Lee Ritenourの"Twist"シリーズは,今度は自分の音楽だ(笑)。
"A Twist of Rit" Lee Ritenour(Concord)
本作は結構早い時期にApple Musicで聞くことができて,1曲目を聞いた瞬間,私は「これは買いだな」と思って,即,ネットで発注をしたものの現物がデリバリーされた。
Lee Ritenourの"A Twist of ..."シリーズはJobim,Bob Marley,Motownと続いてきたが,ここに来て,今度のテーマは自分自身である。今回のアルバムのために召集されたスペシャルなメンツであるRitenour,小曽根,Kennedy,Wecklの面々による2曲とタイトル・トラック以外は旧作からのレパートリーのようだが,その中でも,初リーダー作,"First Course"からの選曲が4曲と突出している。それ以外は"Earth Run","Stolen Moments","This Is Love","Rit","Friendship"ほかからの選曲となっている。
そもそも"Firist Course"がリリースされたのは1976年であるから,約40年前ということになるが,その間,Lee Ritenourの音楽性は,一時期AORへの傾斜を示しつつも,極端に大きく変わることはなかったし,高いクォリティを維持してきたと言ってもよい。だからこそ,私も結構な枚数のリーダー・アルバムがリリースされても,それなりに追い掛けてきたわけである。とか言いつつ,"First Course"は保有していないのだが,そのうちの何曲かは,Epic時代のベスト・アルバムで聞いたことはあった。正直どちらかと言うとEpic時代の演奏は,私にとっては印象は薄い感じなのだが,冒頭の"Wild Rice"のリメイク版を聞いて,「買い」だと思ってしまうのだから,Ritenourのここでの目論見は成功していると言ってもよいだろう。
まぁ,実を言ってしまえば,私は"Countdown"のリメイクに期待していたのだが,"Rit"をオリジナルとするこの曲には,武道館ライブという決定的なバージョンをここでは凌駕していないのは惜しい。むしろ,オリジナルと同様のテンポでやっているし,結構アレンジも踏襲しているように思えるから,そういうプロダクションだったのだと思う。だが,小曽根たちとやった"W.O.R.K.n' IT"のなんとカッコよいことか。私は小曽根真がオルガンを弾いた時の魅力を,Mike Sternたちとのライブの場で体感しているので,これも期待していたのだが,期待以上のグルーブを生み出しているのが素晴らしい。
ライブの時の記事に,私は次のように書いている。「小曽根がオルガンを弾いて,マイキーがディストーションを踏んだ段階で,そこにはハード・ロック的な感覚が生まれたことは面白い。(中略) 考えてみればDeep Purpleにおいても,Jon Lordが弾いていたのはオルガンなのだ。あの感覚を私は客席で感じていたと言えばおわかり頂けよう。そういう意味では小曽根はオルガンを主にした方がライブとしての熱はもっと上がったはず(後略)」。そうなのである。あの時のメンツも今回の4人からギターがMike Sternに代わっただけなのだが,あの時体感したグルーブが再現されているようで嬉しくなってしまった。
いずれにしても,豪華なメンツを集めて,旧作を演じたと言っても,懐古的なところは微塵も感じられない。還暦を過ぎても,Ritenourはまだまだいけていると再認識させられたアルバムである。どうせなら小曽根入りバンドで一枚作ってはどうかとさえ思った私であるが,十分楽しませてもらったと思っている。星★★★★。
Personnel: Lee Riternour(g), Michael Thompson(g), David T. Walker(g), Wah Wah Watson(g), John Beasley(p, key, synth), Dave Grusin(p, org, synth, vib), Patrice Rushen(el-p, clavinet), 小曽根真(p,org), Melvin Lee Davis(b), Tom Kennedy(b), Dave Weckl(ds), Chris Coleman(ds), Ron Bruner Jr.(ds), Paulinho Da Costa(perc), Ernie Watts(ts), Bob Sheppard(fl, bs), Rashawn Ross(fl-h, tp), Wendell Kelly(tb), Tom Luer(ts), Adam Schroeder(bs), Tony Pusztai(g)
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