Sokratis Sinopoulos: 何ともゆったりしたECMサウンドであることよ
"Eight Winds" Sokratis Sinopoulos Quartet(ECM)
つくづくECMレーベルというのは不思議なレーベルだと思う。極めてジャズ的なものもあれば,オーセンティックなクラシックのアルバムもあるし,民族音楽的なものや,Nik Bartschのようなミニマル・ファンク(リチュアル・グルーブとも言うらしい)まで何でもありの越境ぶりには,オーナーのManfred Eicherの趣味が反映していることは言うまでもない。
そんなECMから先日リリースされたうちの1枚をようやくアップである。ここでSokratis Sinopoulosが弾いているのはLyraという楽器だが,クレタ島の伝統楽器とのことである。弓で弾かれるが,雰囲気的には二胡のような感覚もある楽器であるが,音色はもう少し渋くくすんだ感じと言えばいいだろうか。写真はネットから拝借したものだが,見た目としてはちょっとリュート的な感じもするが,弓弾きであることがリュートとは異なっている。
そうした楽器とピアノ・トリオというセッティングで演じられる音楽は,極めてゆったりとした川の流れのような音楽である。バックで流れていても何の邪魔にもならないところは,ほとんどアンビエント・ミュージックだと言ってもよいが,このゆったり感が実は非常に心地よいのだ。バックがピアノ・トリオなので,ジャズ的なセッティングと言ってもよいが,出てくる音にはジャズ的な要素は希薄である。それでもこういうゆったり感ってのも,たまにはいいと思える。
まぁ,こういう音楽が今聞けるとすれば,やはりECMになってしまうだろうなぁと思うが,不思議でならないのはManfred Eicherはこういう人たちにどうやって目配りをしているかってことである。おそらくはデモ・テープがしょっちゅう届いているのではないかと思うが,それにしてもこの幅広さ,やっぱり凄いことである。ということで,音楽的にどう評価するかは難しいところであるが,アンビエント的なところを評価して星★★★★としよう。但し,音楽に刺激を求める人には全くフィットしないこと必定の音なので,念のため(笑)。
Recorded in August,2014
Personnel: Sokratis Sinopoulos(lyra), Yann Keerim(p), Dimitris Tsekouras(b), Dimitris Emmanouil(ds)
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ほぼリーダーの作曲とはいっても、聴いた感じピアノ・トリオをバックにした民族音楽といった感じですね。この人、ECMの過去作品(エレニ・カラインドルー作品)にもサイドというか、バックで参加したことがあって、それにしても、こういうサウンドの追求はECMならではかもしれないなあ、と思います。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2015年10月18日 (日) 14時16分
910さん,こんにちは。TBありがとうございます。
この辺りのECMの間口の広さってのはある意味魅力でもありますが,なかなか一般のリスナーにとってはハードル高いですよね。まぁそうした中でも,これは結構受け入れやすい感じかなぁとも思いましたが,それにしても地味っていうかなんというか...(笑)。
ということで,こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2015年10月18日 (日) 16時23分