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カテゴリー「ジャズ(2015年の記事)」の記事

2015年12月30日 (水)

2015年の回顧:音楽(ジャズ)編

10_years_solo_live いよいよ今年の回顧も最後になった。ということで,私にとって最も購入枚数が多いジャズのカテゴリーであるが,このブログを定期的にご覧になっている方には既に明らかになっていることだと思うが,今年の最高作はBrad Mehldauの"10 Years Solo Live"以外にないというのが私の結論である。多くのブログのお知り合いの皆さんも認められている通り,LPにして8枚,CDにして4枚というボリュームにもかかわらず,一度聞き始めるとやめられなくなるという,危ない魅力に満ちたアルバムであった。彼のピアノから生み出されるフレーズは,非常に魅力的であるとともに,テーマに応じた選曲も,よくプロデュースされているという感覚を生み出し,私は一瞬にしてこの音楽の虜となったと言っても過言ではない。長年,私はBrad Mehldauの追っかけをしているが,彼のピアニストとしての技量は元から高かったことは当然なのだが,このアルバムを聞いていると,また一段飛躍したと感じる人は多いのではないだろうか。いずれにしても,10年に渡って,録音していてくれていたことに感謝するリスナーは多いはずである。本当に素晴らしいアルバムとして,万人に推奨したい。

Meridian_suite あまりにMehldauのアルバムが凄過ぎたので,本来なら#1としてもよかったアルバムが,下にずれたという感がある。私が聞いたジャズ・アルバムの中で,興奮度という観点ではAntonio Sanchezの"The Meridian Suite"にとどめを刺す。このアルバムを聞いた時の高揚感は,ジャズという音楽が生み出す熱狂という感覚を思い出させるものであり,これを聞いて燃えないリスナーは潜りだとさえ言いたくなる。「バードマン」のサントラもいい仕事だったが,やはり評価するならば"The Meridian Suite"であろう。来日公演はSeamus Blakeではなく,Ben Wendelがトラで入っていたが,その時は前作までのレパートリーが中心であった。無論,ライブでこんな演奏をされたら悶絶確実であったが...(笑)。

Break_stuff例年のように,ECMレーベルにもいい作品が多かったが,1枚を選ぶということならば,Vijay Iyerの"Break Stuff"ってことになるだろうか。記事にも書いたが,「知性を感じさせる理知的な響きと,ジャズの持つスリリングな部分が丁度いい具合にリンク」されているところが何とも刺激的なのである。そのほかにもECMには,Keithのソロ作やクリポタのUnderground Orchestra,Jack DeJohnetteの正調フリー・ジャズ,更にはGiovanni GuidiやらStefano Battaglia等,いい作品が目白押しであり,Manfred Eicherへの信頼は年々増していく結果となってしまうのである。いずれにしても,凄いプロデューサー,そして凄いレーベルである。

Tokyo_adagio今年は発掘音源にもいいものが多く,Sonny RollinsのVillage Gateでのライブの集成盤もよかったが,それよりも何よりも,静かな感動を呼び起こしたCharlie Haden~Gonzalo Rubalcabaの"Tokyo Adagio"である。美的という言葉がこれほどしっくりくるアルバムはないと思っているが,まさに超絶的に美しいアルバムである。Gonzalo Rubalcabaというと,テクニック主導みたいな感じがする人だが,それだけではないということを見事なまでに実証したアルバム。こんな美しい作品が東京で生まれたということ自体を奇跡と呼びたい。よくよく見たら,ジャケに写っているのは屋形船であり,あ~あと言いたくなるようなセンスになりそうなものだが,それすらもこのアルバムにフィットした感じのデザインに仕上げたことも評価したい。

Jos_james 最後に,私はいつも書いているように,ジャズ・ヴォーカルについてはよい聞き手ではないが,José Jamesの"Yesterday I Had the Blues"は非常に優れたBillie Holidayトリビュートとして見逃せない。同じ趣旨のアルバムはCassandra Wilsonもリリースしていて,そちらはそちらで優れたアルバムではあったのだが,バックの好演やアルバム全体の質からすれば,José Jamesのアルバムの方を高く評価したい。

