Milesを素材に使ったRobert Glasperのアルバム
"Everything Is Beautiful" Miles Davis & Robert Glasper (Sony)
このアルバム,Miles Davis & Robert Glasper名義になっているが,これは完全にRobert Glasperのアルバムとして聞くべきものであるということは,まず最初に言っておかねばなるまい。確かにMilesの声や音楽がサンプリングされて使われているが,それはあくまでも「素材」でしかなく,双頭名義にするのは行き過ぎの感じがする。その点については批判は免れないところであろう。
だが,その点を除けば,このアルバムはいつものようなRobert Glasperのアルバムとして楽しめる。まぁ言ってしまえば,"Black Radio"のノリで楽しめるということである。ヴォーカリストやゲストの使い方も適切なもので,比較的ゆるいグルーブ感の中で,心地よく時間が経過していくのである。
確かにMilesは素材として使われているが,むしろそんなことに捉われないで聞いた方がずっといいと思えるアルバムである。一方,ここに「商売」の匂いを感じ取るリスナーからは厳しい目を向けられることになると思う。だからこそ,私はMiles Davisに関しては,ここでは完全に無視して聞くべきだと思うのだ。
私としても,ここには相当の商売っ気を感じてしまうので,純粋に音楽だけで評価できなくなってしまっているのは事実だが,Miles Davisという名前を気にせず聞けばよいということにしておこう。でもやっぱりこれはGlasperのアルバムであって,Miles Davisの名を冠するべきではなかったというのが実感。純粋な音楽としては嫌いではないので,星★★★★なのだが,Milesの名を冠する姿勢そのものを評価できず,半星減点して星★★★☆。
Personnel: Robert Glasper(p, key, perc), Derrick Hodge(b), Bilal(vo), Illa J(vo), Danny Leznov(g), Erykah Badu(vo,perc), Braylon Lacy(b), Rashad Smith(perc), Phonte(vo), Burnis Earl Travis(b), Bianca Rodriguez(vo), Hiatus Kaiyote(all instruments), Nai Palm(vo), Laura Muvra(vo), Kyle Bolden(g), King <Amber Strother(vo), Anita Bias(vo), Paris Strother(vo)>, Georgia Anne Buldrow(vo), Ledisi(vo), John Scofield(g), Stevie Wonder(hca), DJ Spinna(ds prog, perc), Chrisi Rob(vo, p, el-p, synth), Lakecia Benjamin(ts, as), Brandee Younger(harp)
« 今日聞いているのはMike MainieriとWarren Bernhardtのデュオ | トップページ | Yesが好きな私でも,到底耐えられない「老害」以外の何ものでもない音源。 »
「ソウル/R&B」カテゴリの記事
- フィジカルでリリースされないのが惜し過ぎるLizz Wrightのライブ音源。(2023.01.25)
- John Legendのゴージャスで楽しいホリデイ・アルバム。(2022.12.17)
- Supremes:今日は懐メロ(笑)なんだが,結構不思議なコンピレーション。(2022.12.14)
- Roberta FlackがALSで闘病中と聞いて,彼女のアルバムを改めて聴く。(2022.12.09)
- Jimmy Scottの歌いっぷりにやられる...。(2022.11.11)
「新譜」カテゴリの記事
- Ralph Townerの新作が届く。実に素晴らしい。(2023.03.20)
- 来た!クリポタの新作はアコースティック・クァルテットによるVanguard Live。(2023.03.02)
- 強烈なIggy Popの新作。ほんまに後期高齢者?(2023.03.01)
- Brad Mehldauの新作が届く。ほぼBeatlesで固めているので,紀尾井ホールでのライブの感覚とは異なる。(2023.02.12)
「ジャズ(2016年の記事)」カテゴリの記事
- 2016年の回顧:ジャズ編(2016.12.30)
