"10 Years Solo Live" Brad Mehldau (Nonesuch)
このアルバムのリリースがアナウンスされた時から期待値の大きかった私であった。2004年から10年以上に渡る期間に,欧州で録音されたソロ・ピアノによるライブの模様をLPは8枚組,CD4枚組に集成した本作だが,LPのリリースがCDよりも若干早いこともあり,値段は4倍近いのにLPをNonesuchレーベルに発注したものである。本国からの発送の通知からわずか4日後(まだ正式リリース日前であった)には届いていたのには驚いたが,関税も700円掛かってしまった(笑)。
LPを聞く環境は整っているが,私はリリース日にNonesuchから届いたMP3音源をすかさずダウンロードし,DAC経由でオーディオ・セットで聞いているところである。本来ならLPを聞けばいいのだが,取り敢えず気楽なセッティングで聞いてしまおうということである。
それにしても,2004年,2005年,2010年,2011年,2013年,2014年の19か所での音源を収めた本作は「超弩級の大作」と呼ぶに相応しいが,しかもそれらを収録場所や時間にかかわりなく,LPなら4面,CDなら1枚ごとに"Dark/Light", "The Concert", "Intermezzo/Rückblick", "E Minor/E Major"という4つのテーマに分けてリリースするところがBrad Mehldauらしいと言えば,まさにその通りである。彼は各々のセットには各々のテーマと特徴があると述べているが,例えばLPの5~8面に収められた"Intermezzo/Rückblick"は過去を見直し,再評価することをテーマとしているため,2004年と2005年の音源がここに集中しているのである。一方で,なぜ2006年から2009年が抜けているのかと言われれば,それは2006年録音の"Live in Marciac"が2011年にリリースされたからだろうと思っている私である。いずれにしても,Mehldauの中には明確なテーマが設定された上での曲の並びであるということは,意識して聞く必要があるだろう。
そして,ここに収められたレパートリーの広さが半端ではない。元来,Brad Mehldauは現在の音楽シーンにも目配りしたレパートリーが特徴的だが,本作においても,冒頭のJeff Buckleyに始まり,Beatles,Radiohead,Nirvana,Massive Attack,Paul McCartney(ソロ作の"Junk"),Leo Ferre,Pink Floyd,The Verve,Kinks,Stone Temple Pilots,そしてBeach Boysと今回もその目配りぶりは強烈である。その中ではBeatlesが2曲,Radioheadが2曲,3回収録されていることがある意味象徴的な気がする。更にMehldauのオリジナル,古いスタンダード,Monk,Coltrane,Bobby Timmonsらのジャズ・オリジナル,Jobimの"Zingaro",果てはブラームスまで加わってしまうのだから,何という吸収力,咀嚼力と言わざるをえない。それらが極めて高いレベルで演じられるのだから,私はBrad Mehldauの追っかけをやっていてよかったと感じてしまうのだ。ジャズ的な要素,クラシカルな要素,スリリングな要素,美的な要素,そんなBrad Mehldauの魅力が十分に捉えられていると言ってもよい。そして,誰がどう聞いてもBrad Mehldauのピアノと言うべき響きは,彼が完全なスタイリストとしてのポジションを確立していることを再認識させる。
これからの深まりゆく音楽シーズンの中で,美しくも創造性に溢れた本作の演奏ほど私にフィットした音楽はないと思わせるが,どこから聞いても素晴らしい演奏群であることは間違いない。中でも,超スロー・テンポで演じられる"I'm Old Fashoned"や"On the Street Where You Live"のようなスタンダードを聞いていて,陶然とした思いをさせられた私であった。これはまさしくしびれる美しさである。そして,全32曲,約5時間に及ぶ演奏があっという間に聞けてしまったというのは驚きである(正直一気聴きであった)。これはまさにBrad Mehldauからのありがたき贈り物と思って,改めて熟聴していきたいと思わせる傑作。こんな演奏にはBrad Mehldauの追っかけの私でなくても,星★★★★★以外にありえない。マジで最高である。
Personnel: Brad Mehldau(p)
Recorded Live at the Following Venues and on the Dates:
Side 1, track 1: November 5, 2013 at the Liszt Academy of Music, Budapest, Hungary
Side 1, track 2: September 18, 2011 at Auditorio Palau de Congressos, Sala Cambra, Girona, Spain
Side 2, track 1; side 7, track 2: September 17, 2011 at Oper Leipzig, Leipzig, Germany
Side 2, track 2; side 15: March 10, 2014 at Palais des Beaux-Arts, Brussels, Belgium
Side 3, track 1; side 8, track 1: November 8, 2013 at Théâtre de Vevey, Vevey, Switzerland
Side 4; side 5, track 1: March 16, 2010 at Conservatoire de Musique, Luxembourg
Side 5, track 2: July 15, 2010 at Castello degli Ezzelini, Bassano del Grappa, Italy
Side 6, track 1: October 30, 2010 at Shiftung Mozarteum Großer Saal, Salzburg, Austria
Side 6, track 2: March 17, 2010 at Muzeikgebouw Eindhoven, Frits Philipshal, Eindhoven, the Netherlands
Side 7, track 1; side 16: June 9, 2011 at Wiener Konzerthaus, Mozartsaal, Vienna, Austria
Side 8, track 2; side 11, track 2: March 29, 2011 at Auditorium Parco della Musica, Sala Sinopoli, Rome, Italy
Side 9; side 10, track 1; side 11, track 1: July 10, 2005 at Copenhagen Jazz Festival, Copenhagen, Denmark
Side 10, track 2: August 5, 2004 at the Menton Music Festival, Basilique Saint-Michel-Archange, Menton, France
Side 11, track 3: June 7, 2011 at Stadttheatre, Wels, Austria
Side 11, track 4; side 12: November 17, 2004 at Wigmore Hall, London, England
Side 13, track 1: September 10, 2011 at Cité de la Musique, Salle Pleyel, Paris, France
Side 13, track 2: September 18, 2011 at Auditorio Palau de Congressos, Sala de Cambra, Girona, Spain
Side 14, track 1: March 29, 2011 at Auditorium Parco della Musica, Sala Sinopoli, Rome, Italy
Side 14, track 2: March 25, 2011 at Sociedad Filarmonica de Bilbao, Bilbao, Spain
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