そのほかにも高く評価したアルバムはいくつもあるが,今年のベスト作ということになると,上述の5枚ということにしておこう。ということで,今年のジャズ界もいいアルバムに恵まれていたと思うが,来年は一体どうなるのだろうか?私のApple Musicへの依存度はますます高まること必定であり,新譜について書く機会は更に減ってしまうかもしれないが,まぁそれはそれで時代の流れということにしよう。

2015年12月27日 (日)

2015年の回顧:ライブ編

Brad_mehldau_blue_note昨今はApple Musicの利用により,CDの購入枚数が減少していることは既にこのブログにも書いた通りであるが,その反動と言うべきかもしれないが,近年ライブに通う回数がどんどん増えてきている。昨年は22本だったが,記事としてアップしていないものもあるが,今年も22本と,全く同じペースであったことにはちょっと驚いてしまった。

Lizz_wright_blue_noteそんな中で,今年行ったライブの満足度は総じて高かったと思うが,その上位に入るものを選ぶとなるとなかなか悩ましい。個人的に嬉しかったのは,Mehlianaで来たBrad Mehldauと直接会話できたことだったが,演奏ももちろん楽しめたことは言うまでもない。だが,音楽的な質という点でそれ以上に評価したかったのがLizz Wrightである。彼女の新作アルバムも素晴らしかったが,客入りがイマイチでも,全く手抜きのない歌唱,演奏で,素晴らしいライブだと思えた。

Fred_hersch_live今年はLizz Wrightで決まりかなとも思えたが,その後に行ったFred Herschのソロがまた泣かせるライブであった。Fred Herschの近年の充実ぶりは,彼が一時期長期間に渡る昏睡状態にあったことが信じられないと思わせるほどであるが,今回のソロも極めて美的なセンスに満ちた素晴らしいライブであった。中国出張から直接会場に駆けつけた甲斐があったというものである。

掲載した写真は必ずしも,私が行った時のものではないが,雰囲気ってことで。その他にも記憶に残るライブは多数あったが,今年を代表するのであれば,上記の3つということになるだろう。尚,訳あって記事にはしなかったが,Paul McCartneyの元気さは彼の年齢を考えると異常だよなぁと思っていた。年齢という意味ではLee Ritenourと来た80過ぎのDave Grusinも矍鑠たるものであり,彼もある意味,化け物である。それに比べてDeodatoは...ってことで,今年最悪だったのはDeodatoであることは間違いない事実である。

2015年12月23日 (水)

やっぱり好きだぜ,Mike Stern(笑)

Image"Upside Downside" Mike Stern (Atlantic)

ブログのお知り合いの910さんが,Mike Sternの作品を連続アップされていたのに触発されての記事アップである。私はこのブログにも何度も書いている通り,Mike Sternの「かなりの」ファンである(笑)。私が本当に彼を好きになってしまったのは,私がNYC在住中や出張中のことあるごとに,マイキーが出演する55 Barに彼を聞きに行ってからだが,いくらへなちょこであろうが,ギタリストたる私を刺激してくれたことはまぎれもない事実である。

彼の初リーダー作はトリオ・レーベルからリリースされた"Neesh(ファット・タイム)"であるが,マイキーが気に入ってない(認めていない)説もあり,更にはCDでリリースされたものはLPからの盤起こしというお寒い状態であったことからすれば,実質的な初リーダー作は本作と考えていいだろう。私は"Neesh"はLP,CDともに保有しているが,音楽的にも圧倒的に本作の方が優れていると思っている。

冒頭のタイトル・トラックは後にChromaのアルバムでも再演されるが,なんともハードボイルドな響きで,最初から興奮してしまう私である。その後の曲も粒揃いで,長年の相棒となるBob Bergとの相性完璧,また,1曲ずつ参加するゲストのDavid Sanborn,ジャコパスもナイスな助演ぶりで嬉しくなってしまうのである。

私はマイキーのリーダー作はほぼ全て保有しているはずだが,実のところ,一番好きなアルバムはこれだと言ってもよい。とにかくこれはマイキーのリーダー作としてだけでなく,ハード・フュージョンとしても私の評価は高い。だから,マイキーのライブでサインを貰おうと思って持参したのはこれと,マイキー,Bob Berg入りのJukkis Uotila Bandのライブ盤なのだ。ついでにピックまでもらったのも懐かしいが,ミーハーと言われようがなんだろうが,好きなものは好きなのである。ということで,その写真を再掲するが,やっぱり何回聞いてもこの作品はいいと思う。プロデューサーとしてのHiram Bullockのいい仕事である。ということで,惚れた弱みもあり星★★★★★としてしまおう。

