RCAからリリースされたManfred Eicherプロデュース,Keith Jarrett伴奏によるヘンデルのリコーダー・ソナタ
"Handel: Recorder Sonatas" Michala Petri & Keith Jarrett(RCA)
随分前のことになるが,このブログでKeith Jarrettが弾くヘンデルの鍵盤組曲をほめたことがある(記事はこちら)。そこに聞かれるのは軽快な感じのヘンデルであって,こういうのってなかなかいいよねぇと思っているのだが,そのアルバムを聞く契機になったのが実は本日ご紹介のアルバムであることはそっちの記事にも書いた。
そもそも私はヘンデルの音楽がかなり好きなクチなので,大概はOKみたいになってしまうのだが,ここでの演奏の心地よさは抜群である。Keith Jarrettのハープシコードが出しゃばらないで,楚々とした伴奏に徹しているのも心地よい。そして,ここでも感じられる軽快さは,デンマーク出身のMichala Petriがモダン・リコーダーを吹いているからという気がしないでもない。いずれにしても,クラシック音楽のファンでなくても,この心地よさは理解してもらえるはずである。
このアルバムを私が改めて(かつ唐突に)取り上げるのは,(前々からわかっていたことなのだが,)RCAレーベルへの吹き込みであるにも関わらず,ECMの総帥,Manfred Eicherがプロデュースしているからである。EicherがECM以外でどれぐらいプロデュース経験があるのかはわからないのだが,今ならECM New Seriesで出しているはずのこうしたレコーディングが,RCAから出たのは非常に不思議な感じがする。そもそも,このアルバムがリリースされた時にもNew Seriesはあったはずである。もちろん,Michala Petriが当時RCA専属だった(であろう)からという理由もあるかもしれないが,それでも敢えてEicherがプロデュースしたということは,Eicherが彼女を相当高く評価していたからだと考えるべきではないかと思えてくるのだ。そして,録音されたのはKeith Jarrettの個人スタジオであることを考えれば,Keith経由で彼女を知ったEicherがプロデュースも買って出たってところか。
いずれにしても,現在であれば,間違いなくECM New Seriesから出ても何の不思議もない演奏である。そして,すこぶる出来がよく,ここでのKeith Jarrettの伴奏のうまさは特筆ものである。彼とヘンデルは相性がいいのかもなぁと改めて思った一枚である。私のヘンデル好きともマッチしてこれはかなり好きだなぁってことで,星★★★★☆。
Recorded on June 1-3, 1990
Personnel: Michala Petri(recorder), Keith Jarrett(harpsichord)
« なんだかんだ言いながら買ってしまう上原ひろみなのだが...。 | トップページ | 非常にユニークなワインの話 »
「クラシック」カテゴリの記事
- 人生初の声楽リサイタルを聞きに,お馴染みイタリア文化会館に出向く。(2025.02.02)
- またもブート(まがい)の話:今度はBernsteinのマーラー5番。(2025.01.22)
- Martha Argerichが弾くリスト。強烈としか言いようがない。(2025.01.20)
- 今年最後の音楽記事は,残念ながら来日できなかったHilary Hahnの無伴奏ヴァイオリン。(2024.12.30)
- 2024年の回顧:ライブ編(2024.12.17)
初めまして。いつもブログの更新を楽しみにしています!ニューヨークのジャズ情報など、貴重な情報をありがとうございます!今回のアルバムも中年音楽狂さんが、紹介して下さらなくては知らなかった良盤でした!
投稿: 大久保 | 2016年2月25日 (木) 09時20分
大久保さん,はじめまして。コメントありがとうございます。また,過分なお言葉を頂きまして誠に面映ゆい限りです。
音楽的には雑食であるがゆえにいろんな音源を取り上げていますが,クラシックはアップする記事が少ない中,今回のようなコメントを頂くと本当に励みになります。こちらこそ感謝申し上げます。
こんなしょうもないブログですが,引き続きご愛顧頂ければ幸甚です。
投稿: 中年音楽狂 | 2016年2月25日 (木) 23時37分