何をやってもJohn McLaughlinは変わりようがないってことだが,新機軸もありの新作
"Black Light" John McLaughlin(Abstract Logix)
John McLaughlinと彼のバンド,4th Dimensionの新作である。ライブ盤"Boston Record"が出たのが昨年春先であるから,新作リリースのインターバルとしては短いように思うが,またまた相変わらずのMcLaughlin節の炸裂である。冒頭の"Here Come the JIIS"なんて,まるで"Raju"ではないかと毒づくのはきっと私だけではないはずだが,はっきり言ってしまえば,ここまでワンパターンでいいのかとも思えてしまう。私の嫌いなRanjit Barotのうるさいドラムスと,声タブラみたいなワンパターンなヴォーカルにも辟易とさせられるが,本作については若干これまでと違う部分も感じられる。
最も顕著なのが"El Hombre Que Sabia"におけるスパニッシュ・フレイバーである。これは亡くなったPaco De Luciaとの共演を念頭に置いて書かれた曲らしいが,久々にMcLaughlinがアコースティック・ギターを弾いているとともに,明らかにスペイン色の濃い曲が,これまでの4th Dimensionと異なるし,ほかの曲でも単なるイケイケだけではないメロディアス,あるいは穏やかな側面も聞かせるのが本作の特徴と言ってよいだろう。
ということで,全体を通して聞けば,やはり誰がどう聞いてもJohn McLaughlinの音楽であるが,今回はそうした若干の新機軸(決して今までやったことがないわけではない路線ではあるが...)も入っているので,彼らのスタジオ作としてはまぁまぁ楽しめる作品と言えると思う。だが,しつこいようだが,私はRanjit Barotのドラムスは全く好きになれないのは相変わらずである。星★★★☆。いずれにしても,本作は6曲目"El Hombre Que Sabia"ってことだろうねぇ。今年の来日公演は都合がつかず参戦できない私だが,この曲はライブで聞いてみたい気がする。
それにしても,John McLaughlin,73歳にしてこの音楽はやっぱり化け物と言ってよいだろうなぁ。
Personnel: John McLaughlin(g), Gary Husband(key, ds), Etinenne M'Bappe(b), Ranjit Barot(ds, vo)
« Don Henleyの新譜はカントリー界から多数のゲストを招きつつも,やっぱり彼の音楽だと思う。 | トップページ | レトロなポップ感覚溢れるThe Bird and the Bee5年ぶりの新作 »
「新譜」カテゴリの記事
- Jeremy Peltの新作がなかなかよい。(2025.03.19)
- Jon Anderson and the Band Geeksのライブ・アルバム:ここまで行くと潔いとすら思ってしまう。(2025.03.18)
- John Patitucciによるパワー・トリオ:悪かろうはずなし。(2025.03.14)
- Chick Coreaがこの世を去って4年。まだまだ残っているレガシー。(2025.03.07)
「ジャズ(2015年の記事)」カテゴリの記事
- 2015年の回顧:音楽(ジャズ)編(2015.12.30)
- 2015年の回顧:ライブ編(2015.12.27)
- やっぱり好きだぜ,Mike Stern(笑)(2015.12.23)
- Muthspiel~Johnson~Bladeといういいメンツによるスタンダード集。(2015.12.19)
- ブート音源で聞くJoe Lovano~Chris Potterによる「至上の愛」(2015.12.15)
コメント
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 何をやってもJohn McLaughlinは変わりようがないってことだが,新機軸もありの新作:
» JOHN McLAUGHLIN / BLACK LIGHT(2015年) [奇天烈音楽館 Strange Kind of Music]
Musician●John McLaughlin(guitar)Title●Black Light(2015年)■Amazonより購入今年で御歳73歳、ギター界の現人神John McLaughlinの新譜が出たので早速入手しました。例によってAbstract Logixからのリリ [続きを読む]
« Don Henleyの新譜はカントリー界から多数のゲストを招きつつも,やっぱり彼の音楽だと思う。 | トップページ | レトロなポップ感覚溢れるThe Bird and the Bee5年ぶりの新作 »
こんにちは。
確かに何をやっても、どこから切ってもマクラフリン節のオンパレードですよね。73歳のもうすぐ後期高齢者に差し掛かろうとしている人が、こんな音楽を作っていること自体が驚きです。
私の場合、Gary Husbandが昔から苦手で拙ブログでひとくさり語っています(笑)。ブルーノート東京は見に行きますので、ライブレポートでご報告できればと思っています。おそらく22年ぶりの再会です。TB送らせていただきます。
投稿: 奇天烈音楽士 | 2015年10月12日 (月) 10時54分
奇天烈音楽士さん,こんにちは。TBありがとうございます。
確かに後期高齢者間近ですよねぇ(笑)。こんな爺さんが周りにいたら怖い気もしますが...。
Gary Hasubandがお好みでないということは貴ブログからも拝察しておりましたが,私の場合はRanjit Barotが全くダメなんです。Gary HusbandはWayne Krantzほかとロンドンでライブをやった時にはドラムスに専念していましたが,その翌日にはドラムスにPeter Erskineが入ったので,キーボードだけだったようです。まぁ私はHusbandには抵抗がなくて,Barotには抵抗ありありって感じですね(笑)。
今回,ライブには行けませんが,前回行った時は客入りが悪かったんですよねぇ。今回は是非フルハウスで御大を迎えて欲しいものです。
ということで,後ほどこちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2015年10月12日 (月) 11時16分