なんだかんだ言いながら買ってしまう上原ひろみなのだが...。
"Spark" 上原ひろみ(Telarc)
いきなりではあるが,私は上原ひろみを全面的に支持しているわけではない。彼女が「参加」したStanley Clarkeのアルバムがグラミーを受賞した際に,アホなメディアに踊らされて,あたかも自分が受賞したかのような調子でインタビューに答えているのには辟易とさせられた時の印象が悪いってこともあれば,アルバムも大体買うものの,いつもの調子って感じの一本調子感は否めないので,別に私は彼女の音楽には思い入れはほとんどないと言ってもよいのだ。だったらなんでわざわざCDを買うのよという反応が返ってくることは間違いないが,メンツを固定したTrio Projectの演奏においては,いつものように私はSimon Phillips買いなのである。
今回も,変拍子ビシビシの強烈な演奏が繰り広げられていて,あぁ,いつものTrio Projectだねぇと思うわけだが,"Alive"でも同じようなことを書いたように,もはやこれってプログレの世界だよなぁと今回も思ってしまった。相変わらずリスナーを圧倒するテクニック,スピード感は彼女ならではの魅力と言ってもよいし,これならばロック好きのリスナーも囲い込めると思うのは事実である。私のような雑食系音楽リスナーはロックであろうが,なんだろうがわけ隔てがないので,こういう音楽も全く問題なく受け入れられることは間違いない。だが,いつも思うのは,どうしても私は上原ひろみの没入することができないということだ。あぁ,今回も凄いのねぇと思うわけだが,高揚感をおぼえることはまずないと言ってもよいだろう。これだけの音楽を聞いていても「燃えない」のである。
これはもはや私の音楽的な嗜好とのアンマッチなんだろうなぁと言わざるをえず,例えば,どうしてもTigran Hamasyanが好きになれないのと同じ感覚である。Tigran Hamasyanほどの拒絶感はないが,上原ひろみの音楽にはやっぱりのめり込めないというのは今回も同じであった。まぁ,よくやるわぁ,うまいわぁ,激しいわぁという感覚はあるから,感心はしているのだが,もうお腹いっぱいって感じである。私はTigran Hamasyanのアルバムはもう買わないと決めた(だから,彼がECMからアルバムをリリースしても,それは買っていない)が,上原ひろみもこれで打ち止めかなと思ってしまう。でもなぁ,結局Simon Phillipsとやっている限り買い続けてしまうのかもしれないが...(苦笑)。星★★★☆。
Recorded on October 9-12, 2015
Personnel: 上原ひろみ(p, key),Anthony Jackson(b), Simon Phillips(ds)
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この人については同感で、買ってないなあ。サイモン好き、でもないし。鍵盤叩く速さほど、スリリングじゃないなあ感です。かつてのリッチーコールのアルトとおなじ。
アルメニアの彼は好きですが(笑)
投稿: ken | 2016年2月24日 (水) 01時00分
kenさん,こんばんは。おっしゃることはよくわかります。Richie Coleと同じと言われたら上原ひろみは何というでしょうねぇ(笑)。
Tigranは私の場合,生理的に駄目です。Lionel Louekeと一緒です(爆)。そういう意味ではまだ上原ひろみの方が受け入れ可能です。まぁ,人それぞれってことで(笑)。
投稿: 中年音楽狂 | 2016年2月24日 (水) 20時33分
自分は彼女のアルバムが出ると最近はその年のベスト3に入れてしまうほどの上原ひろみフリークではありますが、やはりそのサウンドは売れていてもクセがあり、好き嫌いは、ある程度分かれるんじゃないかと思います。どジャズからするとかなり外れてますし。ただジャズ以外のファンを巻き込んで売れているので、もしかすると、かなり独自なところでファン層があるのかなあ、と思ったりしています。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2016年2月24日 (水) 21時00分
910さん,こんばんは。TBありがとうございます。
910さんが上原ひろみをお好きなのがわかっていましたので,私のアンチとも言えそうな記事はちょっと気になるわけでして...。私は雑食音楽リスナーなので,普通だったらこういう音楽って好きそうなもんだと思うんですが,どうしても合わないってところですね。
まぁ,素人のブログゆえ,好き嫌いで書いて何が悪いと開き直れますが(爆)。
投稿: 中年音楽狂 | 2016年2月24日 (水) 21時45分
こんにちは。
私も彼女のアルバムが出るたびに買ってしまうクチですが、同一メンバーで4作目となると、聴くほうも慣れみたいなのが出てきますよね。どこかで聴いたフレーズや展開が出てくると、それでうれしく感じるか、おや?なんだかな~、と感じるかの差ではないかと思います。私は後者なんですが。
次作がどういうメンツで臨むかが問題ですが、私もSimon Phillipsが参加したらやはり買ってしまうのでしょうね(笑)
TBさせていただきます♪
投稿: 奇天烈音楽士 | 2016年2月27日 (土) 11時22分
奇天烈音楽士さん,こんにちは。TBありがとうございます。
私は上原ひろみがやっていることは大したもんだなぁと思いつつ,高くは評価できないんですよねぇ。うまいのはもうわかりました,ってことに加え,やっぱりどこかで聞いたようなフレーズが出過ぎではないかなと思います。いつもの味も,そればかりだと辟易としてきます。
これからも活躍していくためには,多少の変化も求められていくのではないかと思えます。そうでなければ,きっと飽きられますよね。
投稿: 中年音楽狂 | 2016年2月27日 (土) 15時50分