- ジャズ界の若年寄,Scott HamiltonのFamous Door作。懐かしいねぇ。(2016.12.23)
- 2016年の回顧:ライブ編(2016.12.19)
- 中年音楽狂のNYC夜遊び日記(番外編):クリポタとの遭遇(2016.12.14)
- 中年音楽狂のNYC夜遊び日記(3):最後の夜はWayne Krantz@55 Bar。(2016.12.13)
コメント
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: Milesを素材に使ったRobert Glasperのアルバム:
» Robert Glasper: Everythings Beautiful (2016) 楽しめるアルバム(だけど) [Kanazawa Jazz days]
サン・フランシスコのホテルで休憩中。少し横になったら、楽になった。レコードでも見に行こうかと思う。
BGMでかけているのは、apple musicで全曲聴くことができるようになったRobert GlasperのEverythings Beautiful。
Columbaに残されたマイルス・デイビ...... [続きを読む]
» 梅雨も真夏も『Everything's Beautiful / Miles Davis [My Secret Room]
ジメジメじとじとの梅雨の不快さを一気に飛ばす必須アイテムが『Everything [続きを読む]
« 今日聞いているのはMike MainieriとWarren Bernhardtのデュオ | トップページ | Yesが好きな私でも,到底耐えられない「老害」以外の何ものでもない音源。 »
これMiles Davis は必要ないですね。
Robert Glasperの名で十分売れると思いますが。
個人的にはjazzとラップを混ぜるみたいのが好きになれません
菊地成孔もjazzとラップを混ぜていますが
日本語ラップは陳腐に聞こえますw
ああRobert Glasperだな~てアルバムですね
Stevie Wonderのハーモニカが聞けたから良し?とします?w
投稿: K | 2016年5月31日 (火) 03時19分
Kさん,続けてこんばんは。
おっしゃる通り,Milesの名前を使うことはある意味詐欺的です。サンプリングを使ったトリビュートとでも言えばよかったのにねぇと思います。
そうしないところに商売っ気を感じるわけですよね。演奏自体は嫌いではない(というより結構好き)なだけに,もったいないように思います。
因みに,私はラップはあまり気にしません。うまくいっていれば,の話ですが(笑)。
投稿: 中年音楽狂 | 2016年5月31日 (火) 18時54分
まったく同感です。普通にいいアルバムだけど、マイルス?って感じです。
マイシャくらいかなあ、ふっと感じたのは。感じた瞬間、グラスパのキーボードはジャマだったけど。
そんな小細工なしに、楽しめる部分のほうが多いと思うのですが。
apple musicで聴いたので、安くなったら買おうと思っています。
投稿: ken | 2016年6月 2日 (木) 18時54分
kenさん,おはようございます。TBありがとうございます。
おっしゃる通り,音楽としては普通に楽しめます。だからこそ逆に商売っ気が鼻につくんだと思います。やっぱりMiles & Glasperはないです。
ということで追ってTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2016年6月 3日 (金) 07時40分
閣下、トラバありがとうございました。
私はマイルスの名前はタイトルの方にあればよかったんだとはおもいますが、基本的には皆さまのように気になりませんです。
ラップも得意分野ではないのですが、これはすっごくキマってるとおもいましたし、、。
何も考えず、彼のふんわりゆるいグルーブにのって天国気分を味わえばいいかな、、と、感じてます。
投稿: Suzuck | 2016年6月20日 (月) 09時04分
Suzuckさん,こんばんは。TBありがとうございます。
Suzuckさんは私なんかと違って,ミュージシャンにお優しいのです。私もこのグルーブは好きなんですよ。でも,商売っ気を出し過ぎるのはいかがなものかというのは実感ですね。
せっかくいい音楽をやっていても,「感じ悪い」ってだけで損ですね。こういうことを続けるとファンでも心は離れると言っては言い過ぎですかね。まぁ,次も買うでしょうけど...(苦笑)。
投稿: 中年音楽狂 | 2016年6月20日 (月) 20時23分