コンベンショナルな響きのSteve Kuhnもまたよし。
"At This Time" Steve Kuhn Trio (Sunnyside)
Steve Kuhnという人は面白い。耽美的なピアノを聞かせたと思えば,コンベンショナルでスインギーなピアノを聞かせることもある。どちらもKuhnの個性であることは間違いないが,このアルバムは完全に後者に属するものである。冒頭の"My Shining Hour"から絶好調というか,何ともジャズ的な響きのSteve Kuhnの演奏が楽しめる。
Steve Kuhnは今年の3月で78歳になるわけだが,先日紹介のCharles Lloydといい,Steve Kuhnといい,全く「老い」を感じさせないのはまさに驚異的としか言いようがない。Steve Swallowだって75歳だし,彼らに比べれば若いと思えるJoey Baronだって,もはや還暦を迎えているのだ。恐るべし。
Steve Swallowはいつも通り,エレクトリック・ベースを弾いているが,一般的な4ビートの演奏スタイルでベースを弾いていて,確かに音はエレクトリックではあるが,フレージングとしてはジャズ・ベースの王道に従ったものって感じで弾いている。KuhnとSwallowは共演経験も多いから,よほど相性がいいのだろうが,ここでもJoey Baronのプッシュを得て,ナイスな演奏を展開しているのが何とも嬉しい。2012年に同じメンツでECMに吹き込んだ"Wisteria"がトリオとしての初共演だったらしいが,同じメンツで吹き込むということはやはり感じるところがあったのだろうし,それがちゃんと演奏としての成果につながっていると思える。中でも私がしびれてしまったのがQuincy Jonesが書いた映画「質屋」のテーマである"The Pawnbroker"である。ここで繰り出されるKuhnのフレージングが何とも心地よく,ジャズ・ピアノかくあるべしとさえ言いたくなるような気品に溢れた演奏である。
Steve Kuhnの多様性を無視して,耽美的な彼のピアノが好きなリスナーにとっては,ややコンベンショナルに過ぎる部分もあるようには思えるが,これも彼の一面なのである。Birdlandでのライブを経て,レコーディングに至った本作は,ライブで培ったコンビネーションがそのままいいかたちで表れた結果,レコーディングは3時間とか3時間半とかで終わってしまったらしい。やっぱり大したもんだよねぇ。星★★★★☆。とにかく心地よく約1時間を過ごすことができるナイスなアルバムである。
Recorded on August 7, 2015
Personnel: Steve Kuhn(p), Steve Swallow(el-b), Joey Baron(ds)
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まさにジャズの王道を行くっていう感じで、楽しんで聴けました。渋めの曲もあったりして、変化もついていて、このトリオ、年齢の割に恐るべし、と思いました。またこのメンバーで録音してくれないかな、と思います。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2016年2月13日 (土) 16時37分
910さん,こんばんは。TBありがとうございます。
歳を取っても素晴らしい演奏を展開していて嬉しくなってしまいますよね。相性のよさは明確ですし,彼らも自覚していると思いますので,まだ次もあると思えます。レーベルはどこからかわかりませんが,レーベル次第で音楽も変えてくるようにも思えます。
投稿: 中年音楽狂 | 2016年2月14日 (日) 00時24分
漸くApple MusicにUploadされたので聴いてみました。これは名演奏ですね。Joey Baronが引き締めてるのか、Steve Kuhnの音もキリッとした感じです。Kuhnおなじみの曲も多く収録していますが、今回は特に切れがあり音が立っていると感じました。
投稿: カビゴン | 2016年3月29日 (火) 14時18分
カビゴンさん,続けてこんばんは。
まぁ,彼らの年齢を考えると,この演奏はかなり凄いのではないかなぁなんて思いますね。Joey Baronがいいカンフル剤って気がします。
投稿: 中年音楽狂 | 2016年3月29日 (火) 23時46分