後年のマイキーの音に比べるとコーラスの使い方等はまだ抑え気味に聞こえるが,それでもマイキーはマイキーである。またライブで来日して欲しいものである。

Recorded March and April 1986

Personnel: Mike Stern(g),  Bob Berg(ts), David Sanborn(as), Mitch Forman(p, synth), Mark Egan(b), Jeff Andrews(b), Jaco Pastorius (b), Dave Weckl(ds), Steve Jordan(ds), Dr. Gibbs(perc)

2015年12月19日 (土)

Muthspiel~Johnson~Bladeといういいメンツによるスタンダード集。

Real_book_stories"Real Book Stories" Muthspiel / Johnson / Blade (Quinton)

Wolfgang Muthspielという人はなかなか強烈な個性を打ち出せないで,中堅のまま行ってしまうのではないかと思わせたところに,ECMからのアルバムはManfred Eicherのプロデュースもよろしく,彼としては相当いい作品だったと思っている。そうは言いながらも,彼は結構佳作レベルの作品は残していて,本作もそんなアルバムと言ってよい。何せメンツが大変よい。後にデュオ・アルバムも作ってしまうBrian BladeにMarc Johnsonという組み合わせである。しかもやっているのはスタンダードばかりということで,まぁ悪くはならないだろうというものである。

これはオーストリアのQuintonレーベルから出たものだが,Muthspielは別レーベルと契約があったようなので,便宜上三者リーダーのような記載となっているが,実質的には共同プロデュースも兼ねたMuthspielのアルバムと言ってよいだろう。これがまたMuthspielらしい佳作なのだが,破綻はないが,かと言って痺れるような傑作アルバムって訳でもないっていうのが,この人らしい(笑)。

ライナーにもMuthspiel自身が書いているように,このようにスタンダードばかりに取り組んだアルバムは,この時点では本作が初で,おそらくその後もこの手のアルバムはあまりないのではないだろうか。そういう意味で,この人のジャズ的なルーツを探れるという意味もありそうである。

ただ,このアルバムも現在は廃盤のようで,デジタル音源で聞くしかないところであるが,本作の結構コストの掛かったジャケの質感は楽しみたいので,できればCDで保有したい作品ではある。まぁ,私がこのアルバムを購入したのは偏にメンツと曲目によるものであるが,なかなか味わい深いアルバムと言ってもよいだろう。星★★★★。

Recorded on March 12, 13 and 14, 2001

Personnel: Wolfgang Muthspiel(g), Marc Johnson(b), Brian Blade(ds)

2015年12月15日 (火)

ブート音源で聞くJoe Lovano~Chris Potterによる「至上の愛」

Sax_supreme_2

クリポタことChris PotterはPat Metheny Unity Groupでの活動を一段落させた後,自分のピアノレス・トリオやDave Holland,Lionel Loueke,Eric Harlandらとのバンド(このメンツでレコーディングするとの情報もあったが,どうなったのか(でも私はLionel Louekeが苦手なんだよなぁ...))。

それはさておき,この夏のフェスティバル・シーズンに,なぜかJoe Lovanoとクリポタが組んだSax Supreme Quintetとして「至上の愛」を再演してしまうというプログラムがあったことは,クリポタのFacebookページでも明らかになっていた。どういう演奏をしているのか聞いてみたいと思うのが人情だが,あった,あった(笑)。ネットワークを徘徊していると,見つかるものである。私が聞いたのはFM音源をソースとするブートレッグであるが,これが2人のテナーの個性の違いを浮かび上がらせて非常に面白い。写真はクリポタのFBページからの拝借であるが,そもそもこの2人が「至上の愛」をやってしまうところが強烈である。

彼らのテナーを聞いているだけでも面白いのだが,唯一名前を知らなかったピアノのLawrence Fieldsという人がなかなかの実力を聞かせてくれていた。この人,Joe LovanoがDave Douglasとやっていたバンドのピアニストだったので,Lovano人脈ってことになるだろうが,侮れない実力派と聞いた。ベースはCecil McBee,ドラムスはJohnathan Blakeであるから,まぁ急造バンドだとしても,実力的には間違いないのである。

