Michel Benitaのアルバム:最近こういう音楽はECMではあまり聞いていないような...。
"River Silver" Michel Benita Ethics(ECM)
このアルバム,非常に面白い。まず,バンドの編成がフリューゲルホーン,箏,ギター,ベース,ドラムスなのだ。これからしてどんな音が出てくるかと思うが,箏はことさらオリエンタルな響きを出すというよりも,もう一本の弦楽器,あるいはバックに回ると,シンセの代替的な感じがする。だから,箏が入っているからと言って,身構える必要は全然ないような音楽なのだ。
曲は決してハードではないのだが,決して古臭さを感じさせない,コンテンポラリーな感覚を持っている。そして,サウンドはアルバム・タイトルからも感じさせるように,緩やかな川の流れのようでもある。起伏は激しくなくとも,それに身を任せていれば時間が経過していくような音楽と言えばよいだろうか。
昔だったら,ECMレーベルには結構こういうタイプの音楽があったように思えるのだが,昨今ではこうした感じの音楽が少なくなったいたようにも思える中で,なんとなく懐かしささえ感じさせると言っては言い過ぎか。それでも,このレーベルの音楽を好むリスナーにとっては,こうしたサウンドは全然抵抗がないはずだ。私なんかにとっては,ある意味心地よささえ感じさせるものと言っても過言ではない。特に,Matthieu Michelのフリューゲルは本当に心地よい。メロディ・ラインもある程度しっかりしているので,アンビエントという感じでもないが,それでもアンビエント的なところも感じさせるという実にユニークな音楽だと思う。
いつも書いているようなことになるが,ジャズにスリルを求めるリスナーにとってはなんじゃこれは?にしかならないが,心を広く持てば,こういう音楽は十分楽しめるし,心に穏やかさを与えてくれる。そんな音楽である。ちょっと甘いが,私の好みと合致していることもあり,星★★★★☆としてしまおう。
尚,7曲目のタイトルは「八月」のことと思うが,"Hacihi Gatsu"と記述されているのはご愛嬌。
Recorded in April 2015
Personnel: Michel Benita(b), Matthieu Michel(fl-h), Mieko Miyazaki(箏), Eivind Aarset(g, electronics), Phillipe Garcia(ds)
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ありそうで最近は少なくなってしまった、往年の聴きやすい方のECMサウンドって感じは、私もしました。それがエンリコ・ラヴァだったのかケニー・ホイーラーだったのか、それとも他のミュージシャンだったのかは記憶に定かではありませんが。
メンバーも興味深いですけど、こういう路線でもっとアルバムが出てくれれば、と思います。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2016年3月20日 (日) 15時57分
910さん,こんにちは。TBありがとうございます。
私が思い出していたのは,ちょっと感じは違いますが,Rainer Bruninghausとかでしたが,そう言えば,Kenny Wheelerのセッション系のアルバムもそういう雰囲気を持っていたような気がしますね。
いずれにしても,これは好きなタイプの音源でした。私もこういうのはいつでも歓迎しちゃいますね。
投稿: 中年音楽狂 | 2016年3月20日 (日) 17時33分