべきはDominique Pifarélyのヴァイオリンの音のよさである。それがフリー的な展開,あるいはビートに乗っても,緊張感に溢れた演奏が展開されている。
もちろん,音楽としては一般的なものとは言えないので,通常のジャズ・ファンには受けるものではなかろうが,現代音楽に親しんでいるリスナーであれば,抵抗なく受け入れられる可能性はある。しかし,やっぱりこれはECMレーベル・ファン向きの音源ってのが正直なところである。ハードルは決して低くないが,私は結構楽しんだと言っておこう。星★★★★。
Recorded in July 2015
Personnel: Dominique Pifarély(vln),Antonin Rayon(p), Bruno Chevillon(b), François Merville(ds)
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ベーシストの名前は前から知っていて、このメンバーか、と感心しました。変拍子もあったり記譜されていると思われるところとフリーな部分の塩梅も良く、個人的には好きなアルバムです。でもやはり聴く人を選ぶアルバムになるんだろうなあ、と思います。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2016年7月 8日 (金) 22時44分
910さん,こんばんは。TBありがとうございます。
私もBruno Chevillonは知ってます。誰のアルバムだったか記憶は定かではないですが,彼が入っていたはずです。まぁそれはさておきとして,フランスのジャズって,同じラテン系でもイタリアと全然違うのは笑えます。頭の構造が違うんでしょうね。
本作もしょっちゅう聞きたいと思うようなものではないですが,悪くないと思いました。単にECM好きだからですかねぇ(笑)。
投稿: 中年音楽狂 | 2016年7月 8日 (金) 23時26分