この音源そのものは国内のブート屋でも買えるものだが,探せばちゃんとタダで手に入るので,興味のある人は探しましょう(笑)。ちなみにやっているのは「至上の愛」全曲と"I Want to Talk About You"そして"Mr. P.C."というColtraneづくし。

Recorded Live at Jazz Middelheim, Antwerp, Belgium on August 14, 2015

Personnel: Joe Lovano(ts), Chris Potter(ts), Lawrence Fields(p), Cecil McBee(b), Johnathan Blake(ds)

2015年12月14日 (月)

Konitz / Hadenデュオを聞いていて芽生えた疑問

Sweet_and_lovely"Sweet & Lovely" Lee Konitz & Charlie Haden(Paddle Wheel)

キング・レコードの再発盤の中から,Jim Hallのライブ盤ともども注文したのがこのアルバムである。Lee Konitizとデュオ名人,Charlie Hadenの共演であるから,まぁ出てくる音は想像がつきやすいものであるし,やっぱり想定通りの音が出てきた。演奏そのものはおそらく何のリハーサルなしでも演奏できてしまいそうなスタンダードばかりであり,この音を聞いていて,私は彼ら二人にBrad Mehldauが加わったBlue Noteレーベルの"Alone Together"を思い起こしていたのであった。

そこで芽生えた疑問が,両方のアルバムってJazz Bakeryでのライブ音源だってことである。ついでに言えば,"Alone Together"の続編として出た"Another Shade of Blue"もそこでのライブ(さらに言えば,それは"Alone Together"の未発表音源)だったのだが,どうもデータがおかしいのである。

"Alone Together"のライナーには,Lee Konitzにキング・レコードからデュオ・レコーディング話があり,このライブが吹き込まれることとなったらしいのだが,その際にはCharlie HadenからBrad Mehldauを招いたトリオでやろうという話が持ち込まれていたらしい。Konitzによれば,間を取ってHadenとのデュオで2セット,Mehldauを入れたトリオで3セット演奏し,それらの中でこの3枚が吹き込まれたことになるらしい。まぁ,"Alone Together"には録音した年号が記されていないし,"Another Shade of Blue"は1997年12月21日の録音なんて書いてあるから混乱するのだが,正しくは1996年12月録音ってことにしていいだろう。だが,一部の情報によれば,彼らがJazz Bakeryに出演したのは12/17-21の5日間という情報もあり,だとすれば,"Alone Together"の録音日とされる12/21と12/22という情報も怪しいということになって,どれが本当なのかさっぱりわからない事態に...(苦笑)。

いずれにしても,この"Sweet & Lovely"とBlue Noteから出た2枚が兄弟アルバムだってことは間違いない事実であるが,こうしたデータのいい加減さがまたジャズっぽいよねぇ(笑)。そんな細かいところに突っ込みを入れている私も困ったもん(と言うより暇人)だが。

ということで,肝腎の"Sweet & Lovely"であるが,ジャズ界における侘び寂びの世界とも言うべきインティメートな対話であり,ある意味非常に地味ではあるが,これはこれでいい演奏だと思う。今まで全くノーマークの音源だったが,今回の再発により聞くチャンスが生まれてよかった。星★★★★。

Recorded Live at the Jazz Bakery on December 20 & 21, 1996

Personnel: Lee Konitz(as), Charlie Haden(b)

2015年12月12日 (土)

非常に懐かしいなぁ:"Jim Hall Live in Tokyo"

Jim_hall_live_in_tokyo_cd"Jim Hall Live in Tokyo" Jim Hall(Paddle Wheel)

なぜかはわからないのだが,私がジャズを聞き始めて間もない頃,Jim Hallのレコードを結構買っていた。その時はCTIのヒット作"Concierto"を買っていたわけではなく,"Jim Hall in Berlin"だのRed Mitchellとのデュオ盤だのを買っていたという若年寄ぶりである。そうしたアルバムに混じって,このアルバムのLPも保有していたのも懐かしい。高校生にしては不思議なチョイスである。

正直言って,高校生がこんな渋い音楽を聞いていてはいかんと言ってもよい演奏ぶりであるが,私がジャズの世界へどっぷりつかる入口となったアルバムであった。更にディープな世界へ入り込んでいったのは浪人中に通っていたジャズ喫茶であったことは間違いないが,それでも懐かしいのである。

