Butch Miles:この軽快なスイング感はやっぱりいいねえ。
"Miles and Miles of Swing" Butch Miles(Famous Door→Progressive)
先日も本作のリリースについては記事にしたが,改めて聞いてやっぱりこれはいいと思えたので,またも記事をアップである。再発盤であるが,この機会を逃すと入手は困難化するとも思われるので,新譜扱いとさせて頂き,推薦させて頂こう。
Butch Milesと言えば,Count Basie Orchestraでの活動が一番有名だろうが,Basieのバンドを猛烈にドライブさせたドラマーであることは間違いない。よって,Butch Milesが参加したBasieのアルバムは総じて評価が高い(と言っても,私はMilt Jacksonとの共演盤しか保有していないが...)。そのほかにはDave Brubeckのバンドにもいたことがあり,そこではJerry Bergonziとの共演が聞けてしまうのだ(アルバム"Back Home")。いずれにしても,強烈なスイング感を持つドラマーであることは間違いない。
そのButch MilesがFamous Doorに吹き込んだアルバムがこれである。やっているのはスタンダード中心であるが,Basieゆかりの曲もやっている。冒頭の"Cherokee"はゆったりしたテンポから始まって,一瞬おぉっと思わせるが,テンポ・アップしてからのノリが何とも素晴らしい。"Take the A Train"も結構ゆったりしたテンポなのだが,それに続くBasieナンバー,"The King"こそ,Butch Milesのスイング・ドラムスが炸裂である。いかにもBasieらしいリフからなだれ込むButch Milesのドラムス・ソロには興奮しちゃうよねぇ。
アルバムそのものはモダン・スイングであるが,ここで目を引くのがScott Hamiltonだろう。ここではAl Cohnとの2テナーであるが,録音時にまだ20代前半とは思えぬ吹きっぷりには驚いてしまう。1970年代後半はジャズがやや低迷していた時期と言ってもよかったかもしれないが,そういう時代にこういう,当時どちらかと言えば古臭いと思われるような感じのプレイをする若者が登場したということで話題になったことも懐かしい。私はこういう音楽を決して古臭いと思わないが,刺激的ではないのは確か。だが,こうした演奏から得られる軽快なスイング感やリラクゼーションは心地よさの極みなのだ。
このアルバムがリリースされた頃は,私は高校生だったわけだが,どうしてこういうレコードを買おうと思ったかの記憶は定かではない。だが,当時から父親が保有していたEddie Condonの日本のライブ盤なんかも結構いいなぁなんて思う,若年寄的なところもあった私である。その一方で,プログレとかアメリカン・ロックとかも聞いていたわけで,今にして思えば,さっぱりわけのわからない高校生であること甚だしい(爆)。
それから歳月は流れたが,今やオッサンと化した私にとって,このアルバムの心地よさは増すばかりである。もちろん,刺激の強い音楽だっていまだに好きだが,たまにはこういうのも必要なのである。やっぱりこのアルバムはFamous DoorレーベルのアルバムではZoot Sims盤の次に好きなアルバムである。これはほんまにええですわ。星★★★★☆。
ただ,難癖をつけさせてもらうならば,ブックレットの裏表紙の文字が欠けているのは超ダサい。デザイン的に画竜点睛を欠くとはこういうこと。私も細かいねぇと思いつつ,こういうところにちゃんと目配りしないとね。
Recorded in Fall, 1977
Personnel: Butch Miles(ds), Al Cohn(ts), Scott Hamilton(ts), Marky Markowitz(tp, fl-h), John Bunch(p), Milt Hinton(b)
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