これは渋い!Abbey Lincolnの遺作アルバム。
"Abbey Sings Abbey" Abbey Lincoln(Verve)
先日,Pat Methenyのライブの帰りに,久々に寄せてもらった高田馬場のMilestoneで聞いた瞬間しびれてしまったアルバムである。とにかく渋い。
Abbey Lincolnって人は,私にとっては縁遠い人である(笑)。Max Roachの"We Insist"みたいなアルバムに参加していることから,勝手にこっちが身構えてしまうのであるが,ここで聞かれる歌唱は,伴奏からもルーツ・ミュージックと言ってよいようなものなのである。これまでちゃんとAbbey Lincolnの音楽を聞いてこなかった私が悪いのだが,これには完全にこっちの勝手の思い込みを覆されたと言ってよい。
冒頭の"Blue Monk"以外は,タイトル通りAbbey Lincolnのオリジナルとなっているが,私は"Blue Monk"だけでまいってしまったと言ってよい。これは伴奏が私の趣味に合致しているところもあるのだが,それに加えてAbbey Lincolnの歌唱には真のソウルを感じさせるものとなっていて素晴らしいのである。
このアルバムに貢献度が高いのはギターを弾いているLarry Campbellだと思うが,彼のこれまでのBob DylanやLevon Helmたちとの楽歴を考えると,Abbey Lincolnとの共演は意外のようにも思えるが,このフィット感は半端ではない。テンポを上げるわけでもなく,極めて淡々と歌っているようにも思えるが,とにかく渋い。ある意味,Billie Holiday的な歌唱とも言えるが,Larry Campbellのギターを中心とするバッキングにより,Billie Holidayとは違う世界を築いているように感じられる。
とにかく,これは驚きのアルバムであったわけだが,世の中にはまだまだいい音楽があるんだねぇということを改めて痛感させられたアルバム。星★★★★☆。
Recorded on September 25-27 and November 17, 2006
Personnel: Abbey Lincoln(vo), Larry Campbell(g, mandolin), Scott Colley(b), Shawn Pelton(ds), Gil Goldstein(accor), Dave Eggar(cello)
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