そんなアルバムを私が手放して久しいのであるが,今回,キング・レコードの廉価盤シリーズの1枚としてリリースされたので再度の購入となった。本CDにはオリジナルのLPには収録されていなかった"Concierto de Aranjuez"が収録されていて,それは私は初聞きとなったわけだが,まぁあるに越したことはないとしても,LPの印象が刷り込まれている私としては,別になかったとしても気にしなかっただろう。

そして久しぶりに聞いたが,"Twister"は今の耳で聞いても,Jim Hallとしては異色の演奏と言えるものであり,"St. Thomas"もかなりアグレッシブな演奏(鉄道唱歌の引用は余計だが...)であり,単に渋いだけのギタリストではなかったことはこういうところで明らかになると思う。また,共演のDon Thompson,Terry Clarkeは今でこそお馴染みのメンツであるが,その当時はまだまだ知っている人は少なかっただろう。それでも見事なバックアップぶりで,前から実力は十分であったということを改めて感じさせる演奏であった。ということで,星★★★★。

Jim_hall_live_in_tokyo_lpいや~,それにしてもやっぱり懐かしかった。ジャケはどうなんだろうねぇ。再発版のいかにもAndy Warholが書いたKenny Burrell盤もどきのイラストより,オリジナルの写真の方が私は好きかな(どっちにしても売れそうにないが:爆)。

Recorded Live at 中野サンプラザ on October 28, 1976

Personnel: Jim Hall(g), Don Thompson(b), Terry Clarke(ds)

2015年12月 8日 (火)

出るべくして出たって感じのBen MonderによるECM第1作

Ben_monder"Amorphae" Ben Monder(ECM)

Ben Monderのギターを聞いていると,Bill Frisellを想起させるところがあると思っている。また,既にPaul Motianの"Garden of Eden"でECMデビューは果たしているので,音楽的な資質からすると,自身のアルバムをECMからリリースしても不思議はないように思える。

そのBen Monderの新作がリリースされたのだが,不思議なことに本稿執筆時点では,ECMのカタログに本作は掲載されていないし,MonderのWebサイトにも載っていないのはなぜなんだろうか。プロデュースが総帥Manfred Eicherではなく,Sun Chungだからって訳でもないだろうが,やっぱり疑問である。

それはさておきであるが,出てくる音はいかにもBen Monderと言うべきものであり,ゆったりとした音響系とでも呼べばよいであろう音楽である。全編に渡って演奏される曲はアンビエントと言ってもよいぐらい(特にソロ曲で顕著)であるが,たまにこういう音を聞きたくなる自分がいるのも事実である(実は結構好きなのだ)。

しかし,ここでのメンツに関しては,Paul Motianは共演歴からしてもわからないでもないとしても,Andrew Cyrilleの参加には驚く人が多いのではないだろうか。Andrew Cyrilleという名前から想像される音とは対極みたいなのが,ここでの音楽だと思うのだが,どういう経緯でこの二人が共演するに至ったかというのは,非常に興味深い。いずれにしても,Cyrilleから想像されるような武闘派フリー(笑)という印象は全くなく,完全にBen Monder側の音になっている。やっぱりアンビエントだ。映画「ブレードランナー」に続編ができたら,そのサウンドトラックに使いたいぐらいだ。

そして,Sun Chungであるが,彼のプロデュースぶりは,過去のECMの音楽を踏まえた感じになっていると思うのはきっと私だけではないと思う。まだまだSun Chungプロデュース作は数は少ないが,それでもEicherを継ぐのは彼だろうなぁと思ってしまう。ECMにはSteve Lakeというプロデューサーもいるが,Lakeはどちらかと言えばフリー寄りの作品が多いように思える一方,Sun Chungは「サイレンス系」ってところか。そういう意味でECMの"The Most Beautiful Sound Next to Silence"というモットーによりフィットしているように思えるのだ。

ということで,これはこれでECM好きの私としては非常に面白く聞けたわけだが,一般の人々にはちょっと厳しいかなぁ。それでも私は星★★★★ぐらいには評価してしまうが。

Recorded in October 2010 and December 2013

Personnel: Ben Monder(g), Pete Rende(synth), Paul Motian(ds), Andrew Cyrille(ds)

2015年12月 6日 (日)

Questによる2013年のライブ音源が2種類現る!

Quest_nycネット上を徘徊していてたまたま見つけたのだが,Questによる2013年のライブ音源が2種類,おそらくダウンロード・オンリーでリリースされている。最近はQuestの音源はパリもストックホルムもダウンロード音源としてのリリースだったので,CD媒体よりもダウンロードに重きを置いているように思える。そうは言いながら,彼らの音源はほとんどがライブ音源なので,こういうやり方でもOKという気もするが。いずれにしても,たまたま発見できたからよかったようなものの,これらの音源については,まだDave Liebmanのサイトにも情報はアップされていない。

Quest_detroit_3今回リリースされた2種とは2013年2月のNYCにおけるライブ音源と,9月のデトロイト・ジャズ・フェスティバルでの演奏である。前者については詳しい日時や場所は表記がないが,彼らが2/19~23の期間,Birdlandに出演した時の模様であると考えてよいだろう(LiebmanがMCでもBirdlandと言っているから間違いなかろう)。NYCライブの最後に収められた"Footprints"にはJoe Lovanoがゲスト参加している。Apple Musicで試聴してからでもよかったのだが,やはりこの人たちの音源はちゃんといつでも聞けるようにしておきたいということで,結局ダウンロードしてしまった私である。

詳しくはちゃんと聞いてからということにするが,どのようなかたちでも彼らの演奏が聞けるということはやはり嬉しいことである。いずれにしても,いつまで経ってもハイブラウな音楽をやる人たちである。願わくばもう一度彼らのライブを見たいなぁ...。私が彼らの演奏を目撃したのは私が在米中の91年の秋口,もしくは92年初頭ぐらいのことであっただろうか。それから約四半世紀が経過しているが,日本に彼らを呼んでくれるような奇特なプロモーター,もしくはジャズ・クラブはないものか。

2015年12月 4日 (金)

Milesバンド,1981年福岡での記録:好調じゃん(笑)。

Miles_fukuoka"Sun Palace, Fukuoka, Japan October '81" Miles Davis (Bootleg→Hi Hat)

本作は既にブートでもお馴染みの音源であったはずだが,プレスCDとして正規盤のようなかたちでリリースされているものの,もとがブートレッグであることは事実である。だからあまり大手を振っての記事のアップとはならないが,それはさておきである。

私もかなりのMiles好きだと自認しているものの,ブートを全部追いかけるような根性もないし,先立つ資金もないから,ブートを買う場合でも「厳選」しているわけだ。だが,本作はおなじみの新橋のテナーの聖地,Bar D2で聞かせて頂いて,音はイマイチながら(それでも十分聞けるレベルだが...),演奏が私が認識しているMilesバンドの音と結構違いが感じられるのが面白く,発注となったものである。

1981年のMilesと言えば,来日時の新宿西口公園でのヨレヨレの姿ばかりが話題になるわけだが,その模様は"Miles! Miles! Miles! Live in Japan '81"に収められているが,まぁ確かにボロボロであっても,MilesはMilesであったという感覚はあった。しかし,この福岡での音源を聞くと,実はこの時のMiles,ヨレヨレだったのは寒風吹きすさぶ新宿西口広場という環境のせいだったのではないかとすら思いたくなる。それぐらいまともである。もちろん,"Aida"のテーマなんて危ないものだが,それはいつものことである(笑)。

それにもまして,私が面白いなぁと思ったのは,バンドの演奏である。いつも通りと言えばその通りなのだが,"Back Seat Betty"におけるノリには,通常感じられないライトな感覚もあって,一般には非常にへヴィな感じがするこのバンドの印象を変えるものとなっているのが面白いのである。まぁ,それでも"Fat Time"におけるしょぼいメロディ・ラインは何とかならんのかと思ってしまう。あの"The Man with the Horn"冒頭におけるダークな色彩を作り出したあの曲とは思えぬアレンジは,曲の魅力を台無しにしていると思うが。少なくともこの曲に関しては新宿のライブの方がましで,更にオリジナルのカッコ良さには到底及ばないのは何とも残念。

ただ,81年のMilesは決してヨレヨレだけではなかったということを明らかにするドキュメント。Milesファンは無条件で買いましょう(笑)。

Recorded Live at 福岡サンパレス on October 11, 1981

Personnel: Miles Davis(tp, key), Bill Evans(ts, ss,fl,key), Mike Stern(g), Marcus Miller(b), Al Foster(ds), Mino Cinelu(perc)

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